住友不動産販売の実力──「すみふの仲介ステップ」が提供するマンション売却サービスの強みと課題を徹底検証する
- 5月24日
- 読了時間: 12分
あなたは「住友なら安心」という言葉だけで、担当者を選んでいないか
住友不動産販売──不動産仲介業界で「三井・住友・野村」と並び称される大手仲介会社である。
「すみふの仲介ステップ」というブランド名を冠し、テレビCMも積極的に展開している。
だが、売主であるあなたは「大手だから安心」という漠然としたイメージだけで、この会社の本質を理解しているだろうか。
住友不動産販売には、他の大手仲介会社とは明確に異なる「営業DNA」が存在する。
それは売主にとって強力な武器にもなれば、時として不利に働く構造的リスクにもなる。
本稿では、住友不動産販売という組織の内部構造を解剖し、売主が知っておくべき「すみふの仲介ステップ」の実態を明らかにする。
住友不動産販売の市場ポジション──「三井に次ぐ第二位」の意味
公益財団法人不動産流通推進センターが公表する「不動産業統計集」によれば、住友不動産販売の仲介取扱高は三井不動産リアルティに次ぐ業界第二位である。
2023年度の取扱高は約1兆3,600億円、取扱件数は約34,000件。
この数字は、東急リバブル、野村不動産ソリューションズと熾烈な競争を繰り広げるボリュームだ。
注目すべきは「取扱件数に対する取扱高の比率」である。
住友不動産販売は、1件あたりの平均取扱高が約4,000万円。
これは三井不動産リアルティの約4,500万円よりやや低く、東急リバブルの約3,800万円よりやや高い水準だ。
つまり住友不動産販売は、超高額物件に特化しているわけでもなく、薄利多売に走っているわけでもない。
「中間層から上位層」を幅広くカバーする戦略を取っている。
「すみふの仲介ステップ」が持つ独自のDNA──直営主義と個人主義
住友不動産販売を語るうえで、絶対に外せない特徴がある。
それは「完全直営主義」と「個人営業マン主導型」という二つのDNAだ。
三井不動産リアルティが三井住友トラスト不動産との提携を持ち、東急リバブルが東急電鉄グループのネットワークを活用するのに対し、住友不動産販売は全国約200店舗をすべて直営で展開している。
フランチャイズや提携という「ゆるい連携」を一切持たない。
これは組織としての統一性を担保する一方で、「住友不動産販売の営業マン」という同質性の高い人材が全国に配置されることを意味する。
そしてもう一つの特徴が「個人営業マン主導型」である。
ある大手仲介会社の元幹部はこう証言する。
「住友は、営業マン個人の裁量が非常に大きい会社。良くも悪くも『担当者次第』の幅が他社より広い」
この構造は、売主にとって諸刃の剣となる。
アンカリング効果の活用──住友の査定書が「高め」に見える理由
行動経済学に「アンカリング効果」という概念がある。
最初に提示された数字が、その後の判断に強い影響を与えるという心理的バイアスだ。
住友不動産販売の査定書には、このアンカリング効果を意識した構成が見られることが多い。
現役営業マンの証言によれば、住友不動産販売では「チャレンジ価格」という概念を積極的に提案する傾向がある。
「まずは高めの価格で市場に出し、反応を見てから調整しましょう」というスタンスだ。
これは売主にとって心地よい提案に聞こえる。
だが冷静に考えてほしい。
「チャレンジ価格」で売り出し、3ヶ月経っても反応がなければ、価格を下げざるを得ない。
その時点で市場には「この物件は値下げした」という情報が刻まれる。
REINSには登録日と価格変更履歴が残り、他の不動産会社の営業マンは「最初は強気だったが下げてきた」と認識する。
買主側の営業マンは当然、「もう少し待てばさらに下がるかもしれない」と買主に助言する。
結果として、適正価格でスタートした場合より安く売れてしまうリスクがある。
住友不動産販売が高めの査定を出しやすい構造的背景には、「専任媒介契約を取る」という営業マン個人の目標がある。
売主は複数社から査定を取る。
その中で最も高い査定を出した会社に依頼しがちだ。
これは「損失回避バイアス」と呼ばれる心理だ──「もし一番高い査定の会社で本当に売れたら、他社に頼んでいたら損をしていた」と考えてしまう。
住友不動産販売の営業マンは、この心理を熟知している。

両手仲介比率の実態──公開されない数字から読み解く構造
仲介会社にとって最も収益性が高い取引形態は「両手仲介」である。
売主・買主の双方から手数料を受け取れるため、片手仲介の2倍の売上になる。
大手仲介会社の両手仲介比率は公式には開示されていない。
だが業界内では、各社の傾向が経験則として共有されている。
ある大手仲介会社の現役管理職はこう語る。
「住友は、両手にこだわる傾向が強いと言われている。『まず自社で買主を探す』という意識が他社より強い印象がある」
