マンション売却時の「登記費用」は何にいくらかかるのか──所有権移転・抵当権抹消・住所変更登記の内訳と負担者の整理
- 4月7日
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マンション売却で発生する「登記費用」の全体像
マンションを売却すると、複数の登記手続きが必要になる。
所有権移転登記、抵当権抹消登記、住所変更登記。
これらの費用が「誰の負担で」「いくらかかるのか」を正確に把握している売主は、実は少数派だ。
不動産取引の現場では、決済日当日になって初めて「こんなにかかるのか」と驚く売主が後を絶たない。
登記費用は、仲介手数料や譲渡所得税のように大きな金額ではない。
しかし、その内訳を理解せずに売却を進めると、手残り額の計算を誤る。
本稿では、マンション売却時に発生する登記費用の種類、それぞれの金額目安、そして売主・買主どちらが負担するのかを徹底的に整理する。
登記費用の構成要素──「登録免許税」と「司法書士報酬」の二本柱
登記費用は、大きく二つの要素で構成される。
一つは国に納める「登録免許税」、もう一つは手続きを代行する「司法書士報酬」だ。
登録免許税は法律で定められた税金であり、登記の種類と不動産の評価額によって金額が決まる。
一方、司法書士報酬は各事務所が独自に設定しており、相場はあるものの、事務所ごとに差がある。
この二つを混同して「登記費用」と一括りにしてしまうと、何に対していくら払っているのかが見えなくなる。
売主が支払う登記費用と、買主が支払う登記費用は明確に異なる。
この区分を理解することが、売却時の資金計画の第一歩となる。
売主が負担する登記──抵当権抹消登記と住所変更登記
マンション売却において、売主が負担する登記は原則として二種類ある。
抵当権抹消登記と、登記簿上の住所・氏名が現住所と異なる場合に必要となる変更登記だ。
住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、そのマンションには金融機関の抵当権が設定されている。
売却代金でローンを完済した後、この抵当権を登記簿から消す手続きが抵当権抹消登記である。
抵当権が付いたままでは、買主は安心して所有権を取得できない。
そのため、売主の責任と費用負担で抹消するのが不動産取引の大原則だ。
また、購入時から転居している場合、登記簿上の住所と売主の現住所が一致しない。
この場合、所有権移転登記の前提として、住所変更登記を行う必要がある。
結婚などで氏名が変わっている場合は、氏名変更登記も同様に売主負担となる。
抵当権抹消登記の費用内訳──登録免許税と司法書士報酬
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円と定められている。
マンションの場合、建物と土地(敷地権)で2件とカウントされることが多い。
つまり、登録免許税は2,000円程度だ。
一方、司法書士報酬は1万円から2万円が相場となっている。
抵当権抹消登記は比較的単純な手続きであり、報酬もそれほど高額にはならない。
ただし、住宅ローンを複数の金融機関から借りている場合、抵当権も複数設定されている。
その場合は、抹消登記の件数が増え、登録免許税も司法書士報酬も加算される。
抵当権抹消登記の総費用は、一般的なケースで1万5,000円から3万円程度と見込んでおけばよい。
住所変更登記・氏名変更登記の費用内訳
住所変更登記の登録免許税も、不動産1件につき1,000円である。
マンションの場合、建物と土地で2,000円程度となる。
司法書士報酬は、抵当権抹消登記と同様に1万円から1万5,000円が相場だ。
抵当権抹消登記とまとめて依頼する場合、報酬を若干割り引いてくれる事務所もある。
氏名変更登記も同様の費用構成となる。
住所変更と氏名変更の両方が必要な場合は、それぞれの登録免許税と報酬が発生する。
ただし、実務上は一括して手続きを行うため、報酬の増加幅は限定的だ。
住所変更登記の総費用は、1万円から2万円程度を見込んでおけば足りる。
売主負担の登記費用──総額の目安
ここまでの内容を整理しよう。
売主が負担する登記費用の総額は、抵当権抹消登記と住所変更登記を合わせて、概ね3万円から5万円程度となる。
住宅ローンが完済済みで抵当権が設定されていない場合、抵当権抹消登記は不要だ。
登記簿上の住所と現住所が一致していれば、住所変更登記も不要となる。
つまり、売主負担の登記費用が発生しないケースも存在する。
