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住み替えでマンションを売却──売却と購入のタイミング調整、ダブルローン回避、仮住まい不要の「売り先行」戦略で資金計画を最適化した実践記録

  • 6月12日
  • 読了時間: 11分

  あなたはまだ「住み替えは大変そう」と思い込んでいないか


 住み替えを検討するとき、多くの売主が最初に抱く不安は「売却と購入のタイミングが合わない」「仮住まいで二度引っ越しになる」「ダブルローンで家計が破綻するのでは」という3点だ。

住み替えの失敗談を耳にすれば、その恐怖は増幅される。

ある大手仲介会社の現役営業マンは「住み替えで失敗する売主のほとんどは、売却と購入を別々の出来事として捉えている」と断言する。

住み替えは「売る」と「買う」を同時並行で設計する複合プロジェクトだ。

本記事では、実際に住み替えを「売り先行」で成功させた売主の実践記録をもとに、資金計画を最適化する具体的な戦略を解説する。



  「損失回避バイアス」が住み替えの判断を狂わせる


 行動経済学では、人間は利益を得る喜びよりも損失を被る痛みを約2倍強く感じることが知られている。

これを「損失回避バイアス」と呼ぶ。

住み替えを検討する売主の多くは、このバイアスによって「仮住まいの費用がもったいない」「ダブルローンは絶対に避けたい」という思考に陥る。

その結果、本来取るべき「売り先行」という堅実な選択を避け、リスクの高い「買い先行」を選んでしまう。

現役営業マンの証言では、住み替えで後悔する売主の8割は「損失を避けようとしてより大きな損失を招いた」パターンだという。

冷静に数字で比較すれば、短期間の仮住まい費用より、ダブルローンの二重返済リスクのほうが遥かに深刻だ。



  住み替えには「売り先行」「買い先行」「同時並行」の3つの選択肢がある


 住み替えでは、「今の家を先に売るか」「新しい家を先に買うか」によって、資金計画やスケジュールの組み方が大きく変わる。

売り先行とは、住んでいる家を売却してから、次に住む物件を購入する方法であり、住宅ローンが残っているマンション売却で選ばれることの多い進め方だ。

売り先行型は、自宅の売却代金が確定してから新居を購入するため、購入プランに無理がなく、堅実な資金計画を立てやすい点がメリットである。

買い先行は、自宅の住宅ローン残高がまだ残っているうちに、追加で住宅ローンを借りて新居を購入する方法だ。

新居へ引っ越ししてから旧自宅を売却することになり、売買代金で住宅ローンを完済するまで、ダブルローンになる。

タイミングよく買い替えるためのポイントは、仮住まいや二重ローンを発生させないように、売却と購入をできるだけ同時にまとめることだ。



  ダブルローンは「仕組み」ではなく「状況管理」がリスクになる


 「ダブルローンは仕組み自体がやばいわけではない」という見方がある。

本当に危険なのは、前提条件を整理しないまま勢いで進めてしまうことだ。

ダブルローンは「買い先行方式」で住み替えを行う際に発生しやすく、住宅ローンが二重になるため、毎月の返済額は単純に約二倍になる可能性がある。

ダブルローン期間中に金利上昇局面に入ると、変動金利型は月額返済が増加するリスクがある。

2026年も物価上昇と賃上げ傾向を背景に政策金利は上がると予測されており、2026年中には政策金利が1.0%から1.5%に到達するとの見方もある。

2026年4月、多くの銀行が変動金利を一斉に引き上げ、メガバンクの変動金利平均は年1%を超え、15年ぶりの水準となった。

金利上昇局面でのダブルローンは、家計を圧迫する最大のリスク要因となる。



  「売り先行」が資金計画を守る最善手である理由


 売り先行は、今住んでいる自宅を売却し、売買代金で住宅ローンを完済してから、新居を購入する方法であり、一度住宅ローンを完済してから新たな住宅ローンを借りることになるので、家計への負担が少ない住み替え方法といえる。

売り先行は、二重返済が発生しないため家計リスクがより小さい選択肢だ。

旧居の引き渡しから新居の引き渡しまでの期間は仮住まいが必要だが、仮住まいの費用と、ダブルローンの累計二重返済を比較すると、売り先行のほうが家計負担が軽くなるケースが多い。

ある大手仲介会社では、住み替え相談の際に「まず売り先行を基本線として検討してほしい」と伝えているという。

なぜなら、売却価格が確定しなければ、購入予算の上限も決まらないからだ。


図1|住み替え戦略の比較:売り先行・買い先行・同時並行のリスクとメリット(2026年版 編集部作成)


