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マンション売却「媒介契約」完全ガイド──一般・専任・専属専任の違いを正しく理解し、物件特性・売却期限・価格戦略に最適な契約形態を選ぶための実践的判断フレームワーク

  • 6月30日
  • 読了時間: 14分

  あなたは「媒介契約」を正しく理解しているか


 マンション売却を決意し、不動産会社に査定を依頼した。

担当者から「専任媒介契約で進めましょう」と提案された。

あなたは何も考えずにサインしようとしていないか。

媒介契約は、売却活動の成否を左右する「最初の意思決定」である。

契約形態の選択を誤れば、本来売れるはずだった価格より数百万円安く手放すことになる。

「会社に任せておけば大丈夫」という姿勢こそ、売主が損をする最大の原因だ。



  媒介契約とは「不動産会社との約束事」である


 媒介契約とは、不動産の売却や賃貸の際に取引を仲介する不動産会社と結ぶ契約のことである。

不動産会社は、売主や貸主と媒介契約を結ぶことで、正当に取引の仲立ち業務を行えるようになる。

媒介契約を結ぶ際には媒介契約書を作成し、多くの不動産会社では国土交通省が定める標準媒介契約約款をもとにして媒介契約書を作成している。

要するに、「あなたの物件を売る活動を、この条件でお任せします」という約束を文書化したものだ。

この約束の内容によって、不動産会社の動き方が180度変わる。



  3種類の媒介契約──最大の違いは「1社か複数社か」


 媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類がある。

最も大きな違いは、一般媒介契約は複数の不動産会社と媒介契約を結べるが、専任媒介契約と専属専任媒介契約は1社としか契約できない点である。

一般媒介契約→専任媒介契約→専属専任媒介契約の順に、売主への制限が厳しくなる。

これをスーパーの買い物に例えてみよう。

一般媒介契約は、複数のスーパーに「良い客がいたら紹介してほしい」と声をかける状態だ。

専任媒介契約は、1つのスーパーに「独占的に売り場を任せるから、本気で売ってくれ」と頼む状態である。

専属専任媒介契約は、さらに「自分で客を見つけてもそのスーパーを通す」という条件がつく。



  一般媒介契約の特徴と「隠れた落とし穴」


 一般媒介契約は、複数の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことが可能で、自分で買主を探すこともできる。

不動産会社からの販売報告の義務、指定流通機構(レインズ)への登録義務がない。

一見、売主にとって自由度が高く見える。

しかし、ここに落とし穴がある。

インターネットに公開してもいい場合の一般媒介は、SUUMOやアットホームに同じ物件が連続して出てくることになる。

買う方からすると「なぜ同じ物件がいくつも載っているんだろう?早く売却したくて焦っているのかな」とマイナスイメージを受けることもある。

複数社に依頼することで「他社に先を越されるかもしれない」という心理が働き、不動産会社は本気で販売活動をしなくなる。

これは「社会的証明の原理」の逆効果である。

人は「みんなが欲しがるもの」を欲しがるが、同時に「売れ残り」を避ける心理も強い。



  専任媒介契約が「最も多く選ばれる」理由


 専任媒介契約は、不動産売却時に不動産会社と結ぶ媒介契約として最も多く選ばれている形式である。

専任媒介契約は、不動産会社1社のみと契約を結ぶ専任型であるものの、自己発見取引が可能なタイプの契約であり、3種類の媒介契約のなかで最も活用されている。

売却経験者1,002人への調査では、65%の売主が媒介契約を1社に絞っているという結果が出ている。

専任媒介契約は、契約を締結した日から7日以内に指定流通機構(レインズ)に登録すること、売主へ2週間に1回以上の販売状況報告が義務付けられている。

不動産会社にとって、専任媒介契約は「成約すれば確実に仲介手数料を得られる」状態を意味する。

専任媒介契約の場合、一社のみで売却活動を行うため売却が成立すれば不動産会社は必ず仲介手数料を得ることができ、売却活動を積極的に行ってもらいやすい契約である。

これは行動経済学でいう「コミットメントと一貫性の法則」が働く典型例だ。

1社に任せることで、不動産会社は「この物件を売らなければ」という強いコミットメントを持つ。



  専属専任媒介契約──最も制限が厳しい契約形態


 専属専任媒介契約は、仲介する不動産会社を1社に限定するとともに、売主自身が買主を見つけた場合でも仲介会社を通して売買しなければならないという制約が課された契約である。

