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2026年夏マンション市場速報──長期金利2.8%突破・在庫4.5万件超・成約鈍化が示す「高値圏での停滞」局面と、都心vs郊外で明暗分かれる売却タイミング判断の実践フレームワーク

  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

  あなたは「高値で売れる」と思い込んでいないか


 2024年から続いた「売れば儲かる」という空気が、2026年夏、ついに変わった。

長期金利は7月9日、一時2.9%に到達した。

1996年9月以来、約30年ぶりの高水準である。

首都圏中古マンションの成約坪単価は、2020年4月以来73カ月ぶりに下落した。

在庫件数は45,804件と、3カ月連続で増加している。

この数字が示すのは、マーケットの「潮目」が変わったという事実だ。

売主であるあなたが今すぐ問うべきは、「自分の物件は本当に今の価格で売れるのか」である。



  「損失回避バイアス」が売却判断を狂わせる


 行動経済学に「損失回避バイアス」という概念がある。

人間は同じ金額でも「得る喜び」より「失う痛み」を約2倍強く感じる。

この心理が、マンション売却において最も厄介な判断ミスを引き起こす。

「1年前ならもっと高く売れたのに」という後悔が、現実離れした売り出し価格を設定させる。

ある大手仲介会社の現役営業マンはこう語る。

「売主様の多くが、2023年頃の相場を基準にして価格を決めたがる。しかし、その価格で今は売れない」

売り手の価格水準はさらに上を見ている一方で、買い手側はその価格に対して慎重さを強め、予算をシビアに見極めている。

この双方の"温度差"によって、相場から乖離した高すぎる売り出し価格の物件が市場に取り残され、在庫件数を押し上げる要因となっている。

損失回避バイアスに囚われた売主は、結果的に「売れない期間」という本当の損失を被る。



  長期金利2.9%が買い手の購買力を直撃する構造


 2026年7月9日、日本の長期金利の指標となる10年物国債の利回りが一時2.880%まで上昇した。

これは1996年秋以来、約30年ぶりの高水準である。

住宅ローン金利への影響は、スーパーの値上げに似ている。

1品50円の値上げは気づかないが、全品目が上がれば月の食費は数万円増える。


 住宅ローンも同じ構造だ。

日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.75%から1.0%程度に引き上げることを決定した。

この1.0%という政策金利の水準は、1995年以来31年ぶりの高水準である。

住宅ローンの変動金利は、2026年10月に多くの銀行が一斉に年0.25%程度引き上げる展開が最有力シナリオだ。

2026年4月の変動金利は、大手銀行が基準金利を約0.25%引き上げ、15年ぶりの高水準(平均1%超え)となった。

買い手にとって、同じ返済額で借りられる金額が確実に減っている。

5,000万円のマンションを検討していた買い手は、金利上昇によって4,500万円以下に予算を下げざるを得ない。

これが「買い控え」の正体である。


図1|長期金利と首都圏中古マンション在庫件数の推移(東日本レインズ・日本相互証券データより編集部作成)


  在庫4.5万件超は「売れ残り」の山である


 東日本レインズが6月10日に発表した2026年5月の首都圏不動産流通市場動向によると、中古マンションの在庫件数は45,804件で、前年同月比3.4%増となった。

これは3カ月連続での増加である。

市場に出回る物件数が増え続けているのに、成約件数は減っている。

中古マンションの成約件数は前年同月比3.4%減の3,709件となり、2カ月連続で減少した。

これは需給バランスが「買い手優位」にシフトしつつあることを示す。

スーパーに喩えるなら、棚に商品が溢れているのに客が減っている状態だ。

売り場は「値下げ圧力」にさらされる。

都心部では、価格改定シェアが49.1%まで上がった。

売り出し中の住戸のうち、直近3カ月で値下げされた住戸の割合を示す数字である。

つまり、都心で売り出している物件の約半数が、すでに値下げを余儀なくされている。



  成約価格19カ月ぶり下落が示す「転換点」


 成約価格は前年同月比4.6%下落の5,067万円となり、2024年10月以来19カ月ぶりに下落した。

前月比でも4.8%下落している。

成約坪単価は前年同月比3.9%下落の266.6万円となり、2020年4月以来73カ月ぶりに下落した。

6年以上続いた「上昇神話」が崩れた瞬間である。

「73カ月ぶりの㎡単価下落」「23区の成約件数2ケタ減」そして「在庫件数の3カ月連続増加」という3つの事実が、市場が「買い手優位(価格下落局面)」へ移行しつつあることを証明している。

この変化を「一時的な調整」と楽観視する売主は、数カ月後に後悔する可能性が高い。



  都心vs郊外で明暗が分かれる理由


 エリア別に見ると、価格が上がりきった「東京都区部」の成約件数は前年同月比マイナス17.9%と5カ月連続で減少している。

その一方で、千葉県(プラス19.9%)、神奈川県他(プラス14.2%)、埼玉県(プラス6.3%)、横浜・川崎市(プラス6.0%)、多摩(プラス2.2%)と、都心以外の周辺エリアでは成約件数が増加している。

都心部の価格高騰を避け、より手が届きやすい郊外エリアへ実需層が流れている明確な兆候といえる。

2026年3月の集計では東京都では、特に「出ていく人」の増加が著しく、これは非常に重要な変化である。

東京都の中古マンション価格の急騰が要因の一つと考えられ、価格上昇によって住宅取得のハードルが大幅に高まり、これまで東京都内で購入を検討していた実需層が、より価格負担の小さい埼玉県・千葉県・神奈川県へ流れている可能性がある。

