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サブリース物件は、なぜ売れにくいのか。契約の仕組みから売却戦略まで整理する

  • 4月2日
  • 読了時間: 6分

 サブリース契約が付いたマンションを売ろうとして、「査定額が低い」「なかなか買主が見つからない」という経験をしたオーナーは少なくない。

 一般的な投資用マンションと比べて、サブリース物件の売却には特有のハードルがある。しかしその理由を正確に理解している売主は、意外と少ない。


 本稿では、サブリース物件がなぜ売却しにくいと言われるのかを、仕組みの解説から売却戦略の選択肢まで整理する。




  サブリース契約とは何か。仕組みを正確に理解する


 サブリース契約とは、管理会社や不動産会社がオーナーからマンションを一括借り上げし、オーナーに一定の賃料を保証する契約形態だ。

 オーナーにとっては、空室があっても賃料が入り続けるため、一見すると安定した収益構造に見える。しかし、この「一括借り上げ」という構造が、売却時にさまざまな制約を生む。


 売却で問題になるのは主に3点だ。契約期間中は賃料条件を自由に変更できないこと。管理会社の変更が制限されること。解除には一定の条件と時間が必要なことだ。




  売却が難しくなる本質的な理由


 サブリース物件の売却が難しい理由は、「投資家が敬遠する理由」がそのまま価格と流通性に影響するからだ。

 投資家が物件を評価する際、最重要指標は利回りだ。しかしサブリース契約下では、管理会社への手数料が差し引かれた後の賃料がオーナーに入る仕組みのため、市場家賃よりも低い水準になりやすい。つまり、利回りが実態より低く見えてしまう。

 さらに、購入後すぐに賃料条件を変更したり、別の管理会社に切り替えたりできないという制約が、投資家の「収益改善余地がない」という判断につながる。投資家は数字と将来の改善可能性で買うため、この制約は大きなマイナスだ。


サブリース契約が売却に与える4つの影響


図1|

サブリース契約の有無による売却への影響比較

サブリースありの場合に発生しやすいデメリットと、売主が取れる対処を整理した。自分の物件の状況と照らし合わせて確認してほしい。


サブリース売却影響比較
サブリース売却影響比較



  査定価格が低くなるメカニズム


 サブリース物件の査定価格が低くなるのには、明確なメカニズムがある。

 投資用マンションの価格は、原則として「年間家賃収入 ÷ 期待利回り」で算出される。つまり、家賃収入が低ければそのまま価格が低くなる。

 たとえば、市場家賃が月8万円の物件でも、サブリース賃料が月6.5万円に設定されていれば、年間収入が18万円少なくなる。期待利回り5%で計算すると、この差だけで360万円の価格差になる。

 さらに「サブリース契約の引継ぎ」というリスクを買主が織り込むことで、価格交渉の幅がさらに広がるケースもある。



  解除が難しい本当の理由──借地借家法という壁


 サブリース契約の解除が難しい理由は、単に「解約条件が複雑だから」ではない。

 法律上の問題がある。

 サブリース契約は、オーナーが貸主・サブリース会社が借主となる賃貸借契約だ。相手が不動産会社であっても、この構造は変わらない。そして借主である以上、サブリース会社は借地借家法によって保護される。

 借地借家法では2つの条文が特に重要になる。

 第27条は、貸主(オーナー)から解約を申し入れる場合、申し入れから6ヶ月が経過しなければ契約は終了しないと定めている。第28条は、貸主からの解約申し入れには「正当の事由」がなければならないと定めている。

 つまり、契約書に「いつでも解約できる」と書いてあっても、借地借家法第28条が優先されるため、正当事由がなければ解除できないのだ。


 では「売却したいから」は正当事由になるか。ならない。

 「利回りをもっと向上させたい」「高い価格で売却したい」「売却しやすい状態にしておきたい」といった理由は、いずれも正当事由として認められない。これらはオーナー側の都合であり、借主であるサブリース会社を保護する立場の借地借家法のもとでは、解除の根拠として認められないためだ。

 正当事由として認められやすいのは、立退料の支払い、建物老朽化による建て替え、オーナー自身の居住、ローン返済困難による売却のやむを得ない事情などに限られる。

 さらに厄介なのは、契約書に解約条項が定められていても、借地借家法を根拠にサブリース会社が解除を拒否するケースがある点だ。一方で、借主であるサブリース会社側には途中解約の権利が法的に認められており、一方的に解約することができる。

 この非対称性が、サブリース物件の売却を根本的に難しくしている構造的な問題だ。




  解除して売るか、現状渡しで売るか


 サブリース物件を売却する際、最初に考えるべき選択がある。それは「解除してから売る」か「サブリース付きのまま売る」かだ。

 どちらが有利かは、解除にかかるコストと、解除後の利回り改善幅のバランスで決まる。

 解除する場合、解約予告期間(一般的に6ヶ月〜1年)、違約金の有無、管理会社との合意交渉が必要になる。これらのコストが小さく、解除後の利回り改善が大きければ、解除してから売る方が最終的な手取りが増えるケースが多い。


 一方、解除コストが大きかったり、売却を急ぐ必要がある場合は、サブリース引継ぎを条件として投資家に売る方が合理的なこともある。


サブリース解除を検討する場合の判断フロー


図2|

サブリース解除を検討する場合の判断フロー

解除して売却するか現状渡しで売るかは「解除コスト」と「利回り改善幅」の比較で決まる。STEP1から順に確認することで判断がしやすくなる。


サブリース解除判断フロー
サブリース解除判断フロー


  サブリース物件売却で陥りやすい3つの罠


 サブリース物件の売却では、以下の3つの判断ミスが起きやすい。


 一つ目は、「サブリース賃料をそのまま利回り計算に使った査定価格で売り出す」ことだ。これは市場からかけ離れた価格になりやすく、長期化の原因になる。


 二つ目は、「解除できると思って売り出したが、解除に時間がかかった」ケースだ。解除を前提とした価格設定で売り出しながら、解除交渉が長引くと買主との信頼関係に影響する。


 三つ目は、「サブリースのメリットをうまく伝えられず、買主層が絞られた」ケースだ。安定収入・空室リスクの低さというサブリースの特性を評価する投資家も存在する。その層に響く提案ができれば、流通性は上がる。




  売却を成功させるために準備すべきこと


 サブリース物件の売却前に準備しておくべき情報は明確だ。

 サブリース契約書の内容(解除条件・賃料・期間)、市場家賃と実際のサブリース賃料の比較、解除にかかる概算コストと時期、解除後の想定利回り計算。この4点を整理しておくことで、買主との交渉が大きく変わる。

 また、サブリース物件の売却実績がある不動産会社を選ぶことが重要だ。一般的な仲介会社では、サブリース物件特有の交渉を苦手とするケースもある。



編集部まとめ


 サブリース物件が売却しにくい理由は、構造的なものだ。利回りの見え方、買主の自由度の制約、解除の複雑さ。これらが重なって、価格と流通性に影響する。

 しかし、正しく理解して準備すれば、選択肢は広がる。解除してから売るか、現状渡しで売るか。どちらが有利かは物件ごとに異なる。


 重要なのは、「サブリースだから売れない」と諦めるのではなく、「どう整理して、誰に売るか」を戦略的に考えることだ。


執筆:マンション売却ジャーナル編集部


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