編集長Kの目
ー 売主の準備について ー
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マンション売却の成否を分ける「売主様の準備」5つの鉄則
マンション売却をスタートする際、「広告や集客は不動産会社の仕事だから、自分は待つだけでいい」と考えている売主様は非常に多いですが、それは大きな間違いです。
物件の魅力を100%引き出し、相場以上の高値で売却を成功させるためには、売主様にしかできない「事前の仕込み(準備)」が不可欠です。
いったん自分の我が家という愛着をリセットし、「冷徹な購入者目線」で部屋を見つめ直すことからすべては始まります。
売却活動に入る前に、売主様が必ず行うべき5つの準備を解説します。
1. 居住者にしか分からない「物件のメリット」を担当者にシェアする
周辺の美味しい飲食店、夜中までやっているスーパー、駅からの夜道の明るさ、近くの公園の雰囲気、冬の空気が澄んだ時の景色の良さなど、住んでいて便利なポイントや物件の本当の魅力は居住者にしか分かりません。
これらをメモにまとめて担当の営業マンに事前に共有(シェア)してください。営業マンが自力で気づけない「隠れた強み」を武器として持たせることで、担当者のやる気のスイッチを入れ、販売図面の作成や写真撮影をする箇所の増加、ポータルサイトの文言、内見時のアピール力が劇的に変わります。
「ここのパン屋さんで15時に販売される〇〇パンはすごく人気で美味しいですよ」と伝えれば、思わず担当者も食べてみる可能性がありますし、購入者にとって生活を想像しやすくなります。
「〇〇スーパーは夜中まで開いててお惣菜が美味しいですよ」という情報を与えることができれば、共働きの夫婦にとっては、すごく利点になります。
「毎年、多摩川の花火大会が、ちょうどこの方向に見えるんですよ、ここのバルコニーは透明なガラスなので、椅子に座っても綺麗に見えますよ」など具体的に想像させることは下記の様な効果があり、成約率に差が出ます。
(1) 脳内に映画を流す「プロスペクト・セオリー(の応用)& 物語効果」
人間は「スペック(築年数、広さ)」では納得しますが、「感情(ここでの暮らし)」でしか行動(購入)しません。
「スーパーが近い」=ただの情報
「夜中まで開いててお惣菜が美味しいから、残業帰りでもパッと美味しい夕食が並ぶ」=物語(ストーリー)
共働きの奥様がこれを聞いた瞬間、脳内には「疲れて帰ってきても、美味しいお惣菜で笑顔で乾杯している自分たち」の映像が流れます。
これを心理学では物語効果(ストーリーテリング効果)と呼び、客観的なデータよりも個人のエピソードの方が、記憶に残り、強く心を動かすことが証明されています。
(2)すでに自分の家だと錯覚させる「バーチャル所有効果(疑似所有感)」
花火大会のくだりは、まさにこの効果を120%引き出します。
「バルコニーが透明ガラスだから、椅子に座っても綺麗に見える」
と言われた瞬間、買主はまだ買ってもいないのに、心の中で「その椅子に座ってビールを飲んで花火を見ている自分」「その傍らで喜んでいる子供の姿」等を体験しています。
人間は、一度「自分のもの(または自分の居場所)」だと想像した空間を手放すことに強い苦痛を感じます(損失回避バイアス)。
この擬似的な所有感を持たせることで、「他人に取られたくない、ここに住みたい!」という衝動が一気に強くなります。
(3)具体的な数字やシーンで説得力を生む「利用可能性ヒューリスティック」
人間は、パッと頭に思い浮かべやすい(想像しやすい)情報ほど、不確実な未来よりも「価値が高い、信頼できる」と判断する脳の癖(認知バイアス)があります。
「日当たりが良い、眺望が良い」と100回言われるよりも、「花火の日に、バルコニーの椅子に座って、目線の高さで綺麗に見える」と言われた方が、圧倒的に未来を鮮明にイメージできます。
イメージが鮮明であればあるほど、購入への「不安」が「期待」にかき消されていきます。
そこに住んだ後の『日常のワンシーン(美味しいお惣菜)』や『年1回の特別な感動(バルコニーからの花火)』を売主以上に語れる人です。スペックではなく、あなたのマンションでの『未来の暮らし』を担当者が言語化できる様に、情報をシェアしましょう。
2. 「購入者目線」で気になる箇所の修繕を検討する
壁紙や障子の剥がれ、破れなど、住んでいる自分にとっては「見慣れた日常」でも、初めて部屋を見る購入希望者にとっては「修繕費がかかるマイナスポイント」に映ります。
障子の貼り替え等はDIYで自分でもできますし、価格も数千円など非常に安いのですが、購入者にとっては数十万円の負の感情を与えてしまいます。
安価で直せる破れなどは、事前に修繕してから販売活動に入った方が、結果として早く高く売れるケースが多いです。
リフォームなどに関しても、担当者でも結構ですし、私たち編集部も立場的に多くのリフォーム会社を知っているので、安くできる方法の提案が可能です。
特に壁紙は1㎡あたり、800円~3,000円など、選ぶ商品によっても差がありますし、同じ商品でも施工する会社によって2倍以上の請求をさせる場合もあるので、プロに選定してもらった方が安くなるでしょう。
3. 第一印象を決定づける「玄関の匂い」を徹底対策する
他人の家に入った瞬間、最も記憶に残るのは「匂い」です。
犬や猫のペットの匂いをした人にあったことはないでしょうか?
