top of page
マンション売却窓口 logo

マンション売却ジャーナル

不動産ReNetジャーナル

マンション売却専門誌

相続マンション売却の実践記録──遺産分割協議・相続登記・3000万円特別控除の適用判断、複数相続人による換価分割を円滑に進めた全プロセス

  • 6月16日
  • 読了時間: 12分

  あなたは「相続したマンションは、いつか売ればいい」と思っていないか


 親が亡くなり、遺産にマンションが含まれている。

相続人は複数。誰も住む予定がない。

「いつか整理すればいい」と放置していないか。

その「いつか」が、あなたの手取りを大きく減らす。

2024年4月1日から相続登記が義務化された。相続の開始を知った日から3年以内に登記申請を行う必要があり、違反すると10万円以下の過料が科される。

さらに2024年4月1日より前に相続が発生していた場合も、2027年3月31日までに相続登記をする必要がある。

相続マンションの売却は「待つほど不利になる」構造に変わった。

本稿では、複数相続人が「換価分割」によってマンションを売却し、税務上の落とし穴を回避しながら円滑に資産清算を完了させた実践記録を詳述する。



  「先延ばしバイアス」が相続マンション売却を困難にする


 行動経済学に「現在バイアス」という概念がある。

人間は将来の利益より目先の安楽を優先する傾向を持つ。

相続マンションの売却が遅れる原因の大半は、このバイアスに起因する。

「遺産分割協議で揉めたくない」「兄弟姉妹に連絡するのが面倒」「売却の手続きがわからない」──これらはすべて先延ばしの口実だ。

ある大手仲介会社の営業マンは断言する。「相続から2年以上経過した物件は、書類の散逸、関係者の関係悪化、市況の変化で、売却難度が跳ね上がる」。

相続マンション売却の鉄則は「スピード」である。



  換価分割とは何か──不動産を現金化して分ける唯一の方法


 換価分割は、遺産や共有物を分割する際にとられる方法で、目的物を売却して得られた代金を相続人や共有者の間で分配するというものだ。

相続不動産の分割は「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4種類がある。相続人の人数・誰が住むか・代償金の有無・売却可否で最適解が変わる。

誰も住まない相続マンションにおいて、最も合理的な選択が換価分割だ。

換価分割には、不動産のように分けにくいものでも公平に分割することができる、相続税の納税資金を得られるなどのメリットがある。

スーパーで例えるなら、「大きな魚を丸ごと買うより、切り身にして家族で分ける」イメージだ。

マンションという塊を現金に換え、公平に分配する。これが換価分割の本質である。



  遺産分割協議書──ここを間違えると税務署に否認される


 遺産分割協議書は相続人が自分で作ることも可能だが、遺産の記載漏れやトラブルを防ぐために、士業者に作成を依頼することが一般的だ。

換価分割における遺産分割協議書には、致命的なミスが起こりやすい。

換価分割を行う場合、被相続人名義のままでは売却手続きができないため、相続人の名義に変更した上で売却する。相続人名義に変更する際に、共同相続人全員の共有とするか、相続人の代表者の単独名義にするかを遺産分割協議で決定して、遺産分割協議書に明記しなければならない。

また、売却代金を贈与とみなされないために、いずれの場合も「換価分割を行うため」という文言を入れるようにしなければならない。

この「換価分割を行うため」という一文がなければ、代表相続人から他の相続人への分配金が「贈与」とみなされるリスクがある。

遺産分割協議書の作成で押さえるべきポイントは、戸籍調査で相続人を漏れなく確定させること、不動産は登記事項証明書の記載どおりに転記すること、相続人全員の自筆署名・実印押印・印鑑登録証明書を揃えること、「後日判明した遺産」に関する条項を入れておくことだ。

