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マンション売却「手残り額」完全ガイド──売却価格から諸費用・税金・住宅ローン残債を差し引いた「本当の利益」を正確に把握し、3000万円特別控除・仲介手数料最適化・売却タイミング調整を駆使して手元に残るお金を最大化するための実践的フレームワーク

2 日前
読了時間: 17分

あなたは「売れた金額」をそのまま手に入れられると思っていないか


マンション売却の相談で最も多い誤解がある。

「5,000万円で売れたら、5,000万円が手元に残る」という思い込みだ。

現実は違う。

マンション売却時は仲介手数料や印紙税などの諸費用がかかるため、手元に残る金額は売却価格の4%ほど少なくなる。

さらに住宅ローン残債があれば、それも差し引かれる。

譲渡所得が発生すれば、税金も支払う。

つまり「手残り額」とは、売却価格から諸費用・税金・ローン残債をすべて引いた「本当の利益」である。

手取り額=売却価格−ローン残債−諸費用−譲渡所得税という計算式に集約される。

この数字を正確に把握せずに売却を進めると、次の住まいの資金計画が狂う。

「いくらで売れるか」という成約価格に目が行きがちだが、実際に残る手残り額を正確に把握するには「費用がいくらかかるか」を知る必要がある。

本記事では、手残り額を構成する4つの要素を分解し、それぞれを最適化するための具体的なアクションを示す。


「メンタル・アカウンティング」が手残り額を見誤らせる


行動経済学者リチャード・セイラーが提唱した「メンタル・アカウンティング(心の会計)」という概念がある。

人は同じ金額でも、「得た金」と「使う金」を心理的に別の財布で管理する。

マンション売却においても、この心理バイアスが働く。

「5,000万円で売れた」という「得た金」の感覚が先行し、そこから引かれる諸費用や税金を過小評価してしまう。

ある大手仲介会社の営業マンは証言する。

「売却後に『思ったより手元に残らなかった』と言われるケースが後を絶たない。特に仲介手数料と譲渡所得税の大きさに驚かれる方が多い」

この心理を克服するには、最初から「手残り額」を起点に逆算する思考が必要だ。

売却価格ではなく、手残り額から考える。

これが売主にとっての正しい出発点である。


手残り額の計算式──4つの要素を完全分解する


手残り額の計算式は明快だ。

【手残り額】=【売却価格】−【諸費用】−【住宅ローン残債】−【譲渡所得税】

それぞれの要素を詳しく見ていこう。

第一に、諸費用。

諸費用の中で最大のウェイトを占めるのが「仲介手数料」で、「(売却価格の3%+6万円)+消費税」という計算式が一般的だ。1億円の物件であれば、約336万円(税込)となる。

400万円を超える物件は速算式の「取引額×3%+6万円」(税抜)で計算され、これが依頼者の一方から受けられる上限となる。例えば3,000万円の物件では税込105.6万円が上限になる。

第二に、印紙税。

「不動産の譲渡に関する契約書」には、印紙税の軽減措置が適用される。この軽減措置は平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される、記載金額が10万円を超えるものが対象だ。

契約金額が5,000万円超1億円以下の場合は3万円(軽減前は6万円)となる。

第三に、住宅ローン残債。

住宅ローンの残債があるマンションの売買契約を完了するためには、ローン残債の一括返済、抵当権の抹消登記が必須だ。

一括返済では一般的に手数料(一括返済手数料)が発生するが、ローン契約から一括返済までの時間が短い場合、手数料とは別に違約金のような形で費用が発生することがある。

第四に、譲渡所得税。

譲渡所得がプラスの場合のみ発生する税金だが、これが最も計算が複雑な要素である。


図1|手残り額の計算構造(2026年度より編集部作成)

仲介手数料──売却価格に連動する最大の諸費用


仲介手数料は、諸費用の中で最も金額が大きい。

スーパーで商品を買うとき、レジで表示された金額をそのまま払う。

しかしマンション売却では、売れた金額から「手数料」が引かれてから手元に届く。

この構造を理解することが第一歩だ。

仲介手数料は宅地建物取引業法にもとづく国土交通省告示で上限が定められており、売買価格が800万円を超える場合は「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限額だ。