自分の環境に慣れてしまうので、多くの場合、自宅の匂いに自分自身では気づけません。
特に玄関周りは徹底的に換気をして脱臭し、必要であれば上品な芳香剤を置きましょう。
ここにも第一印象を良くする効果があります。
例えば、高級ホテルに入った瞬間に、良い香りが漂ってきて幸せな気分になったり、一気にリラックスできたりした経験はないでしょうか。
これは空間デザインの現場で「オルファクトリー(嗅覚)マーケティング」と呼ばれる、人間の本能を直接コントロールする強力なテクニックです。
玄関を開けた瞬間の「匂い」がなぜ内見の勝敗を分けるのか、そこには明確な脳科学のメカニズムがあります。
感情をダイレクトに支配する「プルースト効果」
人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中で、嗅覚だけが唯一、脳の「理性(考える部分)」を通らずに、「感情や記憶を司る部分(大脳辺縁系)」へダイレクトに届くという特徴を持っています。
視覚や聴覚:
目で見る → 脳で「綺麗だな」と考える → 良い気分になる(遠回り)
嗅覚:
匂いを嗅ぐ → 0.2秒以下で脳が「快・不快」の感情を直接判断する(超高速)内見に訪れた買主様が、玄関を入った瞬間に良い匂いを感じると、脳が論理的に考えるより前に「ここは心地よくて安心できる場所だ」と感情が強制的に書き換えられ、強烈な第一印象(プライミング効果)がセットされます。
高級感と信頼感を高める「アンビエント・セント(環境臭)効果」
マーケティングの実験では、空間に特定の良い香りを漂わせることで、買い手の心理に以下のような劇的な変化が起きることが実証されています。
滞在時間の長期化:
居心地が良くなるため、せかせかせずにゆっくりと内見を楽しんでくれる。
物件評価の底上げ:
空間全体に無意識のうちに「高級感」や「安心感」を感じるようになる。
価格への抵抗感減少:
「これだけ上質な空間なら、この金額を出しても納得だ」と思いやすくなる。
どんなに部屋が綺麗に片付いていても、玄関が無臭(または生活臭)のままだと、人間の脳は防衛本能から「他人の家」という警戒心を解きません。良い匂いをさせることで、一瞬で「ホテルやモデルルームのような、自分を歓迎してくれる空間」に変えることができます。
一貫性の法則(ポジティブな色眼鏡)
人間の脳には、最初に「この家は良い」と感じると、その後に見るものすべてをポジティブに解釈しようとする強い癖があります。玄関の匂いで脳がリラックスすると、その後にリビングのちょっとした傷やマイナスポイントを見つけたとしても、脳が自動的に「まあ、これくらいなら簡単に直せるか」と好意的に言い訳をしてくれるようになります。
内見対策として売主様が仕込むべきは、高級ホテルでも広く採用されている「シトラス(柑橘系)」や「グリーンティー」「ホワイトティー(お茶系)」の香りです。これらは万人が「清潔感」と「上品さ」を感じるため、最も失敗がありません。
内見が始まる30分前くらいから玄関に仕込んでおくのがベストな戦略です。(※逆に、バニラやココナッツのような甘すぎる香りは、好みが激しく分かれるため絶対に避けてください)
また匂いが強すぎるのも逆効果です。
「物語効果」で左脳(具体的な生活イメージ)を刺激し、「匂いの脳科学」で右脳・本能(一瞬での好印象)を強烈に掴む。この2つのアプローチが揃ったとき、マンションの成約率は間違いなく跳ね上がります。
私も現役時代に専任媒介を頂いたお客様のお部屋のイメージにあった芳香剤をプレゼントし、内見前に匂いのチェックを売主様にして頂いてました。その様な共同作業をすることでも売主様と担当者の結束が高まり、売却成功率を上げる効果もあります。
4. 部屋を広く魅せるための「家具と置物の検証」
家具は背が低いものに変えるか、配置を工夫するだけで、部屋全体の開放感が劇的にアップします。
また、思い出の置物だとしても小物が多すぎると「ガチャガチャ感」が出てしまい、部屋が狭く見える原因になります。
不要なものは思い切って処分するか、見えない場所に片付け、視界に入る情報量を減らして、部屋が広く見える工夫をしましょう。
私は写真撮影の時も、生活感や置物などが気になる場合は、それを移動させて撮影するなど出来るだけ写真映えする様に心がけていました。
その際に、気になった点を売主様に共有することで、内見時の配置にも影響を与える事ができます。
この様に内見の際、どれだけ実際の専有面積(平米数)が広くても、家具の配置や小物の散らかり方ひとつで、買い手に「なんだか狭くて息苦しい部屋だな」と感じさせてしまうことがあります。