遺産分割協議書は「契約書」ではない。「相続人全員の合意を証明する書面」である。



  相続登記──「代表相続人方式」で手続きを簡素化する


 換価分割の相続登記には2つの方法がある。相続人全員の共有名義(共同登記)と、代表相続人の単独名義(単独登記)だ。

代表相続人をひとり決めて単独登記することをおすすめする。相続人全員の共同登記にすると、売買契約を全員で行わなくてはならないため手続きがスムーズに進まない恐れがある。代表相続人を選んで相続登記を行うと、その相続人が単独で売主となり買主と売買契約を結ぶことができる。

現役営業マンの証言では「3人以上の共有名義物件は、内覧日程の調整だけで売却が2〜3ヶ月遅れることがある」。

相続登記の費用は司法書士報酬が約10万円前後(不動産1件の場合)で、別途登録免許税がかかる。

登録免許税は固定資産税評価額の0.4%が基本だ。


図1|換価分割による相続マンション売却の流れ(2026年度より編集部作成)


  3000万円特別控除──相続マンションで適用できるケースとできないケース


 相続マンションの売却において、多くの売主が期待する「3000万円特別控除」。

結論から言えば、相続マンションで適用できるケースは極めて限定的だ。

相続した実家が空き家なら、要件を満たすことで売却時に譲渡所得から最高3,000万円までの控除を受けられる。この特例は期間限定のもので2016年4月1日〜2027年12月31日の売却が対象だ。

ただし、実家であってもマンションは対象外である。この特例が対象としているのは「耐震性が低い空き家」のため、修繕計画に基づき計画的な補修が行われるマンションは対象外だ。

対象は、被相続人の居住の用に供していた「昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地」に限られる。区分所有建築物は除かれる。

つまり、「相続空き家の3000万円特別控除」は戸建て専用の特例であり、マンションには使えない。

ただし、相続人自身がそのマンションに居住していた場合は、「居住用財産の3000万円特別控除」が適用できる可能性がある。同居していた父親が亡くなり実家を子どもが相続するケース、同居していた夫が亡くなり自宅を妻が相続するケースであれば、相続人が相続した不動産を居住用として利用しているため、売却時に控除を受けられる。

一方、

父親が亡くなり、別居している子どもが相続するケースは居住用として相続していないため、控除は適用外だ。



  取得費加算の特例──相続税を払った人だけが使える節税手段


 相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、相続開始から3年10カ月以内(相続の申告期限から3年以内)に売却し、譲渡益が発生した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる。これを「取得費加算の特例」という。

適用要件は「相続等で取得」「相続税を納付」「相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡」の3つだ。

配偶者の税額軽減等で相続税ゼロの人は適用不可である。

相続税を納めた人にとって、この特例は極めて重要だ。

相続または遺贈によって取得した財産を相続後3年10ヶ月以内に売却した場合は、売却資産に対応する相続税相当額を取得費に加算することにより、所得税・住民税を軽減することができる。

売却を先延ばしにして3年10ヶ月を過ぎると、この特例は使えなくなる。

相続マンションの売却は「期限との戦い」である。



  取得費不明問題──親がいくらで買ったかわからない場合の対処法


 相続マンションの売却で最も多い相談が「親がいくらで買ったかわからない」という問題だ。

5%ルールとは、購入時の価格(取得費)が分からないときは、売却価格の5%相当額を概算取得費として譲渡所得を計算できるというルールだ。

例えば、亡くなった父親から相続した土地が1,000万円で売れた。しかし、父親がいくらでこの土地を買ったか分からない。このようなケースでは、売った金額1,000万円の5%相当額の50万円が、買ったときの金額(概算取得費)ということになる。

