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マンション売却にかかる諸費用の全体像──仲介手数料・登記費用・税金・引越し費用の内訳と、手取り額を最大化するための実践的コスト管理術

  • 6月5日
  • 読了時間: 12分

  あなたは本当に「手取り額」を計算できているか


 マンション売却で「いくらで売れるか」を気にする売主は多い。

だが、真に重要なのは「いくら手元に残るか」である。

5,000万円で売却できても、諸費用で300万円以上が消える。

この現実を知らずに売却を始める売主は、想定外の出費に狼狽する。

行動経済学で言う「メンタル・アカウンティング(心の会計)」の罠だ。

人は「売却価格」と「手取り額」を無意識に混同する。

売却価格5,000万円という数字に意識が固定され、そこから引かれる費用を過小評価する。

結果として資金計画が狂い、住み替え先の頭金が足りなくなる事態が起きる。

本記事では、マンション売却にかかる諸費用の全体像を完全解説する。

読み終える頃には、あなたは「手取り額」を正確に計算できるようになっている。



  諸費用の全体像──売却価格の5〜7%が消える構造


 マンションを売却する際、売却価格の5〜7%程度の費用がかかる。

5,000万円のマンションなら、250万〜350万円が諸費用として差し引かれる計算だ。

この数字を「高い」と感じるか「想定内」と受け止めるかで、売却後の精神状態は大きく変わる。


 諸費用は大きく4つのカテゴリーに分類される。

第一に、不動産会社に支払う「仲介手数料」。

第二に、登記関連の「登記費用」。

第三に、契約書や売却益に課される「税金」。

第四に、新居への「引越し費用」およびその他実費。

この4つを正確に把握することが、資金計画の第一歩となる。



  仲介手数料──最大の支出項目を完全理解する


 仲介手数料は、不動産会社に支払う成功報酬であり、不動産売却にかかる諸費用の中でも大きな割合を占める。

仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法で定められており、売却金額が400万円を超える場合は「売却価格×3%+6万円+消費税」の速算式で計算できる。

この「3%+6万円」という数字を覚えておけば、概算は瞬時に把握できる。

例えば、5,000万円でマンションを売却した場合を計算してみよう。

5,000万円×3%+6万円=156万円(税抜)。

消費税10%を加えると、171万6,000円となる。

これはスーパーで言えば「レジ横の菓子」ではない。

高級腕時計1本分、あるいは軽自動車1台分に相当する大きな支出だ。

支払いのタイミングは、「契約時に50%、引き渡し時に50%」という分割払いが主流である。

仲介手数料は成功報酬であるため、売却が成立しなければ支払う必要はない。

査定を依頼しただけ、売り出しを始めただけでは費用は発生しない。


 ある大手仲介会社の営業マンは「お客様は最初に仲介手数料の金額を聞いて驚かれる。だが、売れなければ1円も請求しない。だからこそ私たちは必死に売却活動をする」と語る。

