マンション売却「諸費用」完全ガイド──仲介手数料・印紙税・登記費用・引越し費用の内訳と計算方法から、売却価格別シミュレーション・費用を抑える実践テクニックまで徹底解説
- 12 時間前
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あなたは「売却代金から引けばいい」と思っていないか
マンションを売却すれば、数千万円の現金が手に入る。
この感覚が落とし穴だ。
売却代金から、仲介手数料・印紙税・登記費用・引越し費用など、あらゆる諸費用が差し引かれる。
売却価格5,000万円でも、手元に残るのは4,700万円台ということは珍しくない。
さらに住宅ローン残債があれば、一括返済しなければ抵当権を外せない。
売却益で新居の頭金を考えていたなら、諸費用の計算ミスが致命傷になる。
本稿では、マンション売却にかかる諸費用の全体像を、費目ごとの計算方法とともに徹底解説する。
「諸費用は売却価格の5〜7%」──この法則を頭に刻め
売却にかかる諸費用は、売却価格の約5%〜7%前後となるケースが多い。
売却価格3,000万円なら150万〜210万円、5,000万円なら250万〜350万円が目安だ。
マンション売却時にかかるコストは、売却価格全体の5~10%程度だと言われている。
この数字を知っているかどうかで、売却後の資金計画は決定的に変わる。
心理学で「アンカリング効果」と呼ばれる現象がある。
最初に提示された数字が、その後の判断の基準点になる認知バイアスだ。
不動産会社から「5,000万円で売れます」と言われると、その数字が頭に残る。
しかし実際に手元に残るのは、諸費用を引いた4,700万円前後だ。
売却前に諸費用を正確に把握しておかなければ、「思ったより残らなかった」という後悔が待っている。
仲介手数料──諸費用の6〜7割を占める最大項目
マンション売却にかかる費用の中で、最も大きな割合を占めるのが不動産会社に支払う仲介手数料だ。
仲介手数料の上限は、売買価格が400万円以上の場合で売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税で計算することができる。
この計算式は「速算式」と呼ばれ、業界の実務で広く使われている。
具体的な金額を売却価格別に示す。
3,000万円での売却なら、仲介手数料は(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105万6,000円だ。
5,000万円での売却なら、(5,000万円×3%+6万円)×1.1=171万6,000円となる。
7,000万円での売却なら、(7,000万円×3%+6万円)×1.1=237万6,000円だ。
800万円を超える物件については、従来通り「物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税」が仲介手数料の上限額となる。
仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められているが、下限はない。
値引き交渉は理論上可能だが、現役営業マンの証言によれば、大手仲介会社では基本的に応じない。
仲介手数料を大幅に値引く会社は、広告費を削る、囲い込みで両手取引を狙うなど、何らかのデメリットが潜む可能性がある。
印紙税──2027年3月まで軽減措置が継続
不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものは軽減措置の対象となる。
つまり、2027年3月末までにマンションを売却する売主は、印紙税が軽減される。
軽減後の印紙税額は以下の通りだ。
マンション(3,000万円)の売買契約書なら10,000円、一戸建て住宅(4,500万円)の売買契約書も10,000円、土地(8,000万円)の売買契約書は30,000円となる。
1,000万円超〜5,000万円以下の契約では、本則2万円が軽減後1万円になる。
5,000万円超〜1億円以下の契約では、本則6万円が軽減後3万円だ。
電子契約の場合は印紙税がかからない。PDFファイルやクラウドサービス上で契約を締結する方法は、印紙税法で定める「紙の文書」に該当しないためだ。
電子契約を提案する不動産会社を選べば、印紙税をゼロにできる。
ただし、すべての不動産会社が電子契約に対応しているわけではない。
媒介契約を結ぶ前に、電子契約の可否を確認すべきだ。
登記費用──抵当権抹消の相場は2〜3万円
マンション売却時に必要な登記は、主に「抵当権抹消登記」だ。
住宅ローンを借りている場合、不動産には金融機関の抵当権が設定されている。