これは必ずしも「囲い込み」を意味するわけではない。
だが売主として知っておくべき構造的事実がある。
両手仲介を志向する仲介会社は、自社の顧客データベースから買主を探すことを優先する。
これ自体は違法でも不当でもない。
問題は「自社で買主を見つけるまで、他社からの問い合わせに消極的になる」ケースが存在することだ。
国土交通省は2015年に「両手仲介と囲い込み問題」について通達を出し、REINSでの物件情報の適正な登録・開示を求めている。
だが実務上、「内覧調整中です」「売主都合で今週は案内できません」といった曖昧な対応で、他社経由の内覧を遅らせることは可能だ。
これを見破る方法は後述する。
「個人主義」の光と影──担当者の質が結果を大きく左右する
住友不動産販売の「個人営業マン主導型」という特徴は、売主にとって何を意味するか。
端的に言えば「担当者ガチャ」の振れ幅が大きいということだ。
三井不動産リアルティでは、営業プロセスの標準化が比較的進んでいる。
査定書のフォーマット、販売戦略の立て方、報告の頻度と内容に、一定の型がある。
これに対し住友不動産販売は、営業マン個人の裁量が大きい。
優秀な営業マンに当たれば、高い行動力と交渉力で期待以上の成果を出してくれる可能性がある。
逆に、経験の浅い営業マンや、他の案件を優先する営業マンに当たれば、売却活動が停滞するリスクがある。
心理学で「コミットメントと一貫性の法則」と呼ばれる現象がある。
人は一度コミットした相手に対し、そのまま従い続けようとする心理を持つ。
専任媒介契約を結んだ売主は、「この担当者で大丈夫だろうか」と疑問を感じても、途中で担当変更や契約解除を言い出しにくい。
住友不動産販売で売却を進める場合、この「担当者リスク」を最小化する方法を知っておく必要がある。
住友不動産販売の強み①──「マンションデータPlus」と自社ネットワーク
批判的な視点ばかりでは公平ではない。
住友不動産販売が持つ明確な強みも整理しよう。
第一の強みは「マンションデータPlus」と呼ばれる自社の情報基盤だ。
これは住友不動産販売が蓄積してきた過去の成約事例、査定データ、顧客情報を統合したデータベースである。
売主向けには、自分のマンションの過去の売却履歴、同一棟・同一階層の成約事例、周辺相場の推移などを提示できる。
公開されている不動産ポータルサイトの情報と異なり、「実際にいくらで成約したか」という一次情報を持っている点は大きな武器だ。
ただし注意点がある。
この「マンションデータPlus」で提示される成約事例は、住友不動産販売が仲介した案件が中心となる。
市場全体の成約事例を網羅しているわけではない。
査定を受ける際は「REINSに登録されている他社成約事例も含めて比較してほしい」と伝えることで、より客観的な査定を引き出せる。
住友不動産販売の強み②──全国直営200店舗のカバレッジ
第二の強みは、全国約200店舗の直営ネットワークだ。
フランチャイズではなく直営であることの意味は大きい。
店舗間での情報共有がスムーズであり、例えば「大阪在住の買主が東京のマンションを探している」といったケースでも、社内で情報が流通する。
転勤族が多い企業の従業員や、投資目的で遠方の物件を探している買主にとって、全国ネットワークは有利に働く。
売主としては「御社の全国店舗に、このマンションの情報を共有してもらえますか」と明確に依頼することで、この強みを最大限活用できる。
住友不動産販売の強み③──住友不動産グループとの連携可能性
第三の強みは、住友不動産グループという母体の存在だ。
住友不動産は、マンション分譲では「シティタワー」「シティハウス」などのブランドを展開する大手デベロッパーである。
オフィスビル、商業施設、ホテル事業も手掛ける総合不動産会社だ。
この連携が売主にとって具体的にどう有利に働くか。
例えば、住友不動産が分譲したマンションを売却する場合、住友不動産販売はその物件の設計図書、管理組合の運営状況、長期修繕計画などにアクセスしやすい。
買主に対して「この物件は弊社グループが分譲した物件であり、建物の品質に自信があります」という訴求ができる。
ただしこれは「住友不動産が分譲したマンション」に限定される強みであり、他社分譲のマンションでは活かしにくい。
売主が取るべき具体的アクション①──「囲い込み」を見破る方法
ここからは、住友不動産販売に売却を依頼する場合に、売主が取るべき具体的アクションを整理する。
第一のアクションは「囲い込みを見破る仕組みを作る」ことだ。
方法は単純である。
専任媒介契約を結んだ後、自分で別の不動産会社に連絡し、「REINSで御社の物件を見つけた。内覧は可能か」と問い合わせてもらう。
友人や家族に依頼してもよいし、他のエリアの不動産会社に「買主役」を演じてもらうことも可能だ。
