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2026年マンション市場「金利上昇×価格高止まり」局面における売却戦略──日銀利上げ後の需給バランス変化と、売り出し価格・成約価格の乖離拡大が示す全国市場の構造転換を徹底分析する

  • 6月3日
  • 読了時間: 9分

  あなたはまだ「マンション相場は上がり続ける」と思っていないか


 2026年、マンション市場は歴史的な転換点を迎えている。

日銀は2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げ、これは1995年以来約30年ぶりの高水準となった。

2026年4月27・28日の金融政策決定会合では政策金利0.75%の据え置きが決定されたが、3名の政策委員が反対票を投じ、市場・エコノミストの大半は6月会合での0.25%利上げをメインシナリオに据え始めている。

国土交通省の不動産価格指数によると、2025年11月のマンション価格指数は223.7と、2010年平均の2倍超の高水準を維持している。

価格は高止まり、金利は上昇。この「ねじれ」が売主に何をもたらすのか。

答えは明確だ。

「売れるけれど、思った価格では売れない」という新しい市場構造の出現である。



  「アンカリング効果」が売主を苦しめる


 心理学に「アンカリング効果」という法則がある。

最初に提示された数字が、その後の判断の「錨(いかり)」となり、思考を縛る現象だ。

マンション売却において、この錨は「購入時の価格」である。

「5,000万円で買ったのだから、少なくとも5,500万円では売りたい」。

この思考回路が、2026年の売主を苦しめている。

2026年3月の首都圏中古マンション市場では、成約価格が5,521万円であるのに対し、新規登録価格は6,467万円、在庫価格は6,354万円だった。

売り出し価格と成約価格の乖離は約17%に達する。

2026年2月時点では、中古マンションの売出価格と成約価格の乖離が3割近くまで拡大している。

現役営業マンの証言では、「お客様の多くは、近所で売れた高値事例を参考にされる。しかしその事例は半年前のもの。市場は既に変わっている」という。

アンカリング効果に囚われた売主は、市場が発するシグナルを見落とす。



  金利上昇が「買い手の購買力」を直撃する構造


 住宅ローンを組む買い手にとって、金利上昇は「買える価格」の直接的な引き下げを意味する。

2026年4月時点で多くの金融機関の変動金利は1%を超えている。

2026年春の変動金利は0.9~1.1%台が中心となっており、超低金利時代とは大きく様変わりしている。

これを具体的な数字で可視化しよう。

変動金利0.5%で5,000万円を35年返済すると、月々の返済額は約12.9万円。

同じ条件で金利が1.0%になると、月々約14.1万円。

月1.2万円、年間14.4万円の負担増だ。

買い手は「同じ返済額」を基準に物件を探す。

金利が0.5%上がれば、買い手が許容できる借入額は約8%下がる計算となる。

金利上昇が本格化すれば買い手の購入力が低下し、売却価格にも影響が出る可能性がある。

ある大手仲介会社では、「予算6,000万円の顧客が、金利上昇後は5,500万円台に下方修正するケースが増えている」と報告されている。



  「価格は上がっているのに成約件数は減少」という矛盾の正体


 2026年4月度の首都圏中古マンション市場は、㎡単価が72ヶ月連続で上昇しバブル期超えの水準が常態化している。一方で、成約件数は18ヶ月ぶりに減少に転じた。

この一見矛盾したデータが、市場の構造転換を如実に示している。

価格が上がっているのは、「売れた物件」の話だ。

売れなかった物件は統計に現れない。

在庫㎡単価は106.60万円/㎡と高騰している一方で、成約㎡単価は85.61万円/㎡と、その差は約21万円/㎡まで拡大している。

これはスーパーの特売に例えると分かりやすい。

店頭に並ぶ商品の値札は高い。しかし実際にレジを通る商品は、値引きシールが貼られたものばかりだ。

「定価」と「実売価格」の乖離が、不動産市場でも起きている。


図1|首都圏中古マンション 成約㎡単価と在庫㎡単価の推移(東日本不動産流通機構データより編集部作成)


  「都心と郊外」の二極化が加速する理由


 東京都の中古マンション市場は、2026年4月も価格の上昇基調を維持しながら、エリアごとの需給の温度差が色濃く出た月となった。都区部では全エリアで成約件数が前年割れとなる一方、多摩地区は唯一プラスに。

都区部では高所得層や富裕層が中心であるため、価格上昇は大きな影響を受けにくい側面がある。しかし郊外では一般的な会社員層が多く、価格上昇は購買力の低下に直結する。

2026年3月の転入超過率は埼玉県、千葉県、神奈川県いずれもプラスであり、埼玉県に関しては前年同月比で約30%増となっている。これはコロナ禍以降の観測で初めてだ。

都心部は富裕層・投資家・法人需要に支えられ、高値を維持する。

郊外は実需層の購買力限界に直面し、価格調整が進む。

2025年は首都圏でいえば明確に「東京23区」の一強で、そのほか多くのエリアが価格調整局面に入りつつある。

あなたの物件が「どちらの市場」に属するかで、売却戦略は180度変わる。



  新築供給の「歴史的縮小」が中古市場に与える影響


 2025年の新築マンション供給戸数は2万1,000戸台となり、1973年以降最少を記録した。

2025年度(2025年4月〜2026年3月)の首都圏新築分譲マンション発売は2万1,659戸で、前期比2.6%減。1973年度以降の最少を更新した。平均価格は9,383万円、㎡単価は141.9万円で、いずれも最高値の更新が続いている。