  仮住まいを回避する「引渡し猶予」という武器


 引き渡し猶予とは、家を売却して買主に所有権が移した後も、期間を定めて、そのまま住み続けられるようにしてもらうことだ。

引渡し猶予で確保できる期間は長くても1週間~2週間程度の短期間であることがほとんどだ。

売却物件と購入物件の引渡を同日に行う場合、翌日には引っ越せるような状況であれば、3日くらい猶予しても構わないと考える買主は一定数存在する。

引き渡し猶予期間は一般的に1週間〜10日ほど設定され、その間に売主は買主が支払った家の代金をもとに住宅ローンを完済し、新居のローンを組むことができる。

この特約を活用すれば、売り先行でも仮住まいを経由せず、直接新居に引っ越すことが可能になる。

ただし、引渡し猶予は買主にとって不利な条件となるため、交渉力が問われる。



  引渡し猶予を勝ち取るための交渉術


 引き渡し猶予は買主にとって不利な契約になるため買い手が現れにくくなることがある点に注意が必要だ。

また、引き渡し猶予を付けることで、買い手から値下げを要求されることもある。

引き渡し猶予を受け入れてもらえる可能性があるのは、買主に対して、いつどの物件に引っ越すかを確実に伝えることができ、安心感を与えられるような状態の場合だ。

現役営業マンの証言では「購入物件の売買契約書を見せることで、買主の不安は大幅に軽減される」という。

この順番で進めることで、仮住まいをしなくても良いため余計な費用がかからず、資金計画がうまくいけば住宅ローンを組まなくて良いため毎月の利息を払わなくて良いメリットがある。