もし「売主都合で内覧できない」「商談中で案内を止めている」といった回答が返ってきたら、それは囲い込みの兆候である。
この確認を、売り出しから2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後と定期的に行う。
囲い込みの兆候があれば、すぐに担当者に「他社から内覧依頼が来ているはずだが、すべて対応しているか」と確認する。
それでも改善されなければ、媒介契約の更新を拒否し、他社への切り替えを検討すべきだ。
売主が取るべき具体的アクション②──担当者を見極める質問
第二のアクションは「担当者の質を見極める質問を投げる」ことだ。
査定訪問の際に、以下の質問をぶつけてほしい。
「この物件の売却で、最も苦戦すると思われるポイントは何ですか」
優秀な営業マンは、物件のウィークポイントを正直に伝えたうえで、その対策を提案できる。
「特に問題ありません」「この価格で必ず売れます」といった楽観的な回答しか返ってこない場合、その営業マンは信頼に値しない可能性がある。
もう一つの質問は「過去1年間で、このマンションまたはこのエリアで担当した成約事例はありますか」である。
営業マンの経験値を確認する質問だ。
「ありません」という回答でも、それ自体が悪いわけではない。
だが「代わりに、同エリアで経験豊富な先輩と連携して対応します」といった補足があるかどうかで、誠実さが測れる。
売主が取るべき具体的アクション③──報告頻度を契約前に取り決める
第三のアクションは「報告頻度と内容を契約前に明文化する」ことだ。
専任媒介契約では、宅建業法上、2週間に1回以上の報告義務がある。
だが「2週間に1回」は最低ラインであり、形式的なメール一通で済まされることも多い。
契約前に「報告は毎週メールで、問い合わせ件数・内覧件数・内覧者のフィードバックを含めてください」と伝えておく。
これに難色を示す営業マンは、そもそも丁寧な対応を期待しにくい。
報告義務を超えた対応を約束してくれる営業マンは、売主を「大切な顧客」として扱っている証拠だ。
売主が取るべき具体的アクション④──3ヶ月後の「出口戦略」を先に決める
第四のアクションは「媒介契約期間の3ヶ月を、どう使うか先に決める」ことだ。
住友不動産販売に限らず、大手仲介会社は「まず3ヶ月やってみましょう」と提案する。
だが3ヶ月後に「売れませんでしたね、価格を下げましょう」と言われても、その時点で売主は受け身になっている。
契約前に「1ヶ月目で反応がゼロなら価格を5%下げる」「2ヶ月目で内覧5件・成約ゼロなら追加広告を打つ」「3ヶ月で成約しなければ他社に切り替える」といった基準を、自分の中で決めておく。
この基準を担当者にも伝えておくと、営業マンの動きが変わる。
「この売主は甘くない」と認識されれば、優先順位が上がる。
これは「返報性の原理」の逆用だ──売主が明確な基準を示すことで、営業マンも明確な行動で応えようとする心理が働く。
住友不動産販売を選ぶべき売主、選ばないほうがよい売主
最後に、住友不動産販売を選ぶべきケースと、避けたほうがよいケースを整理する。
住友不動産販売を選ぶメリットが大きいのは、以下のような売主だ。
住友不動産が分譲したマンションを売却する場合。
グループ連携のメリットが最大化される。
全国転勤のある企業に勤めており、遠方の買主も視野に入れたい場合。
直営ネットワークが強みになる。
担当者を自分で見極める時間と労力を惜しまない場合。
優秀な担当者に当たれば、期待以上の成果を出せる可能性がある。
一方、住友不動産販売を避けたほうがよいのは、以下のような売主だ。
「大手だから任せておけば大丈夫」と考えている場合。
担当者の質のばらつきが大きいため、丸投げは危険だ。
囲い込みリスクを自分で監視する時間がない場合。
両手仲介志向が強いと言われる構造を、自分で牽制できなければ不利になりうる。
査定価格の「高さ」に惹かれて契約を決めそうな場合。
アンカリング効果に流されず、複数社の査定を冷静に比較すべきだ。
編集部まとめ
住友不動産販売「すみふの仲介ステップ」は、業界第二位の実績を持つ大手仲介会社である。
全国直営200店舗、住友不動産グループとの連携、豊富な成約データは確かな強みだ。
だが「個人営業マン主導型」という組織DNAは、担当者の質による結果の振れ幅を大きくする。
両手仲介を志向する傾向が指摘される構造は、売主が自ら監視しなければリスクになりうる。
「大手だから安心」ではない。
「この担当者なら信頼できる」と判断できる売主だけが、住友不動産販売の強みを引き出せる。
売却活動を「任せる」のではなく「共に進める」姿勢を持てるかどうか。
これが住友不動産販売での売却成功を分ける分岐点となる。
執筆:マンション売却ジャーナル編集部