この成功報酬型の構造こそ、仲介ビジネスの本質だ。



  仲介手数料を「無料」にする会社の裏側


 仲介手数料を無料にしてもらう場合、囲い込みによって物件が売れにくくなるリスクがある。

囲い込みとは、依頼した不動産会社が他社と物件情報を共有せずに自社だけで販売活動を行うことだ。

これは飲食店で言えば「一見さんお断り」のようなものだ。

本来なら100人の買い手候補がいるところを、自社顧客10人に絞って営業する。

当然、成約までの時間は長くなり、価格競争も起きにくくなる。

仲介手数料の過度な値引きをすると利益が減ってしまい、その穴を埋めるために両手仲介を狙う不動産会社もゼロではない。

2025年1月から囲い込みをした不動産会社は処分の対象になっているが、規制の強化だけで囲い込みを完全に防げるわけではない。

仲介手数料の値引きは、一見すると「お得」に見える。

だが、スーパーの「見切り品」と同じで、安いには安いなりの理由がある。

現役営業マンの証言では「手数料を半額にする代わりに、広告費を最小限に抑えて対応する会社は実際に存在する」という。

手数料の安さと売却活動の質は、トレードオフの関係にある。



  登記費用──抵当権抹消は売主の義務


 抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円だ。

マンションは土地1つ、建物1つで構成されていることが一般的なので、マンションの場合は2,000円となることが多い。

この金額を見て「なんだ、安いじゃないか」と思うかもしれない。

だが、問題は登録免許税ではなく、司法書士報酬だ。

抵当権抹消を司法書士に依頼するには、手数料が必要で、司法書士手数料の相場は1.5万円程度とされている。

合計すると、抵当権抹消登記の費用は2万円程度が目安となる。

「2万円なら自分でやってコスト削減したい」と考える売主もいる。

だが、これは現実的ではない。

マンション売買の決済日には、「抵当権の抹消」「所有権移転」「新たな抵当権の設定」の3つの登記手続きを同時進行させなければならない。


 この3つの手続きを滞りなく進めるため、正確に手早く手続きを行うことが求められる。

素人が決済日当日に法務局で書類の不備を指摘されれば、取引全体がストップする。

買主側の銀行、売主側の銀行、仲介会社、司法書士——全員のスケジュールが狂う。

ある大手仲介会社では「登記手続きは必ず司法書士を通すことを契約条件にしている」という。

2万円を惜しんでトラブルを招くのは、経済合理性に反する選択だ。



  住宅ローン一括返済手数料──金融機関への支払い


 住宅ローンを一括返済する場合は、事務手数料がかかる。事務手数料は住宅ローンを借り入れしている金融機関によって異なるが、5千円〜3万円が相場だ。

この手数料は、窓口で手続きするかインターネットバンキングで手続きするかによっても異なる。

メガバンクの場合、窓口手続きは3万円以上かかることもあるが、ネットなら無料〜数千円で済むケースもある。

売却決済日が決まったら、早めに金融機関に連絡して手続き方法を確認すべきだ。

繰上返済の申し込み期限が「2週間前まで」と定められている金融機関も多い。

ギリギリになってから慌てると、決済日に間に合わない事態も起こりうる。


図1|マンション売却にかかる諸費用の内訳(2026年6月編集部作成)


  印紙税──契約書に貼る「税金」の正体


 不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものは、印紙税の軽減措置の対象となる。

2027年3月31日までの期間は、1,000万円超5,000万円以下の取引で通常20,000円のところ10,000円に、5,000万円超1億円以下で通常60,000円のところ30,000円に軽減される。

例えば、5,000万円のマンションを売却する場合、印紙税は1万円だ。

この程度なら「誤差の範囲」と考える売主もいるだろう。

だが、電子契約を利用すれば印紙税はゼロになる。

現行の印紙税法では、課税対象となる書類は紙の書面に限定されており、PDFファイルやクラウドなどの電子データによる契約は課税対象外になっている。

1万円を節約できるなら、電子契約に対応している仲介会社を選ぶのも一手だ。



  譲渡所得税──売却益が出たときの最大リスク


 マンション売却で利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課される。

所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、所有期間が5年超であれば長期譲渡所得となり、税率が大きく異なる。

短期譲渡所得の税率は39.63%(所得税30.63%+住民税9%)。

長期譲渡所得の税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)。

この差は約2倍だ。

5年未満で売却すると、売却益の約4割が税金で消える。

これはボーナスの半分を税金で持っていかれるようなものだ。

所有期間は「売却した年の1月1日時点」でカウントされる点に注意が必要だ。

2021年5月に購入したマンションを2026年4月に売却する場合、実際には約5年住んでいても、1月1日時点では「4年8ヶ月」となり短期譲渡所得扱いになる。

売却のタイミングひとつで、税金が100万円単位で変わる。



  3,000万円特別控除──最強の節税特例を使い倒す


 マイホームを売却したとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度がある。この特例を使えば、多くの方が譲渡所得税を大幅に軽減、またはゼロにできる。

この特例は所有期間の長短を問わず適用できる。

例えば、5,000万円で購入したマンションを6,500万円で売却した場合、単純計算で1,500万円の売却益が出る。

この1,500万円に長期譲渡所得の税率20.315%をかけると、約305万円の税金だ。

だが、3,000万円特別控除を適用すれば、1,500万円−3,000万円=マイナスとなり、課税対象はゼロ。

つまり、譲渡所得税は1円もかからない。

3,000万円の特別控除によって譲渡所得がゼロとなる場合には、譲渡所得税は課されない。


 なお、マイホームが複数人の共有名義となっている場合には、3,000万円の特別控除については「共有者全員で3,000万円」ではなく、「共有者1人につき3,000万円」となる。

夫婦共有名義のマンションなら、最大6,000万円の控除が可能だ。



  3,000万円特別控除を受けられない「罠」


 同じ年分の確定申告において、居住用3,000万円控除の特例と住宅ローン控除は、併用適用することができない。

これは多くの売主が見落とす重大なポイントだ。

住み替えで新居を購入し、住宅ローン控除を受けたい場合は要注意となる。

住宅ローン控除と3,000万円特別控除の同時適用はできないため、住み替えで旧居を売却し、新居を住宅ローンで購入した場合、どちらか一方しか適用できない。

どちらが有利かは、売却益の金額と新居のローン残高によって異なる。

売却益が3,000万円以下なら、3,000万円特別控除で税金ゼロにできる。

一方、住宅ローン控除は最長13年間にわたって所得税が軽減される。

長期的なシミュレーションが必要だ。

親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものは、この特例の適用を受けられない。

身内への売却では使えない。これも見落としやすい要件だ。



  引越し費用──見落としがちな実費の正体


 引越しの平均的な費用は、移動距離が50km未満の場合、単身者で3万円〜6万円、2人暮らしで6万円〜10万円、3人以上の家族で7万円〜15万円程度と言われている。

新生活が始まる2〜4月は引っ越しの繁忙期にあたり、引っ越し業者の需要が高まるため、料金が通常期(5〜翌1月)に比べて20〜30%程度高くなる傾向にある。

3月の土日に家族4人で引っ越すなら、20万円以上を覚悟すべきだ。

さらに厄介なのは、売却と新居購入のタイミングがずれた場合だ。

先に売却が決まり、新居がまだ見つからない——この状況では「仮住まい」が必要になる。

仮に、家族で暮らすために家賃7万円の賃貸住宅を借りたとすると、初期費用は40万円以上になってしまう。

引っ越しも2回必要となり、費用は倍増する。

売却先行型の住み替えでは、このリスクを織り込んでおく必要がある。



  諸費用シミュレーション──5,000万円で売却した場合


 ここで、具体的な数字でシミュレーションしてみよう。

売却価格5,000万円、住宅ローン残債2,000万円、購入時価格4,500万円のケースを想定する。

仲介手数料:5,000万円×3%+6万円=156万円(税込171万6,000円)