不動産会社は、契約を締結した日から5日以内に指定流通機構(レインズ)に登録すること、売主へ1週間に1回以上の販売状況報告が義務付けられている。

売主への報告義務が最も重く、レインズ登録期限も最も短い。

専任媒介契約と専属専任媒介契約の主な違いは、売主への報告義務の頻度、そして自己発見取引の可否である。

報告頻度が高いことは不動産業者にとっては業務の負担であり、専属専任媒介契約は自己発見取引ができないことから売主にとっても制約が厳しく、専属専任媒介契約は専任媒介契約ほど利用されていない。


図1|3種類の媒介契約の主要項目比較(宅地建物取引業法より編集部作成)


  なぜ不動産会社は「専任媒介」を強く勧めるのか


 全社で言うと、8対2くらいで専任を選ぶ方が多いという感覚である。

都心は一般で出す人が少し多くなるので7対3くらい、逆に郊外の方やネットで調べ物をする習慣がない高齢者の方は、地元の会社に行ってそのまま専任にする方が増える。

現役営業マンの証言では、「専任を取れるかどうかが営業成績に直結する」と語る。

一般媒介では、いくら販売活動に力を入れても他社に成約を持っていかれれば報酬はゼロだ。

専任媒介なら、たとえ他社が買主を連れてきても片方の仲介手数料は確実に得られる。

不動産会社が専任媒介を勧めるのは、売主のためだけではなく、自社のビジネスモデルの都合でもある。



  「囲い込み」という闇──2025年法改正の衝撃

 専任媒介契約・専属専任媒介契約には大きなリスクがある。

「囲い込み」だ。

囲い込みとは、売主から売却依頼を受けた不動産会社が、売主・買主双方から仲介手数料を得る目的(両手仲介)で、自社で買主を手当てするまでその情報をオープンにしない行為のことである。

本来、専任媒介契約や専属専任媒介契約を交わしたら、国土交通省が提供するレインズに登録する必要がある。

しかし問い合わせに対し、「ほかに申し込みがあった」「売主の都合で今は売却活動をストップしている」と、不動産会社が事実と異なることを言うケースがある。

国土交通省は、2024年6月に宅建業法施行細則を改正し、囲い込み行為に関連する物件情報の虚偽登録などが確認された場合は、情報の是正指示を出し、悪質なケースや繰り返し行っている場合は、業務停止命令や罰金、宅建業の免許取り消し処分も行えることとした。2025年1月1日から適用が開始された。

2025年の法改正では、レインズのステータス管理機能を通じて「取引の申込み受付に関する状況等の登録内容」が事実と異なっていた場合、宅地建物取引業法第65条第1項に基づく指示処分の対象となることが明記された。



