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2025年下半期マンション市場展望──日銀追加利上げ・住宅ローン変動金利上昇・実需層の購買力低下が引き起こす需給バランスの構造変化と、売り手が取るべき戦略的ポジショニング

  • 4月22日
  • 読了時間: 10分

  あなたはまだ「金利が上がっても大丈夫」と思っていないか


 2025年前半、日銀は政策金利を0.5%まで引き上げた。

この数字を聞いて「まだ低いから大丈夫」と感じた売主は多いだろう。

だが、その認識は致命的に甘い。

変動金利型住宅ローンの基準金利は、すでに大手銀行で引き上げが始まっている。

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは2025年4月以降、短期プライムレートの引き上げに連動して変動金利を見直した。

この動きは、マンション市場の需給構造を根本から変える引き金となる。


 あなたが今、売却を検討しているなら、下半期の市場がどう動くかを理解しなければならない。

そして、その理解に基づいて戦略的なポジションを取らなければならない。



  金利上昇が購買力を直撃するメカニズム


 住宅ローンの変動金利が0.5%上がると、借入可能額は約8%減少する。

これは住宅金融支援機構のシミュレーションが示す数字である。

年収600万円の会社員が借りられる金額は、金利0.5%の時代に約5,500万円だった。

金利が1.0%になれば、それが約5,000万円に減る。

500万円の差は、都心のファミリーマンションでいえば「買える物件」と「買えない物件」を分ける決定的なラインとなる。

行動経済学でいう「アンカリング効果」が、ここで売主に不利に働く。

買主は「昨年なら5,500万円まで出せた」という基準点を持っている。

だが実際の購買力は5,000万円に下がっている。

この心理的アンカーと現実の乖離が、価格交渉を難航させる構造を生む。



  2025年下半期の金利シナリオを整理する


 日銀の植田総裁は、2025年3月の金融政策決定会合後の記者会見で「経済・物価の見通しが実現すれば、引き続き利上げを行う」と明言した。

市場参加者の間では、年内にあと1回の追加利上げがコンセンサスとなっている。

政策金利が0.75%に達すれば、変動金利は1.2%〜1.5%の水準に到達する可能性が高い。

この水準は、2008年のリーマンショック以前の金利環境に近づくことを意味する。

住宅ローン市場では、変動金利のシェアが約7割を占める。

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査」によれば、2024年4月〜9月の新規借入者のうち76.9%が変動金利型を選択している。

つまり、金利上昇の影響を受ける購入層は市場の大多数を占めるのである。



  実需層の購買力低下が価格に与える圧力


 ここで重要なのは、購買力の低下が「すべての価格帯」に均等に影響するわけではないという点である。

富裕層が購入する1億円超の物件は、キャッシュ購入や低レバレッジ購入が多いため、金利感応度が低い。

一方、4,000万円〜7,000万円のボリュームゾーンは、住宅ローンへの依存度が極めて高い。

この価格帯こそが、金利上昇の直撃を受ける。


 ある大手仲介会社の営業責任者は、筆者にこう語った。

「2025年に入ってから、5,000万円〜6,000万円台の物件で成約価格が査定より5%以上下がるケースが増えている」

「買主の事前審査額が下がっているのに、売主の期待価格は昨年のままだから、交渉が長期化している」

この証言が示すのは、売主と買主の間に「価格認識のギャップ」が生じているという現実である。


図1|住宅ローン金利と借入可能額の関係(住宅金融支援機構シミュレーションより編集部作成)
図1|住宅ローン金利と借入可能額の関係(住宅金融支援機構シミュレーションより編集部作成)