この「都心離れ」は単なる一時的現象ではない。

構造的な変化と捉えるべきだ。



  「アンカリング効果」を逆手に取る価格戦略


 心理学の「アンカリング効果」は、最初に提示された数字が判断基準になる現象を指す。

不動産仲介の世界では、このアンカリングが売主を誤らせる。

一括査定サイトで「最高値」を提示した会社に飛びつく売主が後を絶たない。

しかし、その「最高値」は成約する価格ではない。

現役営業マンの証言では、「媒介契約を取るためだけの"釣り査定"は業界の常識」という。

レインズの3月度データによると、在庫の㎡単価は110.08万円であるのに対し、成約㎡単価は86.34万円だ。

在庫㎡単価と成約㎡単価には平均値ベースで約27%の差がある。

売り出し価格と実際に売れる価格には、これだけの乖離が存在する。

賢い売主は「最高査定額」ではなく「成約相場」を基準にする。

アンカリング効果を逆手に取り、相場より若干高めで出して「値引き交渉の余地」を残す戦略が有効だ。



  売却タイミング判断の実践フレームワーク


 売却タイミングの判断には、以下の3つの軸で検討すべきだ。

第一に「金利動向」である。

主要なシンクタンクが発表している金利動向予測のレポートによると、2026年も物価上昇と賃上げ傾向を背景に政策金利は上がると予測されている。

2026年中には政策金利が1.0%から1.5%に到達するとの見方もある。

金利が上がれば買い手の購買力は下がる。

待てば待つほど、売れる価格は下がる可能性が高い。

第二に「自分の物件の市場ポジション」である。

東京23区は1,452件(前年比-17.9%)と大きく減少した一方で、東京23区以外では、すべてのエリアで成約件数が前年を上回っている。

都心の高額物件は苦戦し、郊外の手頃な物件は動いている。

自分の物件がどちらに属するかで、戦略は180度変わる。

第三に「売却期限の有無」である。

住み替え、相続、離婚など期限がある売却は、市況に関係なく動くべきだ。

「もう少し待てば上がるかも」という期待は、損失回避バイアスの典型的な罠である。



  都心マンション所有者がすべき3つの行動


 東京23区のマンションを所有し、売却を検討している人は、今すぐ3つの行動を取るべきだ。

第一に「成約相場の把握」である。

東日本レインズのマーケットウォッチは、エリア別・築年帯別の成約データを公開している。

売り出し価格ではなく、実際に売れた価格を確認せよ。

第二に「在庫状況の確認」である。

同じマンション、同じ間取りの競合物件が何件出ているかを調べる。

競合が多ければ、価格競争は避けられない。

第三に「複数社への査定依頼」である。

ただし、最高値の会社を選ぶのではなく、「なぜその価格なのか」の根拠を比較せよ。

成約事例に基づいた説明ができる会社だけが、信頼に値する。



  郊外マンション所有者の戦略的判断


 埼玉・千葉・神奈川の郊外マンションは、都心とは異なる状況にある。

埼玉県、千葉県、神奈川県では転入者の数は増えているにもかかわらず、東京は転入者が減少している一方で、転出者が増加している。

転入超過率は埼玉県、千葉県、神奈川県いずれもプラスであり、埼玉県に関しては、前年同月比で約30%増となっている。

都心から流れてくる実需層を取り込めるポジションにある。

千葉県(プラス19.9%)、神奈川県他(プラス14.2%)、埼玉県(プラス6.3%)と、成約件数は堅調に推移している。

ただし、郊外物件も「駅距離」「築年数」「管理状態」で二極化が進む。

駅徒歩10分以上、築30年超、管理費滞納ありの物件は、価格下落リスクが高い。

売却を迷っているなら、今が最後のチャンスかもしれない。



  「高値圏での停滞」が意味すること


 2026年のマンション市場は「価格の高止まり」と「成約の鈍化」が同時進行する"ねじれた市況"が続いている。

「高値圏での停滞」がキーワードであり、都心は高すぎて動かず、郊外は値上がりで割安感が薄れ、全体として売れ行きが鈍化する局面だ。

この「停滞」は、売主にとって最も危険な局面である。

価格が急落すれば判断しやすい。

しかし、「下がるかもしれないし、上がるかもしれない」という曖昧さが、決断を先延ばしにさせる。

そして気づいたときには、「あの時売っておけば」という後悔だけが残る。



編集部まとめ


2026年夏のマンション市場は、明確な転換点を迎えた。

長期金利は約30年ぶりの高水準に達し、変動金利も1%を突破した。

首都圏の在庫は4.5万件を超え、成約価格は19カ月ぶりに下落した。

東京23区の成約件数は前年比マイナス17.9%と急減している。

この市況で「待てば上がる」と考えるのは、損失回避バイアスに囚われた判断だ。

売却を検討している売主がすべきは、成約相場の正確な把握と、自分の物件の市場ポジションの冷静な分析である。

都心の高額物件は苦戦し、郊外の手頃な物件は動いている。

この二極化構造を理解した上で、売却タイミングを判断すべきだ。

市況の転換点を見極め、適切な価格で売り出すこと。

これが「高値圏での停滞」局面で損をしない、唯一の方法である。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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