  「買い替え特約」で購入契約のリスクヘッジを行う


 買い替え特約とは「自宅を売却できないときは、購入契約を白紙に戻せる」という契約のことだ。

個人が売主の中古物件などでは対応は難しいが、新築物件を扱うデベロッパーやハウスメーカーの場合、対応しているケースもある。

万が一売主が、新しい住まいの購入ができない、具体的には住宅ローンの審査が否決になった場合などは、物件の売却を解除するという特約だ。

この特約を活用すれば、売却が想定通りに進まなかった場合でも、購入契約から違約金なしで撤退できる。

ただし、買い替え特約は購入物件の売主にとって不利な条件であるため、人気物件では認められないケースも多い。



  住み替え成功のカギは「売却査定の精度」にある


 判断フローの起点になるのは、いずれも「旧居がいくらで売れるか」の精度だ。

査定額が判断基準として機能するためには、複数社の査定を比較して相場感を確かめておくことが欠かせない。

なお査定価格はあくまで「不動産会社が想定する売却見込み価格」であり、実際の成約価格と一致するとは限らない。

査定額をそのまま手取り想定に流用すると、ダブルローン期間中に資金計画が崩れるリスクがある。

現役営業マンの証言では「査定額の90%を資金計画の基準にすることで、想定外の値引き交渉にも対応できる」という。

楽観的な数字で計画を立てた売主ほど、住み替え時に苦しむ傾向がある。



  実践記録:築12年・駅徒歩8分のマンションを売り先行で成功させた事例


 ある売主は、子どもの小学校入学を機に、より広いマンションへの住み替えを決断した。

当時の住宅ローン残債は約2,800万円。

複数社に査定を依頼した結果、3,500万円前後という数字が出揃った。

売主は査定額の90%である3,150万円を資金計画の基準に設定。

売り出し価格は3,580万円からスタートし、約2ヶ月で3,420万円での成約に至った。

売却決済から新居入居まで、引渡し猶予を7日間設定することで、仮住まいなしの直接引っ越しを実現した。



  売り先行を成功させる5つの実践ステップ


 第一に、複数社の査定を比較し、最低ラインの売却価格を設定する。

第二に、その最低ラインで住宅ローンを完済できるか、残債と照合する。

第三に、完済後の手取り額をもとに、新居の購入予算を逆算する。

第四に、売却活動と並行して、購入候補物件のリストアップを進める。

第五に、売買契約時に引渡し猶予特約を交渉し、仮住まい回避を目指す。

この順序を守れば、資金計画が破綻するリスクは大幅に低減する。



  2026年の金利上昇局面では「売り先行」の優位性が増す


 2024年3月のマイナス金利政策終了後、2024年7月、2025年1月、2026年1月と段階的に政策金利は引き上げられている。

今後さらに金利が上がれば、買い手の借入可能額が下がり、価格交渉が厳しくなる可能性がある。

2026年6月現在、住宅ローン金利は変動・固定ともに上昇傾向が続いており、変動金利は2026年春には0.9~1.1%台が中心となっている。

金利上昇局面では、ダブルローンのリスクが従来以上に高まる。

売り先行で売却代金を確定させてから新居購入に動くことで、金利変動リスクを最小化できる。



  3,000万円特別控除と住み替えの関係を押さえる


 マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例がある。

3,000万円控除を適用するには、マンションを「住まなくなってから3年以内」に売却する必要がある。

3,000万円控除は、過去2年間利用していないことが条件となり、不動産売却による税制優遇を短期間で何度も受けられないようにするための措置だ。

住み替えで売却益が出る場合、この特例を活用できるかどうかで手取り額が数百万円変わる。

ただし、新居の住宅ローン控除との併用はできないため、どちらを選ぶかは税理士への相談が必要だ。



  住み替えローンという「奥の手」を知っておく


 三菱UFJ銀行では「住み替えローン」という専用商品はないが、通常の住宅ローンで既存住宅ローンの返済資金を含めて住み替え資金の借り入れができる。

住み替えローンは、手元資金の確保がしやすく、ダブルローンを避けられるというメリットがある一方で、売却と購入を同時に進める必要があるなどの制約もある。

住み替えローンを利用するには、売却と購入のタイミングを揃える必要があるという点が簡単ではない。

また、住み替えローンは通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなり、そもそも残債務が大きすぎると住み替えローンを利用できないケースもある。

売却価格がローン残債を下回るオーバーローン状態の場合に検討する選択肢として覚えておきたい。



  「同時決済」という理想形を目指すための条件


 理想的な買い替え方法は、「家の売却」と「新居の購入」を同時に進めまとめる「売り買い同時進行・同時決着型」だ。

現在の家の引き渡し日と、新しい家への入居日を合わせられれば、単に引越しをするだけで住み替え完了となる。

ただし、売却と購入をほぼ同時にまとめるのは至難の業であり、売り買いを同時に進めることはできるが、相手には相手の都合があり、同時にまとめられる確率は低いのが実際だ。

現役営業マンの証言では「同時決済が実現するのは全体の2割程度」という。

最初から同時決済を狙うのではなく、売り先行を基本として、結果的に同時に近づけばラッキーという心構えが現実的だ。



  不動産会社選びが住み替え成功を左右する


 マンションの買い替えを成功させるポイントの中で、「頼りになる不動産会社を選ぶ」ことは最も重要だ。

いい不動産会社であれば、スケジューリングや買取の検討についても一緒に考えていくことができる。

住み替えでは、売却と購入の両方を同じ不動産会社に依頼するケースと、別々の会社に依頼するケースがある。

ある大手仲介会社では、住み替え専門のチームを設けており、売却担当と購入担当が連携してスケジュール調整を行う体制を整えている。

会社選びの際は「住み替え実績」を確認し、タイミング調整のノウハウを持っているかどうかを見極めることが重要だ。



  住み替え時に陥りやすい3つの失敗パターン


 第一の失敗は、新居への憧れが先行し、売却価格を楽観視してしまうパターンだ。

査定額をそのまま手取り額と勘違いし、高額な新居の購入契約を結んでしまう売主は少なくない。

第二の失敗は、売却活動を始める前に購入物件を決めてしまうパターンだ。

「この物件を逃したくない」という心理が、売り急ぎによる大幅値引きを招く。

第三の失敗は、引渡し猶予や買い替え特約といった交渉術を知らないまま売買契約を結ぶパターンだ。

これらの特約を知っているだけで、住み替えの選択肢は大きく広がる。



  住み替えの「正解」は人によって異なる


 住宅ローン残債が少なく、売却価格が残債を大きく上回る場合は、売り先行が最適解となる。

一方、転勤や介護など急を要する事情がある場合は、ダブルローンを許容してでも買い先行を選ぶケースもある。

特に、転勤などで急遽移動を要求される場合、または新築物件など人気物件を早期に確保したい場合、新居購入と旧居売却のタイミングがズレることがある。

重要なのは、自分の状況を正確に把握し、どのリスクを取るかを明確にすることだ。

「リスクゼロ」の住み替えは存在しない。



編集部まとめ


住み替えにおけるマンション売却で最も重要なのは、売却と購入を「一体のプロジェクト」として設計することだ。

売り先行を基本戦略とし、複数社の査定で売却価格の精度を高め、その90%を資金計画の基準とする。

引渡し猶予特約を交渉し、仮住まいを回避できれば、引っ越しは1回で完了する。

買い替え特約で購入契約のリスクヘッジを行い、万が一の場合に備える。

2026年の金利上昇局面では、ダブルローンのリスクがかつてなく高まっている。

これらの知識を持っていれば、住み替えで「思わぬ損失」を被ることはない。

それが、住み替え成功への第一歩となる。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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