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離婚に伴うマンション売却──財産分与の基本ルール・住宅ローン連帯保証の解消・共有名義の処理・売却タイミングの調整を経て、双方が納得する売却を実現した実践記録

  • 6 日前
  • 読了時間: 9分

  あなたは「離婚しても連帯保証人は外れる」と思っていないか


 離婚協議が整い、離婚届を提出すれば、夫婦関係は法的に解消される。

だが、住宅ローンの連帯保証人だけは別だ。

離婚したとしても、住宅ローンの連帯保証人から自動的に外れることはできない。

連帯保証契約は夫婦間ではなく金融機関との契約であり、婚姻関係の解消によってその契約が消滅することはないからだ。

ある大手仲介会社の営業担当者は「離婚から5年後に元夫のローン滞納で突然督促状が届いたという相談は珍しくない」と証言する。

本稿は、築8年・駅徒歩10分・70㎡の共有名義マンションを離婚に伴い売却したケースを通じて、財産分与の基本ルール、連帯保証の解消方法、共有名義の処理、売却タイミングの調整を解説する。



  「現状維持バイアス」が離婚後の資産トラブルを生む


 行動経済学でいう「現状維持バイアス」とは、変化を避けて現状を維持しようとする心理傾向を指す。

離婚時のマンション問題でもこのバイアスが働く。

「子どもの学校があるから」「引っ越しが面倒だから」という理由で売却を先送りし、共有名義のまま放置するケースが後を絶たない。

離婚後も夫婦間で不動産を共有名義にしておくと、夫婦どちらかが不動産を賃貸借したい場合や売却したい場合などに、もう片方の合意が必要となる。

離婚した夫婦間では不動産の活用方法に関して意見が合わないことも多く、結局不動産が活用されることなく放置されてしまうことも少なくない。

現状維持バイアスに流されると、5年後・10年後に取り返しのつかない資産トラブルに発展する。



  【ケース概要】共有名義・連帯保証人付きマンションの売却


 今回のケースの登場人物を整理する。

夫(45歳・会社員)、妻(42歳・パート勤務)、子ども2人(中学生・小学生)。

マンションは8年前に5,200万円で購入。

持分割合は夫70%、妻30%の共有名義。

住宅ローンは夫が主債務者、妻が連帯保証人として3,800万円を借入れ、売却時点の残債は2,400万円。

査定額は4,800万円。典型的なアンダーローン状態だった。



  財産分与の基本ルール──持分割合と分与割合は別物


 多くの売主が誤解しているのが「持分割合=財産分与の割合」という認識だ。

離婚の財産分与の割合は、家やマンションの持分割合に関係なく、夫婦で2分の1ずつ分けることになる。

離婚時の財産分与の割合は、原則として「2分の1」である。これは収入の有無などは関係なく、どちらかが専業主婦(夫)であっても、婚姻が成立していた以上は財産の半分を得る権利がある。

今回のケースでも、夫70%・妻30%という登記上の持分にかかわらず、売却益は50%ずつ分けることになった。

売却価格4,800万円からローン残債2,400万円と諸費用約200万円を差し引いた手取りは約2,200万円。

これを折半し、夫婦それぞれ約1,100万円を受け取った。



  連帯保証人を外す4つの方法──売却が最も確実


 離婚の際、住宅ローンの連帯保証人から外れることは可能だが、金融機関の承認が必要となるため簡単ではない。主な方法としては、①連帯保証人の変更、②物的担保の追加、③住宅ローンの借り換え、④ローンの完済の4つがある。

連帯保証人は原則、住宅ローンを完済した時に解除される。

現実を見ると、①の連帯保証人の変更は「代わりの保証人を立てる」必要があり、大手企業や公務員など収入が安定していると思われる勤務先だと許可されることもあるが、ハードルは極めて高い。