印紙税:1万円(軽減税率適用・電子契約ならゼロ)

登記費用:約2万円(登録免許税2,000円+司法書士報酬1.5万円+実費)

住宅ローン一括返済手数料:約1万円〜3万円

引越し費用:10万円〜20万円(家族の場合)

合計:約185万円〜200万円

売却価格5,000万円から諸費用200万円、ローン残債2,000万円を引くと、手取りは約2,800万円となる。

「5,000万円で売れる」と「2,800万円が手に入る」の差は大きい。

なお、今回のケースでは売却益(5,000万円−4,500万円−諸費用)が500万円以下となり、3,000万円特別控除を適用すれば譲渡所得税はゼロだ。



  諸費用を「コスト」ではなく「投資」と捉える視点


 仲介手数料171万円という金額を見て「高い」と感じるのは自然な反応だ。

だが、この金額は「150万円を払って50万円高く売る」ための投資でもある。

囲い込みを回避し、適正な販売活動を行ってくれる仲介会社を選べば、売却価格は上がる。

現役営業マンの証言では「同じマンションでも、売り出し方と価格戦略で成約価格は5〜10%変わる」という。

5,000万円の5%は250万円。

仲介手数料171万円を払っても、79万円のプラスだ。

安物買いの銭失いという言葉がある。

仲介手数料を50万円値切って、売却価格が100万円下がれば、50万円の損失だ。

費用だけでなく「費用対効果」で考える視点が重要である。



  諸費用を最小化するための5つの実践戦略


 第一に、電子契約に対応した仲介会社を選ぶ。

印紙税1万円が節約できる。小さいが確実な節約だ。

第二に、住宅ローンの繰上返済手数料を事前確認する。

ネットバンキングなら無料になる金融機関も多い。

第三に、引越し時期をずらす。

繁忙期(2〜4月)を避けるだけで、引越し費用は2〜3割下がる。

第四に、仮住まいを回避する売却スケジュールを組む。

売却と購入のタイミングを揃えれば、引越し1回・仮住まいゼロで済む。

第五に、3,000万円特別控除の適用要件を満たす。

「住まなくなってから3年以内」という期限を必ず守る。

これらを実行するだけで、数十万円単位のコスト削減が可能だ。



  「手取り額」を最大化する思考法


 手取り額を最大化するには、2つのアプローチがある。

「売却価格を上げる」か「諸費用を下げる」かだ。

多くの売主は後者ばかりに注目するが、インパクトが大きいのは前者だ。

仲介手数料171万円を50万円値切るより、売却価格を100万円上げる方が効率的だ。

そのためには、適正価格で売り出し、囲い込みを回避し、内覧対応を丁寧に行う。

諸費用は「固定費」だが、売却価格は「変動費」である。

変動費を上げる努力をした方が、手取り額への影響は大きい。

現役営業マンの証言では「内覧時に部屋を整えるだけで、印象は劇的に変わる。クリーニング費用3万円をケチって50万円安く売れるのを見ると、もったいないと思う」という。

費用を削ることと、価値を上げること。両方のバランスが重要だ。



  諸費用を「見える化」する──仲介会社に必ず確認すべき項目


 媒介契約を結ぶ前に、仲介会社に以下の項目を確認すべきだ。

「仲介手数料の金額と支払い時期」

「電子契約に対応しているか」

「司法書士の手配方法と費用の目安」

「売却から決済までのスケジュール」

これらを事前に確認しておけば、想定外の出費は発生しない。

「聞かなかった」「知らなかった」では済まされないのが不動産取引だ。

プロに任せるのは良いが、任せっぱなしにしてはいけない。

自分の資産を守れるのは、自分だけである。



編集部まとめ


マンション売却の諸費用は、売却価格の5〜7%に達する。

仲介手数料が最大の支出項目であり、売却価格×3%+6万円+消費税が上限だ。

登記費用は約2万円、印紙税は電子契約なら節約可能、引越し費用は時期で変動する。

3,000万円特別控除を活用すれば、多くのケースで譲渡所得税はゼロになる。


ただし、住宅ローン控除との併用はできない点に注意が必要だ。

諸費用を正確に把握し、「売却価格」ではなく「手取り額」で資金計画を立てる。

これができる売主は、売却後に慌てることはない。

本記事の内容を実践すれば、あなたは「手取り額を最大化する売却」を実現できる。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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