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子供の成長に伴うマンション売却実践記録──2LDK手狭×小学校入学タイミング×住宅ローン残債2,400万円という住み替え課題を乗り越え、売り先行・買い先行の比較検討・購入と売却の同時進行・3000万円特別控除適用を経て、学区を変えずに広い戸建てへの住み替えを実現した全プロセス

24 時間前
読了時間: 12分

あなたはまだ「子供が大きくなったら引っ越せばいい」と先送りしていないか


2LDKマンションに住む30代夫婦の多くが、この思考停止に陥っている。

子供が小さいうちは何とかなる。だが、子供部屋が必要になる小学校入学の瞬間、選択肢は劇的に狭まる。

「学区を変えたくない」「今の保育園の友達と同じ小学校に通わせたい」──この希望を持つ親は少なくない。

だが現実はどうか。同じ学区内で、今の2LDKより広い物件が、売却資金とローン残債のバランスで買えるタイミングは限られる。

本稿では、住宅ローン残債2,400万円を抱えながら、小学校入学前に学区内の戸建てへ住み替えを成功させた一家の実践記録を詳細に解説する。


「現状維持バイアス」が住み替えを妨げる心理構造


人間には「現状維持バイアス」という認知の歪みがある。

変化によるリスクを過大評価し、現状に留まることで得られる安心感を優先する傾向だ。

2LDKで手狭だと感じながら、「まだ大丈夫」「もう少し貯金してから」と先送りする心理は、まさにこのバイアスが作用している。

しかし不動産売却には「損失回避バイアス」も関わる。

「買った価格より安く売りたくない」「ローン残債が残るのが怖い」──この心理が、最適な売却タイミングを逸する原因となる。

今回紹介するケースの夫婦も、最初は「オーバーローンになったらどうしよう」という恐怖に囚われていた。

だが、正確な数字を把握した瞬間、恐怖は消え、具体的な行動計画に変わった。


【ケース概要】築8年・2LDK・残債2,400万円──数字を直視した夫婦の決断


今回のケースを整理する。

夫38歳・会社員、妻36歳・パート勤務。長女5歳(年長)、長男2歳。

物件は首都圏郊外の駅徒歩12分、築8年の2LDK・58㎡。購入価格3,200万円、住宅ローン残債2,400万円。

長女の小学校入学まで残り1年。学区内で4LDKの戸建てを探す条件で住み替えを決意した。

売却査定額は2,600万円〜2,800万円。アンダーローンが見込める状況だった。

住宅ローン残高が売却価格よりも高い「オーバーローン」の場合、残債を返済するために何らかの対処をしなければならない。

幸いにも、このケースでは売却価格がローン残債を上回る「アンダーローン」が確実視された。

問題は、売却と購入のタイミングをどう合わせるか、だった。


「売り先行」と「買い先行」──どちらを選ぶべきか


住み替えには大きく2つのルートがある。

買い先行(購入先行)とは、先に新しい住まいを購入し、その後で現在住んでいるマンションを売却する買い替え方法だ。新居への引っ越しを済ませてから現在のマンションを売却できるため、住み替えスケジュールを調整しやすい点が特徴である。

一方、シニア層など年齢等の理由で新たに住宅ローンを組むことが難しい場合や、現在の住まいの売却資金をもとに新居を購入する場合は、先に売って手元の資金を確定させ、仮住まいをしながら次の物件を探していく売り先行を選ぶケースが一般的だ。

今回のケースでは、夫婦は「売り先行」を選択した。

理由は明確だ。戸建て購入の頭金として、マンション売却益を確実に充てたかったからだ。


売り先行の最大リスク──「仮住まい」をどう回避するか


売り先行には致命的な弱点がある。

マンションが売れた後、新居が決まっていなければ仮住まいが必要になる。

仮住まいには敷金・礼金・引っ越し代が2回分かかる。4人家族なら100万円以上の出費だ。

売り先行で仮住まいもしない場合、売却から購入まで短期間にワンストップで行うので、もし何かしら問題が発生すると、スケジュールが全て狂うというリスクがある。

この夫婦は「引き渡し猶予特約」という武器を使った。

引き渡し猶予は、マイホームの住み替えを行う際に、売主からの希望で設定されることが多い。引き渡し猶予の細かい条件などは買主・売主の合意によって取り決め、不動産売買契約書に「引き渡し猶予特約」を盛り込む。

引き渡し猶予があれば決済後も7〜10日はいまの家に住み続けられるため、仮住まいなしに買い替えられる可能性がある。


同時進行の難易度──なぜマンションは戸建てより有利なのか


「同時進行は非常に難易度が高いため、最初から同時進行型を前提に計画を立てるのは避けた方が賢明だ。ただし、同時進行を目指したいという場合、類似の売り出し事例が多く取引の見通しが立てやすいマンションの方が、一戸建てに比べて比較的スケジュールが組みやすい」