  囲い込みを見抜く「7つのサイン」


 売主は、以下のサインに注意すべきである。

専任媒介なら2週間に1回、専属専任なら1週間に1回、業者は売主に販売活動の報告をしなければならない。

「問い合わせ:3件、内見:1件」みたいな数字だけで、どこからどんな反響があったか具体的に書かれていない報告は要注意である。

売り出して1ヶ月も経たないうちに「相場より高いみたいなので値下げしましょう」と言ってくる業者も警戒すべきだ。

本来なら市場の反応を見て3ヶ月くらいかけて判断するところを、やたら早く値下げを促してくるのは、社内の買主に「お得な価格」で売りたいサインかもしれない。

営業報告がない、もしくは自社の顧客のみを紹介し、他社からの反響がないようであれば、囲い込みをされている可能性がある。

レインズに登録できる取引状況には「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つの項目がある。

売却活動を継続していれば、本来は公開中になっている。



  売主ができる「囲い込み対策」5つの自衛策


 専任で契約するなら、レインズの登録証明書は必ず受け取るべきである。

登録証明書には売主専用のIDとパスワードが書かれていて、これを使えば自分の物件がレインズ上でどう表示されているかを24時間チェックできる。

「公開中」になっていればOKだが、「書面による購入申込みあり」などになっていたら、その業者に詳細を確認すべきである。

販売活動報告書は「具体的な数字」で求めるべきだ。

「問い合わせ:◆件」だけでなく、「ポータルサイトからの反響◆件、他社からの問い合わせ◆件、内見実施◆件、内見後の感想:△△」というレベルで報告を求めよう。

具体性を求められて困る業者は、活動していないか、活動を隠している業者である。



  物件特性による媒介契約の「最適解」


 すべての物件に同じ契約形態が適しているわけではない。

複数社に依頼することで、情報の透明性はある。また、ある程度複数の仲介会社を競い合わせることができるので、短期決戦で進めたい場合は上手くいく事例もある。

ただし、それはすぐ売却できるような需要が高い物件の場合だと思っていただいた方がいい。

駅近・築浅・人気エリアの物件は、一般媒介契約でも引き合いが強い。

築浅の家を売った人は一般媒介を選ぶ割合が多いという特徴があり、築3年未満の家を売却した人は86.5%が一般媒介を選んでいる。

郊外では専任媒介契約が選ばれている割合が多く、都市部では一般媒介契約が選ばれている割合が多い。

郊外の物件や築年数が経過した物件は、専任媒介契約で「本気の販売活動」を引き出す方が得策だ。



  売却期限による媒介契約の選び方


 売却に期限がある場合、契約形態の選択は決定的に重要になる。

「住み替えの予定が決まっているから、とにかく早く確実に売りたい」という場合は、1社が集中的に販売活動を行う専属専任媒介契約がスピード面で有利である。

成約率は、専属専任媒介契約が23.94%と最も高い。

専属専任媒介契約と専任媒介契約の成約率の差は1%程度のため、どちらの媒介契約を選んだとしても、十分に成約に繋がる。

「時間はかかってもいいから、少しでも高く売りたい」と考えるなら、複数の会社が競い合うことで高値を目指せる一般媒介契約が有力な選択肢になる。

早く売れる傾向があったのは専任媒介だが、一般媒介は多少時間はかかるものの、最終的には希望価格で購入する買主が現れたということもある。



  価格戦略と媒介契約の「最適な組み合わせ」


 相場より高めの価格設定で売り出す「チャレンジ価格戦略」を取る場合、専任媒介契約が適している。

専任媒介は、売却を任されているのは自分の会社のみという安心感があるため、広告量を最大化しやすい。

担当者との信頼関係も築きやすく、戦略的に売却価格を調整・提案してもらえる点も大きなアドバンテージになる。

相場価格で確実に売り切りたい場合は、一般媒介契約で複数社の顧客網を活用する戦略が有効だ。

ただし、一般媒介契約では各社とも「最後に売り切る努力」をしなくなるリスクがある。

これは「責任の分散」という心理現象である。

複数の会社が関わると、誰も「自分がやらなければ」と思わなくなる。



  契約期間と更新の「隠れたルール」


 媒介契約には期間の定めがある。

専任媒介契約の有効期限は3ヶ月と定められている。

重要なのは、更新は自動ではないという点である。契約期間が満了すると原則として契約は終了し、更新する場合は売主の申し出が必要だ。

「3ヶ月で売れなかったら不動産会社を変更する」という選択肢もあることを覚えておくべきである。

3ヶ月という期間は、売主にとって「不動産会社を評価する期間」でもある。

販売活動の報告内容、内覧の件数、価格交渉の提案などを総合的に判断し、継続するか変更するかを決める。



  仲介手数料は「契約形態で変わらない」という事実


 どの媒介契約を選んでも仲介手数料の上限額は同じである。

仲介手数料は成功報酬なので、仲介業者と媒介契約を締結しただけでは支払いが生じることはない。売買契約が成立したときに仲介手数料の支払いが発生する。

一般的には「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限である。

契約形態によって手数料率が変わるわけではない。

ただし、専任媒介契約を締結すると、特典として仲介手数料の割引や付帯サービスを提供する会社もある。

専任媒介契約の特典として建物の設備保証を1~2年付帯している会社がある。