5%ルールは譲渡所得を大きく膨らませる。

4000万円でマンションを売却した場合、取得費が不明なら概算取得費は200万円。仲介手数料等の譲渡費用を差し引いても、3700万円近い譲渡所得が発生する計算だ。

一定の書類が残されているような場合には、それらを元に実額による取得費を計算することができる可能性がある。

購入当時の売買契約書、領収書、住宅ローンの返済明細、不動産取得税の納税通知書──これらの書類がないか、親の遺品を徹底的に探すべきだ。



  換価分割における確定申告──「代表相続人だけ」ではダメな理由


 換価分割を行う過程で、売却・換価する手続きの簡便性から、不動産などを相続人等の共有とせず、代表相続人1人の名義に変更して売却・換価することが多い。この場合の確定申告は、その代表相続人1人が行えばよいと考えがちだが、そうではない。

民法上のモノの流れは「被相続人→長男→売却」でも、税務では実態を重視することから、「各相続人がそれぞれ相続して、それぞれが売却した」と考えて、各人が確定申告を行うことになる。

代表相続人を立てた場合でも、相続人全員が取得割合に応じて申告する必要がある。

これを知らずに代表相続人だけが申告すると、他の相続人が無申告状態になる。

後から税務署に指摘されれば、加算税・延滞税が発生する。



  譲渡所得税の計算──長期譲渡と短期譲渡の分かれ目


 所得税法33条3項により「譲渡した年の1月1日時点での所有期間」で判定する。例えば、2026年12月に売却する場合、2026年1月1日時点で所有期間が5年超なら長期譲渡(20.315%)、5年以下なら短期譲渡(39.63%)となる。

被相続人の所有期間を通算するため、被相続人が長期所有していた不動産は通常長期譲渡となる。

親が20年前に購入したマンションを相続した場合、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得として計算できる。

この「被相続人の所有期間を引き継ぐ」という仕組みを知らないと、短期譲渡と誤認して過大な税金を払うことになる。



  実践記録──3人兄弟による換価分割の全プロセス


 以下は、ある大手仲介会社を通じて編集部が取材した、3人兄弟による相続マンション売却の実例である。

被相続人:父(78歳で死亡)。

相続財産:東京都郊外のマンション(築25年・3LDK)、預貯金約800万円。

相続人:長男(52歳・東京在住)、次男(48歳・大阪在住)、長女(45歳・福岡在住)。

相続発生から売却完了まで約8ヶ月。以下がその全工程だ。


ステップ1:相続発生後1ヶ月以内に「方針の合意」を取る


 父の四十九日法要に3人兄弟が集まった際、長男が切り出した。

「このマンション、誰も住まないなら売って現金で分けよう」。

次男も長女も異論なし。

この時点で「換価分割」という方針が決まった。

ポイントは「全員が顔を合わせる機会」を逃さないことだ。

電話やLINEでのやり取りでは、話がまとまりにくい。

現役営業マンの証言では「相続後3ヶ月以内に方針が決まらないと、感情のもつれから売却まで1年以上かかるケースが多い」。


ステップ2:相続登記と遺産分割協議書の作成を同時進行


 長男が司法書士に依頼し、戸籍謄本の収集から開始した。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の現在の戸籍、被相続人の住民票除票、相続人全員の印鑑登録証明書──書類の量は膨大だ。

