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マンション売却「複数社査定」完全ガイド──一括査定サイトの仕組み・3〜5社比較のメリット・査定額のばらつきを見極める方法から、営業電話への対処法・媒介契約の選び方まで徹底解説し、最適な不動産会社選びを実現するための実践的フレームワーク

  • 7月28日
  • 読了時間: 12分

あなたはまだ「査定額が高ければ高いほど良い」と信じていないか


 マンション売却を検討するとき、多くの売主が最初に取る行動が「一括査定サイトで複数社に査定を依頼する」というステップだ。

この行動自体は正しい。

問題は、その後の判断軸にある。

「5社から査定が来た。一番高い金額を出した会社に任せよう」──この発想こそが、売却失敗への最短ルートだ。

不動産会社から提示される査定額が高いというだけで、その不動産会社に仲介を依頼しようとする方も多いのではないだろうか。しかし、なかには、契約を結んでもらうためにあえて相場より高い査定額を提示する不動産会社もあるため、注意が必要だ。

本稿では、複数社査定の正しい活用法から、一括査定サイトの裏側、営業電話への対処法、そして媒介契約の選び方まで、売主が知るべき実践的フレームワークを徹底解説する。



  「アンカリング効果」が高額査定に騙される心理メカニズム


 行動経済学に「アンカリング効果」という概念がある。

最初に提示された数字が「錨(アンカー)」となり、その後の判断が無意識にその数字に引きずられる現象だ。

マンション査定でいえば、最初に「6,000万円」という数字を見せられると、売主の頭の中ではその金額が基準になる。

その後、他社から「5,200万円」「5,400万円」という査定が来ても、「安すぎる」と感じてしまう。

だが、市場の真実はどちらにあるのか。

たとえば一括査定で査定額2,000万円前後が並ぶなか、1社だけ3,000万円と突出して高い場合は、その査定額を鵜呑みにしないほうが良いだろう。高すぎる査定額を提示するのは、売主を集めるための営業手法のひとつだ。

ある大手仲介会社の現役営業マンは証言する。「査定額はあくまで"提案"。実際に売れる価格とは別物。高い査定を出して媒介契約を取り、後から値下げ提案するのは業界の常套手段」。

この構造を理解しているかどうかで、売却結果は大きく変わる。



  一括査定サイトの仕組み──無料の裏側にある収益構造


 一括査定サイトは売主にとって無料だ。

だが、「無料」には必ず理由がある。

サイト運営会社は、不動産会社から「送客手数料」を受け取っている。

売主1名の情報を1社に送るごとに、数千円から1万円程度の手数料が動く。

つまり、売主の個人情報は「商品」なのだ。

累計査定依頼件数は117万件を突破(2016年10月~2026年3月末時点)し、利用者の95.5%が「安心・安全に取引できた」と回答している。

LIFULL HOME'Sは個人情報を伏せつつも、多くの会社から査定を受けることができる不動産一括査定サイトだ。全国4,500社以上の不動産会社から最適な会社が選択できる。

この仕組みを理解すれば、なぜ査定依頼直後に複数社から一斉に電話がかかってくるのかがわかる。

不動産会社は「送客手数料」を払っている以上、何としても媒介契約を取りたい。

スーパーの特売品に人が殺到するように、売主の情報に不動産会社が群がる構図だ。



  3〜5社比較が最適解である理由──情報の質と手間のバランス


 では、何社に査定を依頼するのが正解か。

結論は「3〜5社」だ。

査定では、不動産会社ごとに提示される査定額が異なることが一般的だ。複数の会社に依頼することで、さまざまな査定額から判断してその物件のおおよその相場価格を知ることができる。

2社では比較が不十分。1社が極端な数字を出した場合、判断材料が足りない。

6社以上になると、対応の手間が膨大になり、かえって判断が鈍る。

会社規模が違う不動産会社からそれぞれ査定を受けることで、査定額とともに、売却活動の違いや営業スタイルなども比較できる。大手不動産は全国に支店や営業所を持ち、ブランド力と広告力が魅力だが、売却マニュアルがあることが多く、柔軟さに欠ける場合がある。

理想的な組み合わせは、大手2社、地域密着型2〜3社だ。

大手の広告力と、地元業者の地域情報──両方の強みを比較できる体制を作れ。



  査定額のばらつきを見極める3つの判断軸


 複数社から査定が出揃ったとき、どう判断するか。

第一の軸は「中央値からの乖離」だ。

一般的には、相場より±10%以上の差がある場合は注意が必要だ。周辺の成約事例や似た条件の物件と比べて、極端に高い金額が提示されている場合は、現実離れしている可能性がある。

5社の査定額が「5,000万円」「5,200万円」「5,300万円」「5,400万円」「6,200万円」だったとする。

中央値は5,300万円。6,200万円は中央値から17%も乖離している。

この6,200万円を出した会社は、疑いの目で見るべきだ。


 第二の軸は「根拠の具体性」だ。

査定額に説得力が感じられないときは、他社の査定と比較して判断しよう。「このエリアは人気ですから」「最近は相場が上がってますよ」といった曖昧な言葉しか出てこない場合は注意が必要だ。