交渉の余地があるのは、契約形態ではなく、不動産会社との関係性である。



  「一般専任」という裏技的選択肢


 現役営業マンの証言によれば、最近は「一般専任」という形を取る売主もいるという。

一般で契約しているが、一社にしか出さない。実質専任になるが、「いつでも外に出せるよ」と仲介担当者にけん制する方法である。

報告の義務はなくなるが、そこもちゃんとやってくれるか見極めることができる。

これは「交渉力のある売主」が使うテクニックだ。

不動産会社に対して「あなたの動きを見ている」というメッセージを送ることで、囲い込みを抑止できる。

ただし、レインズへの登録義務がなくなるため、自分で登録状況を確認する必要がある。



  契約前に必ず確認すべき「5つの質問」


 媒介契約を締結する前に、不動産会社の担当者に以下の質問をすべきである。

第一に、「レインズに何日以内に登録しますか?」と聞く。

法定期限より早く登録すると約束する会社は、囲い込みの意図が低い。

第二に、「他社から内覧希望があった場合、どう対応しますか?」と聞く。

「積極的に受け入れる」と明言しない会社は避けるべきだ。

第三に、「販売活動報告書はどのような形式ですか?」と聞く。

具体的な数字やフィードバックを含む報告書のサンプルを見せてもらう。

第四に、「御社の両手仲介率はどのくらいですか?」と聞く。

両手仲介率が極端に高い会社は、囲い込みの傾向がある可能性がある。

第五に、「売れない場合、価格見直しのタイミングはいつですか?」と聞く。

1ヶ月以内の値下げ提案を前提にしている会社は要注意だ。



  契約書の「ここだけは見逃すな」ポイント


 媒介契約書には、標準約款に基づいた条項が記載されている。

媒介契約書には、契約の種類・目的物件の表示・媒介価額・有効期間・報酬額・レインズ登録義務・売主の義務・特別依頼費用の8項目が記載される。

特に仲介手数料の金額・支払い時期と、契約期間・更新条件は必ず確認すべきポイントである。

「特約」の欄に、標準約款にない条件が書かれていないかも確認する。

売主に不利な特約が入っていれば、削除を求めるか、その会社との契約を見送るべきだ。



  2026年の市場環境と媒介契約の選び方


 2025年における首都圏中古マンションの成約件数は49,114件(前年比31.9%増)で、3年連続で前年を上回っている。

成約物件の1㎡当たり単価は首都圏平均で82.98万円(前年比7.9%上昇)で、13年連続の上昇となっている。

しかし、在庫は増加傾向にある。

市場に物件が溢れている状況では、「いかに目立つか」「いかに適切な価格で出すか」が重要になる。

在庫増加は、買主にとって選択肢が増えることを意味する。同じエリア・同じ条件の物件が複数存在すれば、買主は比較検討に時間をかけられるようになり、売主側の交渉力は相対的に弱まる。

こうした市場環境では、媒介契約の選び方も従来とは異なる判断軸が求められる。在庫が少ない時期であれば「専任媒介で1社に集中させ、広告予算を最大化する」という戦略が機能しやすかった。しかし在庫が増えた今、複数のポータルサイトへの露出を確保し、できるだけ多くの買主の目に触れる機会を作ることの重要性が増している。

1㎡当たり単価が13年連続で上昇している一方、成約件数も増加しているという事実は、「適正価格で出せば売れる市場」であることを示している。逆に言えば、相場を見誤った価格設定や、囲い込みによって露出機会を狭められた物件は、この活況の恩恵を受けられないまま長期化するリスクがある。


 2026年に売却を検討するなら、媒介契約を選ぶ前に、まず自分の物件がどの市場ポジションにあるかを把握することが出発点になる。駅近・築浅で需要が厚いエリアなら一般媒介で複数社の力を借りる選択肢が有効であり、郊外や築年数が経過した物件であれば専任媒介で1社に本気の販売活動をしてもらう方が結果につながりやすい。

市場が活況だからこそ、媒介契約という「最初の意思決定」の重要性は、むしろ増していると言える。



編集部まとめ


媒介契約は、マンション売却における「最初にして最大の意思決定」だ。

一般媒介・専任媒介・専属専任媒介。3つの契約形態には、それぞれ明確な特徴とリスクがある。一般媒介は自由度が高い反面、不動産会社の販売活動が分散しやすい。専任媒介は最も多く選ばれている一方、囲い込みのリスクと常に隣り合わせだ。専属専任媒介は報告義務が手厚く、スピード重視の売却に向くが、自己発見取引ができないという制約を伴う。


重要なのは、「不動産会社に勧められたから」という理由だけで契約形態を決めないことだ。物件の特性、売却までの期限、目指す価格戦略。この3つを整理した上で、自分に合った契約形態を選ぶ必要がある。

専任媒介を選ぶ場合は、囲い込みへの警戒を怠ってはならない。レインズの登録証明書を必ず受け取り、自分のIDとパスワードで登録状況を確認する。販売活動報告書には具体的な数字を求める。契約前の「5つの質問」で、不動産会社の姿勢を見極める。

2025年の法改正により、囲い込みに対する監視は強化された。しかし制度が整っても、最終的に自分の利益を守るのは、売主自身の知識と行動だ。

媒介契約書にサインする前に、一度立ち止まって考えてほしい。この契約は、本当に自分の物件と状況に合っているか。その問いに自信を持って答えられたとき、初めて売却活動のスタートラインに立てる。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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