  供給サイドで起きている変化


 需要サイドだけでなく、供給サイドにも変化が起きている。

不動産経済研究所の発表によれば、2025年1月〜4月の首都圏新築マンション供給戸数は前年同期比で12%減少した。

デベロッパーは土地取得を抑制し、新規プロジェクトの着工を先送りしている。

この背景には、建築費の高騰と販売価格の天井感がある。

新築の供給減少は、中古マンション市場に二つの影響をもたらす。

一つは、新築を諦めた購入層が中古に流れるという需要シフト。


 もう一つは、新築との価格比較における中古の相対的割安感の強調である。

ただし、この追い風が吹くのは「立地と築年数で新築と比較される物件」に限られる。

築20年超の物件や郊外立地の物件には、この恩恵は及びにくい。



  東京と地方で二極化する市場の現実


 東日本不動産流通機構(レインズ)の月例統計は、地域による温度差を如実に示している。

2025年4月の成約件数を見ると、東京23区は前年同月比で微減にとどまった。


 一方、首都圏郊外部(埼玉県北部・千葉県東部・神奈川県西部)では10%以上の減少が見られる。

地方都市になると、その傾向はさらに顕著である。

東京カンテイのデータによれば、仙台・広島・福岡といった地方中核都市でさえ、成約単価の伸びが鈍化している。

県庁所在地以外の地方都市では、すでに価格下落局面に入っているエリアが散見される。


 この二極化は、「損失回避バイアス」によって売主の行動を歪める。

人間は、得をすることよりも損を避けることを重視する傾向がある。

郊外や地方の売主ほど「今売ると損をする」と感じて売却を先延ばしにする。

しかし、その先延ばしが更なる価格下落を招くという悪循環に陥る。



  外国人投資家の動向が変わった


 2022年から2024年にかけて、円安を追い風に外国人投資家が日本の不動産を買い漁った。

特にアジア系富裕層による都心タワーマンションの購入は、価格高騰の一因となった。

だが、2025年に入ってこの動きに変化が見られる。

為替が1ドル150円前後で安定し、円安の進行が止まった。


 さらに、中国経済の減速により、中国系投資家の購買意欲が低下している。

シンガポール系やアメリカ系の投資家は依然として日本市場に関心を持つが、彼らが狙うのは一棟収益物件やホテルが中心である。

個人向け分譲マンションへの投資熱は、明らかに2024年より冷めている。

これは、1億円超の高額物件を持つ売主にとって、買い手候補の減少を意味する。



  人口動態が示す中長期トレンド


 金利や為替は短期的な変動要因である。

一方、人口動態は長期的かつ不可逆的なトレンドを形成する。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の総世帯数は2023年をピークに減少に転じた。