不動産経済研究所の予測では、2026年は前年比2.2%増の2.3万戸となる見通しだ。

1990年代後半から2000年代前半には年間8万戸前後が供給されていた。

今やその4分の1以下の水準である。

新築の供給縮小は、中古市場への需要シフトを加速させる。

新築住宅は、一般的な収入の世帯には手が届かない水準まで価格が高騰し、供給数は減少傾向にある。2026年はさらに中古住宅シフトが加速することになるだろう。

新築を諦めた層が中古市場に流入する。これは売主にとって追い風だ。

ただし、その需要を取り込めるのは「適正価格で売り出した物件」に限られる。



  「在庫増加」が意味する売却競争の激化


 注目すべきは、これまで減少傾向にあった在庫件数が44,728件と、前年同月比で+1.8%増加に転じた点だ。在庫が増加するのは8ヶ月ぶりのことであり、市場に「売り物件」が少しずつ積み上がり始めていることを示唆している。

2026年2月以降、港区・中央区・江東区(湾岸エリア)の一部では、中古マンションの売出在庫が前年比で積み上がり始めている。

都心3区における中古マンションの在庫は2024年7月を底に増加に転じている。在庫の内訳を価格帯別にみると、特に1億円以上の物件が増えており、高値の物件が売れ残っている。

在庫が増えるということは、買い手の選択肢が増えるということだ。

買い手にとっては「急いで決める必要がない」状況が生まれる。

現役営業マンの証言では、「以前は内覧1回で決まる物件も多かったが、今は3回、4回と見比べるお客様が増えた」という。

売却競争が激化すれば、「早く売りたい」売主は価格を下げざるを得ない。

「売り急がない」という選択肢がある売主と、「期限がある」売主では、交渉力に大きな差が生まれる。



  「損失回避バイアス」を克服せよ


 心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した「損失回避バイアス」は、人間が利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛を2倍以上強く感じることを示している。

マンション売却において、このバイアスは致命的に作用する。

「あと100万円高く売れるかもしれない」という期待より、「100万円下げて売る」という行為への抵抗が勝る。

結果、売り出し価格を高めに設定し、長期間売れ残る。

価格は高いものの、買い手が許容できる価格と売り手の希望価格に差が出やすい局面だ。

ある大手仲介会社では、「売り出し後3ヶ月で成約しない物件は、最終的に当初想定より5%以上低い価格で成約するケースが8割」というデータがあるという。

損失回避バイアスに囚われた「高値挑戦」が、結果的により大きな損失を招くパラドックスだ。



  今日から使える「3つの判断軸」


 売主が市場の構造転換に対応するために、今日から実践すべき判断軸を示す。

第一に、「成約価格ベース」で相場を把握すること。

不動産ポータルサイトで見える価格は「売り出し価格」だ。レインズの成約事例データを仲介会社に請求し、実際に「売れた価格」を確認せよ。

「マンション価格は上がっている」のは事実だが、それは成約ベースの話だ。売出し価格はすでに一部で調整が始まっている。

第二に、「金利シナリオ」を織り込むこと。

野村證券は、日銀が2026年6月、同年12月、2027年6月に0.25%ポイントずつ利上げすると見込んでいる。この場合、ターミナルレートは1.50%となる。

金利が上がれば買い手の購買力は下がる。「今売る」のと「半年後に売る」のでは、買い手の懐事情が異なることを認識せよ。

第三に、「時間軸」を戦略的に設計すること。

売却活動には最低でも3〜6ヶ月を見込め。逆算すれば、「いつまでに売りたいか」から「いつ売り出すか」が決まる。

住み替え・相続・離婚など、売却に期限がある場合は特に重要だ。



  仲介会社に確認すべき「3つの質問」


 査定を受ける際、以下の質問を仲介会社にぶつけよ。

「この査定価格で、どのくらいの期間で成約を見込んでいますか?」

曖昧な回答しか返ってこない場合、その査定価格は「媒介契約を取るための高値提示」の可能性がある。

「直近3ヶ月の、同じマンション内または近隣の成約事例を見せてください」

成約事例を提示できない、または古いデータしか出せない会社は、市場実態を把握していない。

「この価格で売れなかった場合、いつ、どの程度の値下げを提案しますか?」

この質問に明確なシナリオを示せる会社は、出口戦略を持っている証拠だ。



  「売り時」を見極める本質的な視点


 「今が売り時か」という問いへの答えは、あなたの状況によって異なる。

ただし、市場の構造転換が進む中で確実に言えることがある。

2025年のマンション市場は、金利上昇という購入者にとっての逆風をものともせず、価格という面においては上昇トレンドが継続した。その一方で、中古マンション成約件数の大幅増というこれまでにない市場変化の兆候も見られた。

「価格が高いうちに売りたい」という欲求と、「もっと上がるかもしれない」という期待の間で揺れる売主は多い。

しかし、金利上昇局面では「待つ」ことのリスクが確実に高まる。

買い手の購買力は下がり、在庫は増え、競争は激化する。

「売れる価格」と「売りたい価格」の差が広がり続ける市場で、どちらを選ぶか。

答えは、あなたが握っている。



編集部まとめ


2026年のマンション市場は、「金利上昇」と「価格高止まり」が同時進行する構造転換期にある。

日銀の政策金利は0.75%に達し、さらなる利上げが見込まれる。

売り出し価格と成約価格の乖離は拡大し、在庫は増加傾向に転じた。

都心と郊外の二極化は加速し、エリアによって市場環境は大きく異なる。

この環境下で売主が取るべき戦略は明確だ。

「成約価格ベース」で相場を把握し、「金利シナリオ」を織り込み、「時間軸」を戦略的に設計すること。

アンカリング効果や損失回避バイアスに囚われず、市場が発するシグナルを冷静に読み取ること。

これを知っていれば、「売れない地獄」に陥ることはない。

あなたのマンション売却を成功に導く第一歩は、市場の構造転換を正しく認識することから始まる。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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