売却時にはこれを抹消しなければ、買主に所有権を移転できない。
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1筆につき1,000円と法律で定められている。
マンションの場合は、敷地権があるかで費用は変わる。抵当権抹消の登録免許税は、敷地権が1つであれば2,000円、2つであれば3,000円になる。
住宅ローンの完済に伴う抵当権抹消手続きを司法書士に依頼した場合の報酬相場は、10,000円~20,000円程度だ。
司法書士報酬16,500円(税込)+登録免許税で総額1.9〜2.5万円程度が標準的な例だ。
売却時の抵当権抹消は、決済日に司法書士が買主側と売主側の手続きを同時に行う。
現役営業マンの証言によれば、売却時の登記は買主が指定する司法書士が一括して行うケースがほとんどだ。
売主側で司法書士を探す必要は基本的にない。
住宅ローン一括返済手数料──金融機関で差が大きい
住宅ローン残債がある場合、売却代金で一括返済することになる。
この際、金融機関によっては一括返済手数料が発生する。
住宅ローンが残っているマンションを売却する場合、売買契約を結ぶ前にローンを一括返済する必要があるが、この際に手数料がかかる。目安の金額としては、2万円程度と考えておこう。
ただし、金融機関や金利タイプによって手数料は大きく異なる。
auじぶん銀行では、変動金利については手数料はかからないが、完済時に固定金利が適用されている場合に手数料33,000円(税込)がかかる。
三菱UFJ銀行では、一括返済はインターネット利用で10,800円、窓口で21,600円となる。
売却を決めたら、まず金融機関に一括返済手数料を確認せよ。
インターネット手続きと窓口手続きで手数料が異なるケースが多い。
引越し費用──時期と荷物量で数万〜数十万円の差
マンション売却後は、当然ながら引越しが必要だ。
この費用を見落とす売主は少なくない。
引越し費用の相場は、同一県内で単身27,000円〜、2人暮らし65,000円〜、家族80,000円〜だ。3〜4月の繁忙期は通常の1.3〜1.5倍になる。
同市内(〜15km)程度であれば通常期で6万〜8万円、繁忙期の3月4月で12万円〜16万円だ。一方で500km以上の遠距離引越しでは、通常期で15万円〜30万円、繁忙期で30万円〜60万円ほどになる。
引越しが安い時期は5月〜1月で、引越しが高い時期は2月〜4月だ。2026年も例年どおり3月後半から4月上旬は混雑すると予想されている。
売却のタイミングを繁忙期からずらすだけで、引越し費用を半額近くに抑えられる可能性がある。
住み替えで「売り先行」を選ぶ場合、仮住まいへの引越しと新居への引越しで2回分の費用が発生する点にも注意が必要だ。
売却価格別シミュレーション──3,000万円・5,000万円・7,000万円
ここで、売却価格別に諸費用の総額をシミュレーションしてみよう。
前提条件は、仲介売却・住宅ローン残債あり・家族での引越し・通常期(5〜1月)とする。
【3,000万円で売却した場合】
仲介手数料:105万6,000円(3,000万円×3%+6万円)×1.1
印紙税:1万円(軽減税率適用)
抵当権抹消登記費用:2万円(登録免許税+司法書士報酬)
住宅ローン一括返済手数料:2万円
引越し費用:15万円
諸費用合計:約126万円(売却価格の約4.2%)
【5,000万円で売却した場合】
仲介手数料:171万6,000円
印紙税:1万円
抵当権抹消登記費用:2万円
住宅ローン一括返済手数料:2万円
引越し費用:15万円
諸費用合計:約192万円(売却価格の約3.8%)
【7,000万円で売却した場合】
仲介手数料:237万6,000円
印紙税:3万円
抵当権抹消登記費用:2万円
住宅ローン一括返済手数料:2万円
引越し費用:15万円
諸費用合計:約260万円(売却価格の約3.7%)
売却価格が高くなるほど仲介手数料が増えるが、売却価格に対する諸費用の比率は下がる傾向にある。
見落としがちな「その他の費用」一覧
上記の基本項目以外にも、状況によって発生する費用がある。
ハウスクリーニング費用:3万〜10万円程度。水回りの汚れがひどい場合に検討。
住所変更登記:登記上の住所が現住所と異なる場合、不動産1筆につき1,000円の登録免許税+司法書士報酬が発生。
2026年までに、住所や氏名が変わった場合の変更登記も義務化される予定だ。義務化後に手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性がある。
測量費用:一戸建ての場合に必要なケースがあるが、マンションでは基本的に不要。
残置物撤去費用:家具や家電を処分する場合、粗大ごみ処理費や業者への依頼費用が発生。