遺産分割協議書には「換価分割を行うため」の文言を明記。

代表相続人は長男とし、マンションは長男の単独名義で相続登記を行った。

費用は司法書士報酬約12万円、登録免許税約8万円、合計約20万円。


ステップ3:複数の仲介会社から査定を取る


 長男は大手3社と地元密着型1社の計4社に査定を依頼した。

査定額は3,200万円〜3,600万円と400万円の開きがあった。

高すぎる査定を出した会社には「この価格で本当に3ヶ月以内に売れますか」と質問。

根拠を説明できない営業マンは除外した。

最終的に、3,400万円の査定を出した大手仲介会社と専任媒介契約を締結した。


ステップ4:売り出し価格の設定と販売活動

 査定額3,400万円に対し、売り出し価格は3,480万円に設定。

「相場より高すぎると内覧が入らない。相場と同等だと交渉の余地がない」──営業マンの助言に従った価格設定だ。

販売開始から2週間で5件の内覧が入り、3件目の内覧者から3,350万円で購入申込があった。

長男が次男・長女に電話で確認し、3人合意の上で売買契約を締結した。


ステップ5:売却代金の分配と確定申告


 売却代金3,350万円から仲介手数料約114万円、登記費用等を差し引いた手取りは約3,200万円。

これを法定相続分に従い3等分し、各人約1,066万円を受け取った。

取得費は、父が25年前に2,500万円で購入した売買契約書が見つかったため、実額で計算できた。

建物の減価償却費を差し引いた取得費は約1,800万円。

譲渡所得は約1,300万円(3,350万円−1,800万円−仲介手数料等約250万円)。

3人それぞれの譲渡所得は約433万円。長期譲渡所得税率20.315%を適用し、各人約88万円の納税となった。



  この事例の成功要因を分析する


 この事例が円滑に進んだ理由は3つある。

第一に、相続発生後1ヶ月以内に方針が決まったこと。

第二に、代表相続人方式を採用し、手続きを一人に集約したこと。

第三に、父の売買契約書が残っており、実額で取得費を計算できたこと。

逆に言えば、この3つのいずれかが欠けていれば、売却は大幅に遅れ、税負担も増加していた可能性が高い。



  相続マンション売却で「損をする人」の共通点


 ある大手仲介会社のベテラン営業マンは、相続マンション売却で損をする人の共通点をこう語る。

「とにかく動かない人。相続登記の義務化を知らない。3年10ヶ月の期限を知らない。査定を1社しか取らない。親がいくらで買ったか調べようともしない」。

行動経済学でいう「現状維持バイアス」と「損失回避バイアス」が複合的に働いている。

「行動しなければ失敗しない」という錯覚が、結果的に最大の損失を生む。



  相続マンション売却チェックリスト──今日から始める10のアクション


①相続人全員と連絡を取り、「売却か保有か」の方針を確認する。

②被相続人の遺品から売買契約書・領収書・ローン明細を探す。

③法務局で登記事項証明書を取得し、権利関係を確認する。

④司法書士に相続登記を依頼する(戸籍収集込みで10〜15万円が目安)。

⑤遺産分割協議書に「換価分割を行うため」の文言を明記する。

⑥仲介会社は最低3社から査定を取る。

⑦査定額の根拠を質問し、説明できない会社は除外する。

⑧売り出し価格は「査定額+5〜10%」を上限とする。

⑨成約後、相続人全員がそれぞれ確定申告を行う。

⑩取得費加算の特例を使うなら、相続開始から3年10ヶ月以内に売却を完了させる。



編集部まとめ


相続マンションの売却は、「知識」と「スピード」がすべてを決める。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内の登記申請が必要になった。

取得費加算の特例を使うには、相続開始から3年10ヶ月以内の売却が必要だ。

「相続空き家の3000万円特別控除」はマンションには適用されない。

換価分割でも、確定申告は代表相続人だけでなく相続人全員が行う必要がある。

これらの知識を持たずに相続マンションを放置すれば、過料、税優遇の失効、兄弟間の不和という三重の損失が待っている。


本稿で示した実践記録は、「動く人」だけが得をする相続マンション売却の現実を証明している。

あなたの相続マンションは、今日からでも動き出せる。

その第一歩が、手取りを最大化する唯一の方法だ。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


コンテンツ利用について

本サイトに掲載している記事・分析データ・図表・画像等は、メディア・ブログ・SNS・動画等で引用いただけます。

引用の際は、出典として「マンション売却ジャーナル」の名称表記および、引用元ページへのリンク掲載をお願いいたします。

情報の改変を伴う転載や、出典を省略した掲載はご遠慮ください。

​当ページのリンクコピーはこちら

このページをシェア

白 ゴールド シンプル キャリアコンサルティング インスタグラム投稿 縦長.jpg
1.jpg

Copyright© i-labo, 2025 All Rights Reserved.。

bottom of page