一方、複数の抵当権が設定されていたり、何度も転居していたりする場合は、費用が増加する。
売却を検討し始めた段階で、登記簿謄本を取得して現状を確認しておくことを強く勧める。
買主が負担する登記──所有権移転登記
マンション売買において最も高額な登記費用は、所有権移転登記だ。
そして、この費用は原則として買主が負担する。
所有権移転登記とは、マンションの所有者を売主から買主へ変更する手続きである。
不動産取引の核心部分であり、この登記が完了して初めて、買主は法的に所有権を主張できるようになる。
不動産売買の慣行として、「売主は物件を引き渡し、買主は所有権を取得するための費用を負担する」という考え方が定着している。
そのため、所有権移転登記の費用は買主負担とするのが一般的だ。
売主にとって、所有権移転登記の費用は直接の負担にはならない。
しかし、その仕組みを理解しておくことは、取引全体を把握する上で重要である。
所有権移転登記の費用構成──登録免許税の計算方法
所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額に税率を乗じて計算する。
土地の税率は1.5%(2026年3月31日まで軽減措置適用)、建物の税率は原則2%だ。
ただし、居住用の建物で一定の条件を満たせば、建物の税率は0.3%に軽減される。
例えば、固定資産税評価額が土地2,000万円、建物800万円のマンションを想定しよう。
土地の登録免許税は2,000万円×1.5%で30万円、建物は800万円×0.3%で2万4,000円となる。
合計32万4,000円が登録免許税として買主に課される。
これに司法書士報酬として5万円から10万円が加算される。
所有権移転登記の総費用は、数十万円規模になることが一般的だ。
なぜ売主は買主負担の登記費用も把握すべきなのか
所有権移転登記は買主負担だから、売主には関係ない。
そう考えるのは早計だ。
買主が負担する諸費用が大きくなれば、その分、物件価格の交渉に影響が出る可能性がある。
「諸費用込みでの総額」を意識する買主は少なくない。
また、取引全体の費用構造を理解していれば、買主からの質問にも適切に対応できる。
売主として信頼感を与え、スムーズな取引につなげることができるのだ。
さらに、司法書士の選定において売主の意見が求められることもある。
買主側の仲介会社が司法書士を手配するのが一般的だが、売主側で指定するケースもある。
登記費用の相場を知っておけば、不当に高い報酬を請求されるリスクを避けられる。
司法書士報酬の相場と選び方──報酬は交渉できるのか
司法書士報酬は自由化されており、各事務所が独自に設定している。
そのため、同じ手続きでも事務所によって報酬額に差がある。
抵当権抹消登記の報酬相場は1万円から2万円、住所変更登記は1万円から1万5,000円程度だ。
所有権移転登記は手続きが複雑になるため、5万円から10万円が相場となる。
複数の司法書士から見積もりを取得することは可能だ。
ただし、不動産売買の決済では、売主・買主双方の登記手続きを同一の司法書士が一括して行うのが通例である。
そのため、売主が単独で司法書士を選定できるケースは限られる。
仲介会社が提携している司法書士を利用するのが一般的であり、報酬交渉の余地は小さい。
報酬が極端に高いと感じた場合は、仲介会社に相談するのが現実的な対応策だ。
登記費用を「自分で」手続きすれば節約できるのか
司法書士報酬を節約するため、登記手続きを自分で行うことは法律上可能だ。
しかし、マンション売買においては、現実的な選択肢とは言えない。
不動産売買の決済は、売主・買主・仲介会社・司法書士・金融機関が一堂に会して行われる。
この場で、売買代金の支払いと同時に登記手続きが進められる。
司法書士は、書類の確認、登記申請の準備、金融機関との調整を即座に行う。
素人がこれらを決済当日に完璧にこなすのは、極めて困難だ。
また、買主や金融機関は、専門家による登記手続きを求めるのが通常である。
素人が手続きを行うことに同意しないケースがほとんどだ。
数万円の報酬を節約するために取引全体のリスクを高めるのは、合理的な判断とは言えない。
決済日当日の登記手続きの流れ
決済日には、以下の流れで登記手続きが進む。
まず、司法書士が売主・買主双方の本人確認と必要書類の確認を行う。
権利証(登記識別情報)、印鑑証明書、住民票など、事前に準備した書類を提示する。