確定申告費用:税理士に依頼する場合、5万〜15万円程度。自分で行えば無料。
譲渡所得税──利益が出た場合のみ発生する「隠れた大出費」
マンションを売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生する。
これは売却時に支払う諸費用ではなく、翌年の確定申告で納税する税金だ。
物件の所有期間によって適用される税率が異なる。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%だ。5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%となる。
ただし、マイホームを売却した場合は「3,000万円特別控除」が適用できる。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、税金はゼロになる。
首都圏の平均的なマンションであれば、購入価格より高く売れても3,000万円控除で税金がかからないケースが多い。
詳細は「マンション売却『税金』完全ガイド」を参照されたい。
費用を抑える3つの実践テクニック
諸費用を完全にゼロにすることはできないが、賢く抑える方法はある。
【テクニック1】電子契約で印紙税ゼロ
電子契約に対応した不動産会社を選べば、1〜3万円の印紙税を節約できる。
媒介契約を結ぶ前に「電子契約は可能ですか」と確認せよ。
【テクニック2】引越し時期をずらす
3〜4月の繁忙期を避けるだけで、引越し費用が半額近くになる可能性がある。
売却スケジュールを組む際、引渡し時期を5月以降に調整できないか検討すべきだ。
【テクニック3】住宅ローン一括返済はインターネットで
多くの金融機関で、インターネット経由の手続きなら手数料が安くなる、または無料になる。
窓口で手続きする前に、オンラインでの手続き方法を確認せよ。
仲介手数料の値引きは「諸刃の剣」
諸費用の大部分を占める仲介手数料。
値引き交渉したくなる気持ちは分かる。
しかし、ある大手仲介会社の営業マンはこう語る。
「手数料を値引く会社は、広告費を削るか、囲い込みで両手取引を狙うかのどちらかです」
仲介手数料には、物件調査費・広告費・人件費が含まれている。
手数料を下げれば、これらのどこかが削られる。
仲介手数料無料・割引は両手仲介等の理由があれば問題ないが、別名目での費用請求やサービス品質低下のリスクに注意が必要だ。
手数料の安さだけで不動産会社を選ぶと、売却価格が下がって結果的に損をする可能性がある。
手数料を数十万円値引いてもらっても、売却価格が100万円下がれば意味がない。
「戻ってくるお金」も忘れるな
諸費用ばかりに目が行きがちだが、売却時に戻ってくるお金もある。
固定資産税は、年の途中でマンションを売却する場合、売主が一括払いなどで納付した際は、残りの期間の分を買主から返金してもらえる。
マンション購入における火災保険も返金されるお金の1つだ。数年間分をまとめて支払った場合、保険会社に所有者が変わったことを連絡して、残りの年間分の火災保険料を返金してもらえる。
保証料も返戻される可能性がある。
保証料外枠方式(ご融資時に保証料を一括でお支払いいただいた場合)にてお借り入れされた場合、繰上返済に対する未経過分の保証料を保証会社所定の方法で算出の上、口座へ返戻される。
ただし、保証会社手数料(11,000円程度)と振込手数料が差し引かれる点には注意が必要だ。
不動産会社に「諸費用の見積もり」を依頼せよ
本稿で示した金額はあくまで目安だ。
実際の諸費用は、物件の状況・住宅ローンの残債・金融機関・引越しの条件によって異なる。
売却を依頼する不動産会社には、査定額とともに「諸費用の概算」を出してもらうべきだ。
現役営業マンの証言では、大手仲介会社は媒介契約の前に諸費用一覧を提示するのが標準だという。
もし提示がなければ、「諸費用の概算を出してほしい」と依頼すればいい。
この一言を言えるかどうかで、売却後の資金計画の精度が変わる。
編集部まとめ
マンション売却の諸費用は、売却価格の5〜7%が目安だ。
最大の費目は仲介手数料で、諸費用全体の6〜7割を占める。
印紙税は2027年3月末まで軽減措置が適用され、電子契約ならゼロにできる。
抵当権抹消費用は2〜3万円、住宅ローン一括返済手数料は金融機関によって異なる。
引越し費用は時期によって2倍近く変動するため、繁忙期を避けるべきだ。
諸費用を正確に把握した上で売却に臨めば、「想定外の出費」に慌てることはない。
売却代金から諸費用を引いた「手取り額」を事前に計算する──これが資金計画を守る鉄則だ。
執筆:マンション売却ジャーナル編集部