②の物的担保の追加も、別の不動産を担保に入れる必要があり、現実的ではないケースが多い。

③の借り換えは、主債務者が新たなローンの審査を通過する必要があり、審査に落ちれば借り換えは利用できない。

結局、④のローン完済、つまりマンション売却が最も確実な方法となる。

今回のケースでは、売却代金でローンを完済することで、妻は連帯保証人から完全に解放された。


図1|離婚時の連帯保証人解消方法と難易度


  共有名義の処理──全員の同意がなければ売れない


 共有名義の物件には、単独で「できること」と「できないこと」が存在する。共有持分だけであれば、単独の意思で売却もできるが、共有物全体を売却するには共有者全員の同意が必要だ。

共有持分の全体売却の場合は、お互いの同意がないと売却できないため、相手方が同意しない限り売却に踏み出せない。

離婚協議が難航するケースでは、この「全員の同意」が大きな壁となる。

現役営業マンの証言では「離婚時の不動産売却で最も多い相談が『相手方が売却を認めず居座る』というパターン」だという。

今回のケースでは、離婚協議の早い段階で「マンションは売却して財産分与する」という合意を取り付けた。

この合意がなければ、売却活動自体がスタートできなかった。



  売却タイミングの調整──離婚前か離婚後か


 売却のタイミングは「離婚前」と「離婚後」の2パターンがある。

売却のタイミングは大きく離婚前・離婚後・調停中に分かれるが、どの段階で動くかによって住宅ローン残債の処理方法や財産分与の手続きが変わる。

離婚後に相手と連絡を取りたくないという方は、離婚前に売却をするのがおすすめだ。家の売却活動には3か月から半年程度かかることが一般的で、その間は相手と連絡を取り合う必要があるためだ。


 一方で、原則として、離婚前に家を売却するのはおすすめできない。夫婦間での財産移動が「贈与」とみなされる可能性があり、思わぬ税負担が発生することがあるからだ。

売却のタイミングは、離婚前より離婚後のほうがよい。離婚後であれば、贈与ではなく財産分与という扱いになるので、贈与税はかからないからだ。

今回のケースでは、離婚協議と並行して売却活動を開始し、売買契約締結後に離婚届を提出した。

財産分与の実行は離婚成立後に行い、贈与税リスクを回避した。



  離婚協議書と公正証書──「言った・言わない」を防ぐ


 『離婚協議書』や『離婚給付契約公正証書』を作成しておくと離婚後のトラブルを回避しやすくなる。

離婚協議書は、できるだけ「公正証書」にしておくことが望ましい。公正証書は、公証人が内容を聞き取りして書面を作成する公的な文書のことだ。もし相手が離婚後に支払いを拒んだ場合、裁判所に訴えることなく強制執行手続きに移ることができる。

公正証書に記載しておく内容としては、住宅を売却する時期、条件、方法、経費負担、売却代金等の精算方法などになる。


今回のケースでは、以下の項目を離婚協議書に明記し、公正証書化した。

・マンション売却の合意と売却活動の期限

・売却代金から諸費用・ローン残債を差し引いた手取り額の折半

・売却完了までの住宅ローン返済負担の分担

・売却完了までの固定資産税・管理費の負担者

・売却活動への協力義務



  財産分与の請求期限──離婚から2年を過ぎると請求不可


 財産分与は期間制限があり、離婚から2年が経過すると請求できなくなる。

離婚時に話し合いがまとまらなかった場合や、そもそも冷静に話し合える状況ではなかった場合でも、2年以内であれば家庭裁判所に財産分与調停や審判の申し立てが可能だ。一方、期限を過ぎてしまうと、たとえ財産分与の対象となるマンションや預貯金が残っていたとしても、原則として請求そのものができなくなってしまう。