逆に、実寸以上に部屋を圧倒的に広く、そして魅力的に魅せるための2つの空間心理学を解説します。
① 背の低い家具がもたらす「視覚的開放感(パースペクティブ効果)」
人間の脳は、部屋の広さを「床の面積」だけでなく、「目線の高さでどれだけ視界が遮られずに奥まで抜けているか(視線の最大距離)」で無意識に測定しています。
背の高い家具がある部屋:
入った瞬間に圧迫感を感じ、脳が空間を「狭い」と誤認識します。
背の低い家具で統一された部屋:
壁や窓が多く露出するため、視線が遮られずに部屋の最奥まで一気に抜けます。これを視覚的開放感(パースペクティブ効果)と呼びます。
特に、部屋の入り口から対角線上に位置する場所(最も視線が長く伸びるルート)に背の高い家具を置かないことで、脳は実際の平米数よりも「1.2倍〜1.3倍近く広い空間である」と強烈な錯覚(空間認知のバイアス)を起こします。
② 生活感を消す「情報の引き算」がもたらすカクテルパーティー効果
部屋の中に家族の写真、書類、コード類、色とりどりの小物がガチャガチャと置かれていると、買い手の脳はパニックを起こします。
人間の脳は、視界に入る「色の数」や「物の量」が多ければ多いほど、それらを無意識にすべて処理しようとして脳のメモリを消費し、「脳内疲労(ストレス)」を感じる仕組みになっているからです。
小物を徹底的に隠し、生活感を極限まで減らすことでもたらされる心理効果は以下の通りです。
脳のノイズを消す:
視覚的な情報量が減る(引き算される)ことで、買い手の脳がリラックスし、部屋に対して「居心地が良い、落ち着く」というプラスの感情を抱く。
主役への集中(カクテルパーティー効果):
雑多なノイズが消えることで、買い手は「日当たりの良さ」「眺望」「間取りの使いやすさ」といった、物件本来の主役級のメリットに100%集中して内見できるようになる。
「セルフイメージ」の投影
生活感が残ったままだと、買い手は「他人の家を覗き見している罪悪感」を抱きます。しかし、モデルルームのように生活感が消えた空間だと、買い手は「自分がここに住んで、スタイリッシュに暮らしている未来の姿」をノーノイズで重ね合わせ(投影)やすくなる。
内見を迎える売主様への究極のアドバイスとしては、「部屋を減色(げんしょく)し、床と壁を見せること」です。
(1)リビングの主役となるソファやテレビボードは、できるだけロータイプ(背の低いもの)を意識し、窓までの「視線の抜け」を1本確保する。
(2)生活家電のコード、リモコン、調味料、洗面所の歯ブラシといった「色数の多い生活小物」は、内見の30分前までにすべて引き出しやクローゼットの奥にしまい「完全に見えない化」する。
スペックという「文字情報」をいくら説明しても、人間の脳が空間から受け取る「視覚ノイズ」には勝てません。家具配置の工夫と情報の引き算で、買い手の脳を1秒で味方につける空間を演出しましょう。
5. クローゼット・収納の中の断捨離
内見に来る購入希望者は、収納力を確かめるために「必ず」クローゼットや物入れを開けます。いつ開けられても大丈夫なように、不要なものを捨ててスペースにゆとりを持たせておくことが、購入検討者に「これだけ収納があれば安心だ」と思わせる重要な伏線になります。
他社が販売している物件の内見時によくあったのが、私が「クローゼットを開けてみても良いですか?」というと、売主様が「え?あ、大丈夫です、、、」の様にビックリした対応をされることです。
もし貴方が購入者の立場だったら、全てのクローゼットの奥行や幅など収納力は気になりますよね?
本気で購入検討をする物件であれば、尚更です。
しかし、この様に「びっくりして」「どうしよう、、、」みたいな振る舞いを感じると、購入者側も人の家のクローゼットを見せろと言うのは申し訳ない気持ちになり、チェックしない様になります。
これでは、購入する心理の盛り上がりや、実際の生活イメージもできにくくなります。
また、この様にチェックが十分にできなかった物件をいざ購入しようと具体的に感じた時は、再度内見をしてチェックをする事もしばしばあります。売主、買主の双方にとって無駄な時間を使いますし、ワンクッション行動が増える=時間がかかるということになり、競合物件が販売開始されたり、その他の要因で成約がなくなる場合も生じます。
クローゼットの中、キッチンや洗面台、トイレの収納棚など備え付けの収納は「見られてしまうことがある」ではなく、「見てもらう」ことを前提にして準備をしましょう。