速算表を示す。

・3,000万円の物件→税込105.6万円

・5,000万円の物件→税込171.6万円

・7,000万円の物件→税込237.6万円

・1億円の物件→税込336.6万円


支払いのタイミングは、契約時に半分、引き渡し時に半分、あるいは引き渡し時に一括で支払うのが一般的だ。

重要なのは、これが「上限額」であるという点だ。

特例はあくまで「上限」であり、必ずしも上限額が請求されるわけではない。

交渉の余地がある。

ただし、現役営業マンの証言では「手数料を値切ると、広告費や内見対応の質が下がるリスクがある」という。

仲介手数料の最適化は、値切ることではなく、適正なサービスを受けながら成約価格を最大化することにある。


住宅ローン残債──アンダーローンとオーバーローンの分岐点


売却に出される不動産の約50%前後が、ローン残債付きの状態だと言われている。

ローン残債が売却価格を下回るか、上回るか。

この一点で、売却の難易度が大きく変わる。

住宅ローンの残債額が査定価格を上回るか、下回るかによって資金計画や売却方法の考え方が変わってくる。アンダーローン・オーバーローンのどちらかによって大きく売却手続きが違ってくる。

アンダーローン(売却価格>残債)の場合。

マンション売却金額がローンの残債を上回るアンダーローンなら、売却の難易度は高くない。

売却代金でローンを一括返済し、残った金額が手残り額となる。

オーバーローン(売却価格<残債)の場合。

売却代金だけではローンを完済できない。

自己資金で補填するか、住み替えローンを活用するか、任意売却を検討するか。

いずれにせよ、金融機関との調整が必要になる。

売主は買主から売買代金を受け取り、そのお金で住宅ローン残債を一括返済する。そして決済引渡し終了後、司法書士が法務局へ行って登記申請をおこない、抵当権抹消手続きは完了となる。

売却前に必ず残債証明書を取得し、正確な残債額を把握することが第一歩だ。


譲渡所得税──所有期間5年の壁と税率の激変


譲渡所得税は、売却益が出た場合にのみ発生する。

しかし、その税率の高さに驚く売主は多い。

長期譲渡所得とは、売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年超を超える財産を売却した際に課税される税金で、税率は20.315%。短期譲渡所得とは、売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下の財産を売却した際に課税される税金で、税率は39.63%だ。

この差は約2倍。

せっかく高く売れたのに、短期譲渡所得に該当してしまうと、購入時の仲介手数料や不動産取得税、売却時の仲介手数料や測量費などの各種コストに加えて、39.63%の税金がかかることとなり、当初の見込みよりも手取り額が少なくなってしまう。

注意すべきは、所有期間の判定基準だ。

2021年11月10日に購入した資産を2026年11月11日に譲渡した場合、11月11日で満5年を超えているが、譲渡した2026年の1月1日時点で5年を超えていないため、長期譲渡所得とならない。

「購入から売却まで5年」ではなく、売却年の1月1日で判定する。2021年中に購入した不動産を2026年中に売却しても、2026年1月1日時点では所有期間が5年以下となる場合がある。

たった数ヶ月の違いで、税金が倍近く変わる。

売却タイミングの調整が、手残り額を大きく左右する。


3,000万円特別控除──マイホーム売主最大の武器


マイホームを売却する売主にとって、最も強力な節税手段がある。

一定要件を満たす居住用財産では、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を控除できる。

譲渡所得が3,000万円以下なら、譲渡所得税はゼロになる。

本体のマイホーム3,000万円特別控除には「いつまでの譲渡が対象」という適用期限の定めがなく、2026年中の売却にもそのまま適用できる。時限措置ではないため、制度終了を理由に売り急ぐ必要はない。

ただし、適用には要件がある。

この特例を受けるためだけの目的として入居した家ではないこと。別荘など娯楽や保養のための家ではないこと。売った年の前年および前々年に3,000万円の特例控除など他の特例を受けていないこと。住まなくなってから3年経過した年の12月31日までに売却していること。売る相手が配偶者や兄弟といった、生計を一つにする親族ではないこと。

特に注意すべきは「住まなくなってからの期限」だ。

住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了させる必要がある。たとえば、2026年の5月に引っ越しをした場合、3年後の2029年の12月31日までに売却手続きを終わらせなければならない。

2026年中に売却した場合の申告時期は、2027年2月16日〜3月15日の確定申告で適用を受ける。


10年超所有軽減税率──3,000万円控除との併用で税負担を最小化


所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合、さらに有利な特例がある。

「10年超所有軽減税率の特例」は、売却した自宅や敷地の所有期間が10年を超えていれば、課税譲渡所得にかかる税率が、通常の長期譲渡所得税率よりも下がるという特例だ。売却益6,000万円以下の部分は14.21%(所得税10.21%+住民税4%)に軽減される。