「いずれ落ち着いてから考えよう」と先送りするのは最も危険な選択だ。

離婚が決まった時点で、マンションの査定を取り、売却か保有かの方針を早急に決定すべきである。



  アンダーローンとオーバーローン──売却可否の分岐点


 売却価格がローン残債を上回る「アンダーローン」であれば、通常の売却が可能だ。

売却代金でローンを完済し、残った資金を財産分与として分ける。

問題は、売却価格がローン残債を下回る「オーバーローン」の場合だ。

マンションの価値が住宅ローンの残額を下回っている状態を「オーバーローン」と呼ぶ。このような状況で離婚しても、マンションを売ることができない。

住宅ローンの残債額が大きく一括返済できない場合は、任意売却による借金の返済を目指すことになる。任意売却とは、金融機関の許可を得られれば、住宅ローンが完済していない状態でも家を売却できる手段だ。

今回のケースはアンダーローンだったため、通常の仲介売却で対応できた。



  売却活動の実際──4か月で成約に至るまで


 今回のケースでは、大手仲介会社と専任媒介契約を締結した。

売り出し価格は査定額の4,800万円でスタート。

1か月目で内覧8件、2か月目で内覧12件。

3か月目に4,700万円で購入申込みが入り、4か月目に売買契約を締結。

引き渡しは契約から1か月後。売却活動開始から成約まで4か月という標準的なスケジュールだった。

ポイントは、夫婦双方が内覧日程の調整に協力したこと。

内覧の際は、すでに別居していた夫が立ち会い、妻と子どもは外出するという役割分担を決めていた。



  売却後の精算──手取り額の計算


 売却価格4,700万円から差し引かれた費用は以下の通り。

・住宅ローン残債 2,400万円

・仲介手数料 約160万円

・登記費用・印紙代など 約20万円

・引越し費用(夫) 約30万円

差引後の手取り額は約2,090万円。

これを50%ずつ分け、夫婦それぞれ約1,045万円を受け取った。

妻は子どもと共に賃貸マンションへ転居。

夫は実家近くのマンションを購入した。



  このケースから学ぶ5つの判断軸


 第一に、「連帯保証人は離婚しても外れない」という事実を認識すること。

第二に、「持分割合と財産分与の割合は別物」と理解すること。

第三に、「共有名義の売却には全員の同意が必要」と覚悟すること。

第四に、「売却タイミングと離婚届のタイミングを調整する」こと。

第五に、「財産分与の請求期限は離婚から2年」と肝に銘じること。

これら5つの判断軸を押さえておけば、離婚に伴うマンション売却で致命的な失敗は避けられる。



  売主が今日からできる3つのアクション


 第一に、住宅ローンの契約書を確認し、連帯保証人・連帯債務者の有無を把握する。

第二に、登記事項証明書を取得し、持分割合を正確に把握する。

第三に、複数の不動産会社に査定を依頼し、アンダーローンかオーバーローンかを確認する。

この3つのアクションは、離婚協議が本格化する前に完了させておくべきだ。

査定額とローン残債の関係がわかれば、売却するか保有するかの判断材料が揃う。



  不動産会社への質問リスト


 離婚に伴う売却を依頼する際、不動産会社に確認すべき項目を列挙する。

「離婚に伴う売却の実績は何件ありますか」

「共有名義の売却で注意すべき点は何ですか」

「売却活動中に夫婦双方の連絡が必要な場面はどこですか」

「決済・引き渡し時に双方の立ち会いは必要ですか」

「売却理由を買主に伝える必要はありますか」

これらの質問に明確に答えられる営業担当者を選ぶこと。



編集部まとめ


離婚に伴うマンション売却は、通常の売却と比べて複雑な要素が絡み合う。

財産分与の原則は「2分の1ずつ」。持分割合とは無関係だ。

連帯保証人は離婚しても自動的には外れない。売却によるローン完済が最も確実な解消方法だ。

共有名義の売却には全員の同意が必要。離婚協議の早い段階で売却の合意を取り付けるべきだ。

財産分与の請求期限は離婚から2年。先送りは最も危険な選択だ。

離婚協議書は公正証書化し、売却条件・精算方法を明記すること。

これらを押さえておけば、離婚という人生の転機において、不動産問題で足を引っ張られることはない。

新しい人生のスタートを切るために、マンション売却は「負の遺産を清算する」最も合理的な選択である。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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