書類に不備がないことを確認した後、買主から売主へ売買代金が支払われる。
売主は受け取った代金から住宅ローンを完済し、金融機関から抵当権抹消に必要な書類を受け取る。
司法書士は、所有権移転登記と抵当権抹消登記の申請書類を法務局に提出する。
登記が完了するまでには、通常1週間から2週間程度かかる。
決済日当日に登記費用を司法書士に支払い、手続きは終了となる。
登記費用の支払い方法とタイミング
登記費用は、決済日当日に現金または振込で司法書士に支払うのが一般的だ。
売主負担分は、売却代金から差し引いて精算されることが多い。
具体的には、売却代金から住宅ローン残債、仲介手数料、登記費用などを差し引いた金額が売主の手取りとなる。
司法書士が作成する「精算書」に、登記費用の内訳が記載される。
登録免許税と司法書士報酬が明確に分かれているか、確認しておくべきだ。
不明点があれば、決済前に仲介会社や司法書士に質問しておくことを勧める。
決済当日は時間に追われ、細かい確認が難しくなることが多いからだ。
登記費用を事前に把握するための実務的アプローチ
売却活動を始める前に、登記費用の概算を把握しておくことは重要だ。
まず、法務局で登記簿謄本を取得し、現状を確認する。
抵当権の設定状況、登記簿上の住所・氏名を確認し、必要な登記手続きを把握する。
次に、仲介会社に相談し、登記費用の見積もりを依頼する。
仲介会社は提携する司法書士から概算費用を取得してくれることが多い。
売却代金から差し引かれる費用として、仲介手数料と合わせて提示されるのが一般的だ。
これにより、手残り額を正確に計算できるようになる。
登記費用に関する誤解と注意点
登記費用について、いくつかの誤解が広まっている。
「登記費用は売主負担」という誤解は、その代表例だ。
正確には、売主が負担するのは抵当権抹消登記と住所変更登記のみ。
所有権移転登記は買主負担である。
また、「登記費用は固定」という誤解もある。
登録免許税は法定だが、司法書士報酬は事務所によって異なる。
さらに、抵当権の数や住所変更の回数によっても費用は変動する。
「仲介手数料に含まれている」という誤解も稀にある。
登記費用と仲介手数料は全く別の費用であり、それぞれ独立して発生する。
相続登記が未了の場合の追加費用
相続したマンションを売却する場合、相続登記が未了であれば、売却前に相続登記を完了させる必要がある。
相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%だ。
評価額2,000万円のマンションであれば、8万円となる。
これに司法書士報酬として5万円から10万円が加算される。
相続関係が複雑な場合、戸籍謄本の収集など追加の手間と費用が発生する。
相続登記にかかる費用は、通常の売主負担登記費用に上乗せされる形となる。
相続マンションの売却を検討している場合は、早めに相続登記を済ませておくことが肝要だ。
2024年4月から相続登記が義務化されており、放置するリスクも高まっている。
登記費用と他の売却費用との比較
マンション売却にかかる費用の中で、登記費用の占める割合は小さい。
売主負担の登記費用は3万円から5万円程度。
一方、仲介手数料は売却価格の3%+6万円+消費税が上限だ。
5,000万円で売却すれば、仲介手数料だけで約170万円となる。
譲渡所得税は、売却益と所有期間によっては数百万円に達することもある。
これらと比較すれば、登記費用は「小さな費用」と言える。
しかし、小さな費用だからこそ見落とされやすく、手残り額の計算を狂わせる原因になる。
全ての費用を正確に把握し、資金計画を立てることが売却成功の鍵だ。
編集部まとめ
マンション売却時の登記費用は、その内訳と負担者を正確に理解しておくことが重要である。
売主が負担するのは、抵当権抹消登記と住所変更登記。
その総額は、一般的なケースで3万円から5万円程度だ。
所有権移転登記は買主負担であり、売主が直接支払う必要はない。
登記費用は、登録免許税と司法書士報酬で構成される。
登録免許税は法定だが、司法書士報酬は事務所によって異なる。
売却活動を始める前に、登記簿謄本を取得し、必要な登記手続きを把握しておくべきだ。
仲介会社を通じて登記費用の見積もりを取得し、手残り額を正確に計算する。
登記費用は売却費用全体の中では小さな割合だが、見落とせば資金計画に狂いが生じる。
全ての費用を把握し、余裕を持った売却計画を立てることが、後悔のない取引への第一歩である。
執筆:マンション売却ジャーナル編集部