「同じマンションの3階が先月5,150万円で成約した。お客様の物件は5階で眺望が良いので、5,300万円を提案します」──このような具体的根拠があるかどうかが分水嶺だ。


 第三の軸は「売却戦略の明確さ」だ。

査定額だけでなく、「どう売るか」を説明できる会社を選べ。

査定額だけでなく、査定根拠や販売戦略を比較することが大切だ。


図1|複数社査定の判断フローチャート(2026年版編集部作成)


  高すぎる査定額の危険性──「売れ残り」がもたらす負のスパイラル


 なぜ高すぎる査定額が危険なのか。

高すぎる査定額で売り出すと、買い手がつきにくくなり、結果的に値下げ交渉で不利になったり、市場で「売れ残り物件」として評価が下がったりするリスクがある。

不動産ポータルサイトでは、物件の掲載日が記録されている。

3ヶ月も4ヶ月も売れ残っている物件を見て、買い手はどう思うか。

「何か問題があるのでは」「もっと値下げするはず」──こう考えるのが人間心理だ。

査定額1,900万円の不動産を900万円で売却したという体験談もある。初期の査定額よりもかなり売買価格が低くなり、そこで手放すしかないことになったというケースだ。

高額査定に飛びついた結果、半額近くで売る羽目になる──これが最悪のシナリオだ。



  「囲い込み」の手口──両手仲介を狙う不動産会社の実態


 高額査定を出す会社には、もう一つの危険が潜む。

「囲い込み」だ。

「囲い込み」とは、売主から不動産の売却を依頼された不動産仲介会社が他社に物件情報を開示しなかったり、客付けを拒んだりすることで、意図的に「両手取り引き」で売買を成立させようとする行為を指す。

大手不動産仲介では「囲い込み」が蔓延している。住友は50%で三井は約40%という両手取引比率が報告されている。売却時は両手取引比率が高い会社に注意が必要だ。

両手仲介が成立すると、不動産会社は売主・買主双方から仲介手数料を受け取れる。

両手仲介を成立させると、1件の取引で2倍の収益を得られるため、囲い込みをおこなうことで仲介業者は非常に効率よく収益をあげることができる。

高額査定で売主を引きつけ、媒介契約を取る。

その後、他社からの問い合わせを断り、自社の顧客だけに紹介する。

売れないまま時間が経ち、売主が焦り始めたところで値下げを提案。

最終的に相場より安く、自社の顧客に売却──これが囲い込みの典型的な流れだ。

2025年以降に「囲い込み」が確認された宅建業者は指示処分の対象となる。

法改正で罰則が強化されたとはいえ、グレーな手口は依然として残っている。



  営業電話への対処法──主導権を握る5つのテクニック


 一括査定後の電話ラッシュに悩む売主は多い。

一括査定サービスを利用すると、「しつこい営業電話がかかってくる」という情報もあるが、実態は、査定を依頼した複数社から一斉に電話がかかってきたり、タイミングの悪いときに電話が来たといった印象から「しつこい」と感じてしまいやすい。

対処法の第一は「連絡手段を指定する」ことだ。

査定依頼時の備考欄に「メール連絡希望」と明記せよ。

第二は「対応時間を限定する」ことだ。

「平日19時以降のみ対応可能」と書いておけば、日中の電話攻撃を防げる。

第三は「曖昧な返答をしない」ことだ。

しつこい営業電話を受けることになってしまう人の特徴として、曖昧な返答をしていることがあげられる。

「検討します」「また連絡します」は禁句だ。

「他社に決めました」「売却を中止しました」と明確に伝えれば、電話は止まる。

第四は「サイト運営会社に報告する」ことだ。

多くの不動産一括査定サイトは、サービスの品質を維持するために、連携する不動産会社に真摯な顧客対応を求める。顧客からの評価が悪い不動産会社は、一括査定サービス全体の品質を下げかねないことから、厳正に対処してくれる可能性が高い。

第五は「法的根拠を示す」ことだ。

宅地建物取引業法では、迷惑な勧誘行為の禁止や「再勧誘の禁止」などが定められており、一度きっぱり断った相手に繰り返し電話をかけることは原則認められていない。

「宅建業法違反で監督官庁に報告します」──この一言が最後の切り札だ。



  媒介契約の選び方──一般・専任・専属専任の使い分け


 査定を終え、不動産会社を選んだら、次は媒介契約だ。

媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれメリットとデメリットがある。

一般媒介は複数社と同時に契約できる。

一般媒介契約の最大のメリットは、複数の不動産仲介会社と契約を締結できることだ。他の不動産仲介会社より早く成約させなければ仲介手数料を受領できないため、不動産仲介会社が競争をすることで、早い売却が期待できる。

ただし、デメリットもある。

一般媒介契約のデメリットは、不動産仲介会社が競争をしてでも売りたいと思うような条件の物件でないと、宣伝費などのコストをかけたり、オープンルームを実施したりといった時間・手間をかける積極的な売却活動は期待ができないことだ。