特に住宅購入の主力である30代〜40代の人口は、今後10年で約15%減少する。

この数字が意味するのは、「実需の買い手が構造的に減っていく」という厳しい現実である。

東京23区ですら、2035年以降は人口減少が始まる見通しが示されている。

長期保有を前提とした「いつか売れるだろう」という楽観は、もはや通用しない。



  売り手が取るべき戦略的ポジショニング


 ここまでの分析を踏まえ、2025年下半期に売却を検討する売主が取るべき戦略を具体的に示す。

まず、「早期売却」か「長期保有」かの二択を明確にすることである。

早期売却を選ぶなら、価格を市場実勢に合わせる覚悟が必要になる。

長期保有を選ぶなら、10年後の人口動態まで織り込んだ判断が求められる。


 次に、売却価格の設定において「アンカリング」を自覚的に外すことである。

「昨年なら〇〇万円で売れた」という過去の成約事例は、もはや参照点として機能しない。

レインズで直近3ヶ月の成約事例を確認し、自らの物件を相対評価する習慣を持つべきである。

さらに、複数の仲介会社から査定を取り、その根拠となる成約事例を突き合わせることが重要になる。

ある会社だけが高い査定を出している場合、それは「媒介契約を取るための営業的査定」である可能性が高い。



  価格設定の具体的な考え方


 売り出し価格は、成約価格の5%〜10%上で設定するのが一般的なセオリーである。

だが、金利上昇局面ではこのセオリーが通用しにくくなる。

買主の事前審査額が下がっているため、「指値を入れてでも買いたい」という交渉余地が狭まっているのである。

現役営業マンの証言では、「売り出し価格から3%以上の指値が入ると、売主が感情的になって交渉が決裂するケースが増えている」という。

これを防ぐには、最初から「成約想定価格」に近い水準で売り出すことが有効である。

いわゆる「相場なり」の価格設定である。

これにより、販売期間の短縮と価格交渉の円滑化が期待できる。



  ボリュームゾーン物件の売り手が注意すべきこと


 4,000万円〜7,000万円のボリュームゾーン物件を持つ売主は、特に注意が必要である。

この価格帯の買主は、住宅ローンの借入限度額ギリギリで購入を検討している場合が多い。

金利上昇によって借入限度額が下がれば、真っ先に購入対象から外れるのがこの価格帯の物件である。

対策としては、買主の資金計画を意識した売却活動が求められる。

具体的には、管理費・修繕積立金の低さや、将来の大規模修繕の見通しをアピールすることである。

買主が気にするのは物件価格だけではない。

月々のランニングコストと、将来の一時金負担リスクも購入判断に大きく影響する。



  高額物件の売り手が取るべき差別化戦略


 1億円を超える高額物件は、外国人投資家の需要減少と富裕層実需の選別眼の厳格化という二重の逆風にさらされている。

この価格帯で売却を成功させるには、「物件そのものの価値」を徹底的に訴求する必要がある。

眺望、日照、専有面積、設備グレード、管理体制、ブランドマンションとしての希少性。

これらを具体的な数字と比較対象をもって説明できるかが勝負を分ける。

ある大手仲介会社では、高額物件専門のチームを編成し、購入候補者への個別プレゼンテーションを実施している。

このようなサービスを提供できる仲介会社を選ぶことが、高額物件売却の成否を左右する。



  郊外・地方物件の売り手が直視すべき現実


 郊外や地方のマンションを持つ売主にとって、2025年下半期は厳しい局面となる。

需要の絶対量が減少しているため、価格を下げても買い手がつかないケースが増えている。

特に、駅からバス便の物件や、築25年を超える物件は流動性が著しく低い。

この場合、「売却」だけでなく「賃貸」という選択肢を真剣に検討すべきである。

売却価格が期待に届かないなら、賃貸に出してキャッシュフローを確保しながら市況の回復を待つ戦略もある。


 ただし、人口減少が進む地域では、賃貸需要も先細りになる可能性がある。

その場合は、「損切り」を覚悟で早期に現金化することが、長期的には合理的な判断となりうる。



  仲介会社の選び方が変わる


 市場が売り手市場から買い手市場に転換する局面では、仲介会社の実力差が如実に表れる。

物件を預かるだけで成約できた時代は終わりつつある。

これからは、買主へのアプローチ力、価格交渉の調整力、マーケティング力が成約を左右する。

仲介会社を選ぶ際には、以下の質問を投げかけることを推奨する。

「直近3ヶ月で、同じ価格帯・同じエリアの物件を何件成約させましたか」

「成約までの平均日数は何日ですか」

「売り出し価格と成約価格の乖離率はどの程度ですか」

これらの質問に具体的な数字で答えられない営業マンには、売却を任せるべきではない。



  「コミットメントと一貫性の法則」を逆手に取る


 人間には、一度コミットした行動を一貫して続けようとする心理がある。

これは心理学で「コミットメントと一貫性の法則」と呼ばれる。

売主がこの法則に囚われると、「一度決めた売り出し価格を下げたくない」という非合理的な行動につながる。

価格を下げることは敗北ではない。

市場環境の変化に適応することである。

この認識の転換ができるかどうかが、売却成功の分かれ道となる。


 現役営業マンの証言では、「価格改定に応じた売主の方が、結果的に高値で成約しているケースが多い」という。

早期に適正価格に修正することで、鮮度の高い段階で買主を引きつけられるからである。



  下半期に向けた具体的タイムライン


 2025年下半期に売却を完了させたい売主は、以下のタイムラインを参考にすべきである。

7月〜8月:複数社から査定を取得し、成約事例を比較検討する。

9月:媒介契約を締結し、売り出しを開始する。

10月〜11月:価格反応を見ながら、必要に応じて価格改定を行う。

12月:年内成約を目指し、交渉を加速させる。


 このスケジュールは、日銀の追加利上げが10月前後に行われる可能性を織り込んでいる。

利上げ前に売却活動を本格化させることで、買主の購買意欲が残っているうちに成約を目指す戦略である。



編集部まとめ


2025年下半期のマンション市場は、金利上昇・購買力低下・人口減少という三重の構造変化の渦中にある。

これを「逆風」と捉えるか「新しいルールの始まり」と捉えるかで、売主の行動は変わる。

市場環境が変われば、戦略も変えなければならない。

過去のアンカーを捨て、現在の市場実勢を直視し、買主の資金計画に寄り添った価格設定を行う。

これができる売主だけが、この転換期を乗り越えられる。

本記事で示した分析と戦略が、あなたの売却判断の一助となれば幸いである。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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