通常の長期譲渡所得税率20.315%と比較すると、約6%の差がある。

さらに重要なのは、3,000万円特別控除との併用が可能な点だ。

10年超所有軽減税率の特例は、「3,000万円特例控除」制度との併用が可能だ。3,000万円特例控除と10年超所有軽減税率の特例を併用することで税額を大幅に軽減できるため、不動産売却時には必ずチェックしておこう。

譲渡所得が3,000万円未満の場合は「マイホーム特例」だけで譲渡所得税を0円にすることも可能だ。

具体例を示す。

譲渡所得が1億円(10年以上所有)で「10年超所有軽減率の特例」と「3,000万円特別控除」の両方が適用となる場合、譲渡所得は7,000万円になる。6,000万円までの部分の譲渡所得税は6,000万円×14.21%=852.6万円、6,000万円超の部分の譲渡所得税は1,000万円×20.315%=203.15万円となり、合計で約1,056万円となる。

特例を適用しない場合と比較すると、数百万円の差が生じる。


取得費の把握──購入時の書類が手残り額を左右する


譲渡所得税を計算する上で、決定的に重要な数字がある。

「取得費」だ。

取得費とは、マンションを購入したときの代金と、購入にかかった諸費用の合計額である。

譲渡所得税の計算で用いるマンションの取得費とは購入当時の代金や購入手数料・登記費用・住宅ローンの手数料・設備費・改良費などで、建物部分の取得費は減価償却をする必要がある。

問題は、購入時の書類が見つからないケースだ。

取得費が分からない場合は、売却価額の5%を概算取得費にできるが、実際の取得費より大幅に低くなり、税額が増えることがある。

5,000万円で売却した場合、概算取得費は250万円。

実際に3,500万円で購入していたとしても、書類がなければ250万円として計算される。

その差3,250万円が、譲渡所得として課税対象になる。

売却を検討し始めたら、まず購入時の売買契約書、領収書、登記費用の明細を探すことが最優先だ。


減価償却──建物価値の目減りを正確に計算する


取得費を計算する際、建物部分は減価償却を行う。

マイホームの減価償却の計算式は「減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数」だ。

鉄筋コンクリート造のマンションの場合、非事業用(マイホーム)の償却率は0.015だ。

建物購入価額2,000万円、償却率0.015(鉄骨鉄筋コンクリート造)、経過年数7年の場合、減価償却費=2,000万円×0.9×0.015×7年=189万円となる。

この減価償却費の分だけ、取得費が減少する。

取得費が減少すれば、譲渡所得が増加し、税金も増える。

居住用は減価償却される期間が長く、取得費がなかなか小さくならないため、譲渡所得が小さくなって税金も少なくなる。

投資用マンションと比較すると、マイホームは減価償却の影響が小さい。

しかし、長期間保有していた場合は、この計算を正確に行わないと税額を見誤る。


手残り額シミュレーション──5,000万円で売却した場合


具体的な数字で手残り額を計算してみよう。

【条件】

・売却価格:5,000万円

・購入価格:4,000万円(土地1,600万円、建物2,400万円)

・購入時諸費用:200万円

・所有期間:12年(10年超所有)

・住宅ローン残債:1,500万円

【諸費用の計算】

・仲介手数料:(5,000万円×3%+6万円)×1.1=171.6万円

・印紙税:1万円(軽減税率適用)

・抵当権抹消登記費用:約2万円

・その他(測量費等):約10万円

・諸費用合計:約185万円

【取得費の計算】

・建物の減価償却費:2,400万円×0.9×0.015×12年=388.8万円

・取得費:4,000万円+200万円−388.8万円=3,811.2万円

【譲渡所得の計算】

・譲渡所得:5,000万円−3,811.2万円−171.6万円−1万円=1,016.2万円

・3,000万円特別控除適用後:1,016.2万円−3,000万円=マイナス(課税なし)