マンションは同じマンション内・同じ間取りの成約事例がある。価格の目安が立てやすい。

戸建ては一点物。売却期間の予測が困難だ。

この夫婦がマンションを「売り物件」として選んだのは、スケジュール管理の観点から正解だった。


2LDKマンションは本当に売れるのか


「2LDKは売れにくい」という風評がある。

だが現実は異なる。

2LDKマンションは、リビング1室と居室2室を備えた間取りで居住用としての需要が高く、比較的資産価値が安定しやすい物件だ。2LDKの特長は、1LDKでは手狭、3LDKでは持て余すと感じる層にフィットする点にある。

国土交通省の「令和2年度 住宅市場動向調査報告書」によると、中古マンションの選択理由は1位が「住宅の広さが十分だから」(71.1%)、2位が「間取り・部屋数が適当だから」(64.5%)となっており、間取りよりも広さを重視する人が多いことがわかる。

今回の物件は58㎡。2LDKとしては平均的な広さだが、駅徒歩12分という立地がDINKS層に刺さった。

売り出しから2ヶ月で成約に至っている。


小学校入学前の住み替え──タイムリミットを逆算する


小学校の入学案内はいつ届くか。就学時健康診断はいつか。10月に間に合わなかった場合の次の目安は、1月20日ごろまでの引っ越しだ。多くの自治体では1月末に入学通知書を発送する。その前に住民票を移しておけば、新しい住所の学校の通知書が最初から届く。

1月末も逃したら、3月末の春休み期間中には引越したいところ。メリットはお子さんが「転校生」ではなく、みんなと同じ「新入生」としてスタートできることだ。

この夫婦は「年長の10月」を第一のデッドラインに設定した。

そこから逆算して、5月にマンション売却活動を開始。7月に売買契約、10月に決済・引き渡しというスケジュールを組んだ。


図1|住み替えスケジュールの全体像(編集部作成)
図1|住み替えスケジュールの全体像(編集部作成)

内覧対策──「生活感」を武器に変える逆転の発想


居住中のマンションを売却する場合、内覧対応が成約を左右する。

内覧前の清掃で特に力を入れるべき場所は、玄関と水回りの2ヶ所だ。玄関は買い主が最初に目にする場所で、物件全体の第一印象を左右する。

部屋に荷物が多いと生活感が出やすいだけでなく、部屋が狭く見える原因だ。また、荷物が多いと部屋の隅々をチェックできずに内覧の満足度が下がりやすくなる。

この夫婦は逆の発想をとった。

「子育て世帯が住んでいた」という事実を、あえてポジティブに見せた。

子供のおもちゃは収納に片付けつつも、リビングの子供用スペースはあえて残した。

「ここに子供用の机を置いていました」「ベランダで水遊びができます」──具体的な生活イメージを語った。

結果、同じく子供を持つDINKS夫婦が購入を決めた。


住宅ローン残債2,400万円の完済と新居購入の同時決済


売却価格は2,750万円で成約した。

諸費用(仲介手数料約96万円、印紙税、登記費用など)を差し引いた手残りは約230万円。

新居の戸建ては同じ学区内で4,200万円の物件を見つけた。

頭金230万円、新規住宅ローン3,970万円という資金計画だ。

住み替えローンを利用する場合には、原則として、自宅売却と新居購入の決済日を同じ日にする。さまざまな手続きを同時に進めることになるため、スケジュール管理をしっかりしておく必要がある。

今回は「引き渡し猶予特約」により、決済日から10日間の猶予期間を確保。

その間に新居への引っ越しを完了させ、仮住まいなしで住み替えを実現した。


3,000万円特別控除──住み替えでも使える税金の武器


マンション売却で利益が出た場合、譲渡所得税がかかる。

だが「3,000万円特別控除」を使えば、多くのケースで課税ゼロになる。

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、マイホーム(居住用財産)を売却した際に生じる譲渡所得から、最大3,000万円まで控除できる特例だ。この特例は、所有期間の長短に関係なく適用される点が特徴である。

今回のケースでは、購入価格3,200万円、売却価格2,750万円。

単純計算では売却損が出ているため、譲渡所得税は発生しなかった。

だが、確定申告は必要だ。

3,000万円特別控除を使う場合、結果として譲渡所得がゼロやマイナスになっても、確定申告書の提出が要件である。

3,000万円特別控除は2026年も使える。自宅を売ったときの3,000万円特別控除(措法35条1項)には適用期限の定めがなく、2026年(令和8年)の売却も従来どおり対象だ。