専任媒介は1社のみとの契約だが、売主自身が買主を見つけることは可能だ。

専任媒介契約のメリットは、不動産会社からの報告頻度が高く設定されているため、広告やチラシなどで積極的な販売活動を行ってもらえる可能性が高いことだ。自己発見取引を行えば、仲介手数料なしで不動産売買ができる点も大きな魅力だ。

専属専任媒介は最も縛りが強い。

専属専任媒介契約は、売却物件の専属仲介会社として活動してもらう契約だ。自分で買主を見つけたとしても仲介を依頼しなければならない。売却活動の報告義務は7日に1回以上、レインズへの登録は契約から5日以内だ。



  レインズ登録の義務と確認方法──囲い込みを見破る武器


 専任・専属専任媒介を選んだ場合、不動産会社にはレインズへの登録義務がある。

専属専任媒介契約は媒介契約締結日の翌日から5日以内、専任媒介契約は7日以内の登録義務がある。

レインズに登録されると、物件情報は全国の不動産会社が見られる状態になり、高値・早期成約の可能性が大きく高まる。ただし、それは「正しく・早く」登録されていればの話だ。

登録が完了すると、売主には「登録証明書」が発行される。

この証明書に記載されたIDとパスワードで、売主自身がレインズの「売主向けサイト」にログインできる。

ここで確認すべきは「取引状況」だ。

「公開中」になっていれば問題ない。

「商談中」「一時紹介停止中」になっていたら、囲い込みの可能性を疑え。



  物件タイプ別・媒介契約の最適解


 自由度を求めるなら「一般媒介」、バランスを取りたいなら「専任媒介」、スピードと確実性を求めるなら「専属専任媒介」だ。

都心の人気物件なら一般媒介が有効だ。

複数社が競争することで、より良い条件の買主に出会える可能性が高まる。

郊外や築古物件なら専任媒介が適している。

1社に任せることで、積極的な販売活動を引き出せる。

転勤など期限がある場合は専属専任媒介だ。

報告頻度が週1回と最も高く、進捗を細かく把握できる。



  不動産会社の見極め──査定額以外で判断する5つのポイント


 査定額の高さで会社を選んではいけない。

では、何で判断するか。

第一は「担当者の経験値」だ。

担当者に過去の実績や職歴を確認し、経験値の高い担当者へ依頼しよう。

「このマンションで過去何件成約しましたか」「この1年の売却実績は何件ですか」──具体的な数字を聞け。

第二は「レスポンスの速さ」だ。

メールや電話への返信が遅い会社は、買主からの問い合わせ対応も遅い。

第三は「売却戦略の具体性」だ。

「どのポータルサイトに掲載しますか」「写真は何枚撮りますか」「オープンルームはしますか」──具体的な質問に即答できるか確認せよ。

第四は「地域への精通度」だ。

「このエリアの買主はどんな層が多いですか」「競合物件は今何件ありますか」──こうした質問への回答で、地域知識の深さがわかる。

第五は「デメリットの説明」だ。

メリットしか言わない営業マンは信用できない。

「築年数を考えると、この価格では時間がかかるかもしれません」──こうした誠実な説明ができる担当者を選べ。



  2026年市場動向を踏まえた売却戦略


 首都圏の中古マンションは、2026年6月の平均成約価格が5,208万円、成約㎡単価が82.64万円だった。前年同月比では、成約価格が0.02%、㎡単価が0.8%下落し、在庫件数は4カ月連続で増加している。

2026年以降のマンション価格推移について、短期的な見通しとして急激な下落は考えにくいものの、長期では不透明感が強いという見解が共通している。金利上昇リスクや人口減少の影響が顕在化し、エリアによる価格の二極化が一層進むと予測されている。

この市場環境で売主が取るべき戦略は明確だ。

在庫が増加し、成約価格が微減している局面では、「適正価格」での売り出しが最重要となる。

高すぎる査定額に飛びついて売り出すと、在庫の山に埋もれる。

複数社の査定を比較し、中央値を基準に戦略的な価格設定を行え。



編集部まとめ


複数社査定の本質は「相場観を養う」ことにある。

一括査定サイトは便利なツールだが、高額査定の罠には注意が必要だ。

3〜5社に依頼し、査定額の中央値を把握せよ。

突出して高い査定には「根拠」を問え。

営業電話には毅然と対応し、主導権を握れ。

媒介契約は物件特性と自分の状況に合わせて選べ。

レインズ登録を確認し、囲い込みを監視せよ。

査定額の高さではなく、担当者の質と売却戦略で会社を選べ。

これらを実践すれば、あなたは「情報弱者の売主」から「主導権を握る売主」に変わる。

マンション売却は、数千万円が動く人生最大級の取引だ。

その成否を左右するのは、最初の「査定」と「会社選び」である。

この記事の知識を武器に、後悔のない売却を実現してほしい。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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