【手残り額の計算】

・手残り額:5,000万円−185万円−1,500万円−0円=3,315万円

売却価格5,000万円に対し、手残り額は約3,315万円。

売却価格の約66%が実際に手元に残る計算だ。


手残り額を最大化する5つの具体的アクション


手残り額を増やすには、4つの要素それぞれを最適化する必要がある。

【アクション1】所有期間5年超のタイミングを待つ

短期譲渡所得(39.63%)と長期譲渡所得(20.315%)の差は約2倍。

売却を急がないのであれば、翌年1月1日を待つことで税負担を大幅に減らせる。

【アクション2】10年超所有であれば軽減税率を活用する

3,000万円控除との併用で、税負担を最小化できる。

所有期間が9年を超えているなら、10年超のタイミングを待つ価値がある。

【アクション3】購入時の書類を徹底的に探す

売買契約書、領収書、登記費用の明細。

これらがあれば、概算取得費(売却価格の5%)ではなく、実際の取得費で計算できる。

購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用の一部、増改築費などを証明できる資料を確認せよ。

【アクション4】複数社に査定を依頼し、売却価格を最大化する

手残り額を増やす最も直接的な方法は、売却価格を上げることだ。

複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な売出価格を見極める。

【アクション5】住み替えの場合は「売り先行」か「買い先行」かを戦略的に選ぶ

売り先行なら、手残り額を確定させてから次の住まいを探せる。

資金計画の精度が高まり、無理のない住み替えが可能になる。


不動産会社に確認すべき3つの質問


手残り額を正確に把握するために、不動産会社に必ず確認すべき質問がある。


【質問1】「この売出価格で売れた場合、手残り額はいくらになりますか?」

仲介手数料、印紙税、登記費用を含めた諸費用の概算を出してもらう。

仲介手数料や税金、登記費用などは金額が大きく、あらかじめ計算に入れておかないと、いざ売れたあと、思ったより資金が残らず、次の住まいの資金計画に支障をきたす可能性がある。


【質問2】「譲渡所得税の概算を教えてください」

取得費の資料を持参し、3,000万円控除や軽減税率が適用できるか確認する。

正確な税額は税理士に確認すべきだが、概算は把握しておく。


【質問3】「住宅ローンの一括返済にかかる手数料はいくらですか?」

これは金融機関に直接確認が必要だが、不動産会社も一般的な相場を把握している。

売却前に金融機関に問い合わせ、手数料の正確な金額を把握しておくことが望ましい。フラット35であれば一括返済手数料は無料だが、民間銀行の固定金利適用中の場合は数万円かかるケースもある。この費用を見落とすと、決済直前に想定外の出費が発生する。


【質問4】「売却後の確定申告で何か手続きは必要ですか?」

3,000万円特別控除や軽減税率を適用するためには、売却翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要だ。申告を怠ると特例は適用されず、本来払わなくてよかった税金を払うことになる。不動産会社は税務の専門家ではないが、確定申告が必要かどうか、税理士への相談が必要なケースかどうかの目安は把握している。


【質問5】「仲介手数料の交渉は可能ですか?」

法定上限は「売却価格×3%+6万円(税別)」だが、交渉の余地がないわけではない。複数社に査定を依頼した上で、販売活動の内容と手数料のバランスを比較する。ただし手数料の削減だけを優先すると販売活動の質が落ちるリスクもあるため、「手残り額の最大化」という観点で総合的に判断すること。


 これら5つの質問を査定の場で必ず確認することで、手残り額の全体像が見えてくる。「売却価格がいくらか」ではなく「手元にいくら残るか」を軸に売却計画を立てること──その習慣が、売却後の資金計画の安定につながる。


手残り額を最大化する3つのレバー


売却価格が同じでも、手残り額は大きく変わる。その差を生むのは3つのレバーだ。


レバー① 売却タイミングの調整

保有期間が5年を超えるかどうかで、譲渡所得税率は約2倍変わる。5年以下の短期譲渡では39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)、5年超の長期譲渡では20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)だ。

たとえば譲渡所得が1,000万円のケースでは、短期譲渡なら約396万円、長期譲渡なら約203万円の税負担となり、その差は約193万円に達する。売却を数ヶ月先延ばしするだけで、この差が消える可能性がある。

ただし注意が必要なのは、保有期間の起算日だ。売却した年の1月1日時点での保有期間で判定される。2020年2月に購入した物件を2025年2月に売却した場合、1月1日時点では4年11ヶ月しか経過していないため、短期譲渡扱いになる。「購入から5年」ではなく「売却年の1月1日時点で5年超」という点を正確に把握しておくことが欠かせない。


レバー② 3,000万円特別控除の確実な適用

居住用財産の3,000万円特別控除は、適用条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる強力な特例だ。多くのケースで税負担がゼロになる。

しかし適用条件を満たしていない売主が、この特例を「使えるもの」と思い込んで計画を立ててしまうケースがある。投資用に貸し出していた物件、売却前に転居してから3年以上経過した物件、同じ年に二つの物件で適用しようとしているケースなどは、原則として適用外だ。

確定申告は売却翌年の2月16日から3月15日に行う必要がある。申告を怠ると特例は適用されず、延滞税も発生する。売却前に税理士へ相談し、自分の物件が特例を受けられるかを必ず確認しておくことが鉄則だ。