住み替えの「見えないコスト」を可視化する


住み替えには表面上の価格差以外にも、多くのコストが発生する。

売却側では、仲介手数料(売却価格×3%+6万円)、印紙税、住宅ローン繰上返済手数料、抵当権抹消費用。

購入側では、仲介手数料、印紙税、登記費用、住宅ローン事務手数料、火災保険料。

さらに引っ越し代、不用品処分費用、カーテン・照明などの新居対応費用。

今回のケースでは、総コストは約280万円に達した。

これを事前に把握していたからこそ、資金計画に破綻が生じなかった。


「学区を変えない」という制約が生む逆説的メリット


「同じ学区内で探す」という制約は、一見するとデメリットに見える。

だがこの制約が、意思決定のスピードを加速させた。

選択肢が限られるからこそ、迷わない。

「この物件を逃したら次はいつ出るかわからない」──この切迫感が、夫婦の決断を後押しした。

心理学でいう「選択のパラドックス」だ。選択肢が多すぎると、人は決められない。

適度な制約は、むしろ行動を促進する。


不動産会社選び──「囲い込み」を防ぐ質問術


売却を依頼する不動産会社選びは、成約スピードを左右する。

ある大手仲介会社では、自社で買主も見つけて両手仲介(売主・買主両方から手数料を得る)を狙う「囲い込み」が横行している。

これを見抜く質問がある。

「レインズへの登録は媒介契約から何日後ですか」「他社からの内覧依頼への対応方針を教えてください」──この2つを聞け。

曖昧な回答をする会社は避けるべきだ。

今回の夫婦は、専任媒介契約を選択しつつも、レインズ登録状況を定期的に確認した。

結果、他社経由の買主との成約に至った。これが健全な売却だ。


住み替えローンという選択肢──使うべきケースと使うべきでないケース


住み替えローンとは、住宅ローンの残債があっても新たな家に住み替えたい方のために、旧居と新居のローンを一緒に借り入れできる便利なローンだ。金融機関によっては、買い替えローンとも呼ばれている。

住み替えローンを利用すると月々の返済額が増加しやすいので、返済の負担が重くなってしまうケースもある。

今回のケースでは、アンダーローンだったため住み替えローンは不要だった。

住み替えローンが必要なのは「オーバーローン」のケースだ。

オーバーローンの場合、マンションの売却額よりもローンの残債の方が多い状態であり、売却代金だけではローンを完済できないため、「自己資金(貯金)を持ち出す」、あるいは「住み替えローン」や「任意売却」といった特別な対応が必要になる。


買主のローン審査リスク──売却が「白紙」になる瞬間


売主は、買いが入って契約が成立したから売却終了だと思ってしまう方がいるが、実際には買主の本審査が通らなければやり直しになる。通常、ローン特約を付けるため手付金を返還し、契約解除となる。

今回のケースでも、この「ローン審査リスク」は最大の不安材料だった。

だが、買主が事前審査を通過していること、勤続年数・年収が安定していることを不動産会社を通じて確認。

本審査も無事通過し、スケジュール通りに決済が実行された。


子供の心理的負担を最小化する引っ越しの作法


子どもは案外柔軟性が高く、その土地の言葉や風習に抵抗なく溶け込むことができる。知らない子どもたちのなかに入っていくのは不安に思うかもしれないが、幼稚園や保育園、引っ越してきた子どもたちが一斉にスタートを切る新一年生なので、そのうち仲の良いお友達が見つかる。

今回のケースでは「同じ学区」という選択が、子供の心理的負担を最小化した。

保育園の友達と同じ小学校に入学できる。これが長女にとって最大の安心材料だった。

引っ越し後も「〇〇ちゃんと同じ小学校だよね」という会話が、新生活への期待を高めた。


住み替え成功の3つの鉄則


このケーススタディから導かれる鉄則を整理する。

第一に、数字を直視すること。ローン残債、査定額、諸費用を正確に把握すれば、恐怖は消える。

第二に、タイムリミットを設定すること。「小学校入学」という動かせない期限が、意思決定を加速させる。

第三に、「引き渡し猶予特約」を活用すること。仮住まいコストを削減し、スケジュールに余裕を生む。

この3つを押さえれば、住み替えは「博打」ではなく「計画」になる。


住み替えを阻む「アンカリング効果」の罠


「買った価格より安く売りたくない」──この心理は「アンカリング効果」だ。

購入価格という「アンカー」に引きずられ、市場価格を受け入れられない。

今回のケースでは、購入価格3,200万円に対し、売却価格2,750万円。450万円の差がある。

だが、8年間住んだ「家賃相当額」を考えれば、この差は許容範囲だ。

月8万円×12ヶ月×8年=768万円。これが賃貸だった場合の家賃総額だ。

マンション購入は「住居費の先払い」に過ぎない。この視点を持てば、売却価格への執着は薄れる。



編集部まとめ


子供の成長に伴う住み替えは、感情と数字の両面で判断が求められる。

「学区を変えたくない」という親の願いは、制約であると同時に、意思決定を加速させる原動力にもなる。

住宅ローン残債があっても、アンダーローンであれば売却は十分に可能だ。

売り先行・買い先行の選択、引き渡し猶予特約の活用、3,000万円特別控除の適用──これらの武器を正しく使えば、住み替えは失敗しない。

「築10年前後」は新築と比べても減価率が小さく、売却に際して修繕やリフォームを検討しなくて良いことも多いことから、住み替えに適したタイミングのひとつといえる。

子供の小学校入学前という「タイムリミット」は、実は最良の売却タイミングと重なることが多い。

「もう少し待ってから」という先送りは、選択肢を狭めるだけだ。


数字を直視し、計画を立て、行動する。これが住み替え成功の本質である。

執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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