レバー③ 仲介手数料の最適化

仲介手数料は「売却価格×3%+6万円(税別)」が法定上限だ。売却価格4,000万円であれば、最大で約139万円になる。

この費用は交渉次第で変わる余地がある。売却実績が豊富で物件に自信を持っている仲介会社ほど、手数料の減額交渉に応じるケースがある。複数社に査定を依頼し、販売活動の具体的な内容と手数料のバランスを比較することが、最適化への第一歩だ。

ただし手数料を下げることだけを優先すると、販売活動の質が落ち、最終的な成約価格が下がるリスクもある。「手数料を1%下げて100万円節約したが、成約価格が200万円低くなった」では本末転倒だ。手残り額の計算は、手数料単体ではなく「最終的に手元に残る額」で行うべきだ。


ケーススタディ──手残り額シミュレーションの実例


4つのパターンで手残り額を試算する。いずれも売却価格5,000万円・購入価格3,500万円(2015年購入)を前提とする。


パターンA:3,000万円特別控除が適用できるケース(長期保有・居住用)

譲渡所得は売却価格5,000万円から取得費3,675万円(購入価格3,500万円+取得時の諸費用175万円)と譲渡費用175万円(仲介手数料等)を差し引いた1,150万円。ここから3,000万円特別控除が適用されるため課税対象はゼロ。税負担なし。

手残り額は5,000万円−175万円(諸費用)=4,825万円(ローン残債がない場合)。


パターンB:3,000万円特別控除が適用できないケース(投資用物件・長期保有)

譲渡所得1,150万円に長期譲渡税率20.315%が適用。税負担約234万円。

手残り額は5,000万円−175万円(諸費用)−234万円(税金)=4,591万円。パターンAとの差は234万円。


パターンC:短期譲渡(保有5年以下)・特別控除なし

同じ譲渡所得1,150万円に短期譲渡税率39.63%が適用。税負担約456万円。

手残り額は5,000万円−175万円−456万円=4,369万円。パターンAとの差は456万円。長期まで待てる状況なら、待つべきだ。


パターンD:取得費が不明で概算取得費を使うケース

購入当時の売買契約書を紛失し、取得費が証明できない場合、売却価格の5%(250万円)を概算取得費として使うことができる。

この場合、譲渡所得は5,000万円−250万円(概算取得費)−175万円=4,575万円と大幅に増える。長期譲渡税率20.315%で税負担は約929万円。手残り額は5,000万円−175万円−929万円=3,896万円。パターンAとの差は929万円に達する。

売買契約書の保管がいかに重要かを、この数字が示している。


手残り額計算の「落とし穴」──見落としやすい費用一覧


手残り額の計算で見落とされやすい費用を整理しておく。

抵当権抹消費用(1万〜2万円程度)、住宅ローン一括返済手数料(金融機関によって無料〜数万円)、引っ越し費用(10万〜30万円)、ハウスクリーニング費用(3万〜15万円)、住み替えの場合の仮住まい費用(月10万〜20万円×数ヶ月)。

これらは一つひとつは小さく見えても、合計すれば50万〜100万円超になることがある。住み替えを前提とした資金計画では、「売却手残り額から住み替え諸費用を差し引いた額」を実質的な手残り額として把握しておくべきだ。



編集部まとめ


マンション売却で最終的に手元に残る金額は、売却価格そのものではない。

売却価格から仲介手数料・各種諸費用・譲渡所得税・ローン残債を差し引いた額が、本当の意味での「手残り額」だ。この計算を事前に正確に行わないまま売却を進めると、「思ったより手元に残らなかった」という後悔につながる。

手残り額を最大化するための鍵は3つだ。

第一に、保有期間を把握し、売却タイミングを調整する。売却年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで、税率が約2倍変わる。数ヶ月の先延ばしで数百万円の差が生まれる可能性がある。

第二に、3,000万円特別控除の適用可否を事前に確認する。居住用財産であれば、多くのケースで税負担をゼロにできる強力な特例だ。しかし投資用物件や転居後3年以上経過した物件は適用外になる。売却前に税理士へ相談することを惜しまないこと。

第三に、取得費の証拠書類を揃えておく。購入時の売買契約書を紛失していると、概算取得費(売却価格の5%)しか使えず、税負担が大幅に増える。探せる限り書類を探し、見つからない場合は税理士に相談してできる限りの証明を試みること。


最後に強調したいのは、手残り額の計算は「売却を決める前」に行うべきだということだ。計算してみて初めて「今は売らない方がいい」という判断が生まれることもあるし、「早めに動いた方が有利」とわかることもある。

まず数字を把握すること。それが、マンション売却で後悔しないための唯一の出発点だ。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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